第17話 遥かなる旅は続く
なんとか蘇生できないだろうか?
復活の魔法であるリザレクションは聖女にしか使えないと聞いた。その聖女自身も蘇生対象なのだから、今のところはどうしようもない。
勇者は魔王が生誕した際に一度だけ誕生する。でも聖女は?
聖騎士、大魔導士も耳にしたことはない。聖付与師なんて自分がなって初めて聞いた。付与術師は普通に冒険者ギルドにいる。
剣聖の活躍はよく聞く。勇者パーティとの違いって何だろう。
作業の方々に、みんなの遺体をエルソンに運んで頂き、冷凍庫へ保存した。ぼくは復活魔法の使い手を探すことにした。
まずは王都にある教会本部へ行く。そこで次の聖女の生誕の情報を頂く。その後、聖女候補を見つけるため様々な地へ移動。トラブルを起こさないために冒険者になっておく。
魔王討伐後、騎士爵から男爵に格上げされたぼくの社会的地位も利用できる。領地を貰って領主にならないかという話も丁重に辞していた。
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エルソンの噴水の周りにある岩に腰かけた。ぼーっと噴水を眺める。他に何かいい案はないだろうか。
(蘇生なんて考えたら駄目だぞ。世の中、ぐちゃぐちゃになる)
心の声が注意してくれる。分かってる。わかってるってさ。だから聖女だけの特権の能力なんだよね。知ってるさ。何人もポンポンと生き返らせたら大変なことだってぐらい。
聖女様ですらリザレクションを使えば3か月は能力が消えてしまうらしい。
噴水のエリアは広場になっており、《勇者様御一行》の像が建てられていた。騎士団を全滅まで追い込んだ強力な悪霊たちを、たった一発の浄化魔法で蹴散らした聖女様が中心に立って、周りに勇者たち仲間が微笑んでいる。ぼくもハバにはされず、予想を超えた格好良さで造形されていた。
「まさかアレがぼくだなんて誰も思わないだろうな」
以前来た時には広場も噴水もなかった。今は住民たちの憩いの場だ。
まずは冒険者になるか。
ぼくはトボトボ歩いて冒険者ギルドへ向かった。今まで戦いの場に身を置いていた為か、手持ち無沙汰で、これから日々どうしようという漠然な感覚があった。存在しない蘇生魔法リザレクションの使い手を探すという新たな目標に翻弄されていたのかもしれない。
勇者パーティのメンバーは冒険者の最上位よりもはるかに強い力を持つ。特別な存在、女神様の身内である存在、それゆえ、世界では”人の身体を持つ神様”と称されている。
ヨシタカは人類史上初、魔王討伐後の世界に勇者パーティの能力を維持したまま存在していたが、自覚は生じていなかった。