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勇者たちの使命感  作者: 九絵
正統派の勇者たち
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第19話 S級冒険者を助けるF級

 冒険者ギルドの講義が終わり、二階から一階に階段を降りていった。


 ざわざわしている。何かあったらしい。


 ロビーへ行くと、怪我をした冒険者が座り込んでおり、仲間から回復魔法を受けていた。


 ぼくは近くにいた女の子に聞いた。


「どうしたのかな?」


「近くの炭鉱で強力な魔獣が出らしいの、今S級のジャック様が時間を稼いでいて、ギルドの対策が発表されるのを待ってるわ」


「怪我している彼は?」


「A級のミッキー様。彼を知らないの?」


「あ、ごめんなさい。今日、冒険者登録したばかりの新米です」


 ぼくはミッキーさんに近づいて行った。


「あの、ミッキーさん、どこでS級のジャックさんが戦っているのかな?ぼくが退治に行くよ」


「第三坑道だ。だけど君が行くって、見かけない顔だが、大丈夫か?」


 やり取りを眺めていた傷だらけの大柄の冒険者が反応した。


「さっき登録したばかりのF級じゃねーか」


 周囲がざわめく。


ミッキー「Fクラスか……なぜ? Fが」


 また別の冒険者たちが発言した。


「冒険者ゴロって言ってな、冒険者に成り立てのヤツの中には、調子に乗って無理したり、上手と喧嘩して死ぬことが多いんだ。止めておけ」


「F級で魔獣退治って何言ってるんだ、あほか、お前は大人しく黙ってろ!」


「命を大切にしろやFクラスの馬鹿野郎」


 ガヤガヤ…ガヤガヤ……


 ぼく

「うるさい! 黙れ!!」


「ええっ」


「「「えーーーっ」」」


 ぼく

「第三坑道だな、とにかく行ってくる!」


 ミッキー

「あ、待って……」


★★★★★


 坑道の強力と謳われた魔獣を倒し、S級のジャックさんと話しながら並んで冒険者ギルドの建物に戻ってきた。S級だと顔を知ってる人が多いからね。


 S級ジャック

「以前、ヨシタカ様に助けて頂いて、また今回もご助力いただき、大変助かりました」


 ぼく

「ジャックさん、良かったですよ、間に合って」


 ジャックさんは40歳のベテランS級で、エルソンの冒険者ギルド筆頭だった。ギルドの扉を開け、報告をするために受付へ向かう。テーブル席で待っていたミッキーさんがジャックさんを見つけて立ち上がり近づいてきた。


「ジャック! 良かった、無事に戻って来てくれて」


「おうミッキー、おまえ怪我は回復魔法で治ったか。良かったな。俺はジリ貧でな、魔獣が思ったより手ごわくて、追い込まれつつあってヤバかった」


「あ、ジャック様が戻られた! ミッキー様もご心配になられてたから本当に良かったわ」


 ぼくは喜ぶ周囲の冒険者たちを見て、ジャックさんから少し離れた。みんな嬉しそうだ。同じパーティでもないのに冒険者という仲間意識を凄く感じるな。口が悪かったあの大柄の冒険者も「ジャック様、ご無事で!」って喜んでるし。ふふ、なんだかぼくまで嬉しくなっちゃうな。


 ぼくは先に受付に一人で行き、受付嬢に「ジャックさんが無事に魔獣を倒したから、注意喚起は取り下げていいと思います。」と伝えた。


 そして踵を返して出口へ向かい、ジャックさんに向かって手を振り、一人外へ出て行った。


 ジャックさんが何か言っていたが聞こえなかった。でもぼくは無性に達成感みたいな、よく分からない幸せな気持ちに包まれていた。


★★★★★


 大柄冒険者

「おい、あの助けに行く~って出て行ったF級はどうした?」


「あ、そういえば、大丈夫だったのか?」


「追加で要救助者が出るって何だよ、だから行くなっつーて」


 ミッキー

「あ、そうだ、ジャック、見かけなかったかい?」


 ジャック

「F級の誰かが助けに来たって? うーん。英雄ヨシタカ様が来られて一瞬で魔獣倒して、二人して仲良くギルドに帰ってきたからな、見かけてないなぁ」


 ミッキー

「あ、やっぱり。あのF級の彼、悪霊退治の時、勇者パーティにおられたヨシタカ様だよな。F級って言ってたけど、いやなんでF級? って混乱して思ってたから。俺の怪我を見に来て、直ぐに助けに行ったんだよ。有難いことだな」


 大柄冒険者

「ヨシタカ様って英雄の? 来られてたんだ」


 ミッキー

「お前たちが暴言はいててビビったわ。バカ」


「「「ええーーーーーっっ」」」


 大柄冒険者

「あの方がヨシタカさまっ!」


 ジャック

「人類を救った英雄のお一人だからな。俺たちにすら手を貸してくださる。ありがたいな」


 こうして、あっという間に冒険者ギルド全体に認知されたヨシタカであった。

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