[1章:徳川編 その3]始まりの終わり
「宴も酣のこの祭りもいよいよ表彰を残すのみ!最後まで盛り上がって行くが良い!!」
「オオオーーーッッ!!!!」
「オ、オオ〜〜…」
曽是の号令に会場がみな拳を突き上げ湧き立つ。私も控えめに拳を突き上げる。
今、私はこの祭の中心であるメインステージのその真ん中に、倒すべき敵と肩を組んで立っています。
…どうしてこうなった。
「ここにおる娘もな、祭を共に盛り上げてくれた一人じゃ!」
私にできることは喋り続けるソゼの横で借りて来た猫のように大人しくしている事だけ。
ステージ上にも護衛が目を光らせているし、とてもじゃないが突然斬りかかるような真似はできそうにない。…そもそもアタラヨさんを置き忘れた時点でどうしようもないんだけども。
「若い者が中心となりこの祭りを盛り上げる事は喜ばしい事じゃーーそも、この祭の始まりはーーー」
ソゼが祭りの起源や、徳川家の輝かしい歴史について長々と話し出す。
当然、その間も私はずっと彼の横に立たされている。
「ーーそう、陽の欠片じゃ。ヌシらも知っての通り、陽の欠片による徳川の繁栄を祝うのがこの祭り。先祖代々受け継がれし陽の欠片は平和の象徴。欠片が全て揃うと世は荒れると言う。故に、ワシらはこれからも欠片を守っていく必要がある!」
ソゼが胸にぶら下げていたブレスレットーーもとい、陽の欠片を掲げ観客に吠える。
照明が掲げた陽の欠片に一斉に向けられる。すると、まるで陽の光が差し込んだと錯覚するような強い眩きが辺りを包む。
ーーあれが、陽の欠片。
それは透き通った緋色のガラスの塊のようだった。欠片、というだけあって形は不恰好だが、放つ光はどこか暖かさを孕んでおり、この光に触れたい、ずっと見ていたいーーそんな風に思わせる不思議な力をカエデは感じた。
カエデがその光に目を奪われていると、ソゼが突如カエデの肩に手を掛けた。
「故に、此奴のようなネズミは生かしておけぬ、というわけよ!!」
突如、曽是の抜いた拳銃が目の前に突きつけられる。
同時に周りの衛兵も武器を構えて逃げ場を塞ぐように私の周りを囲んだ。
示し合わせたかのような動き。まさか、最初からバレて…?
「あの〜、大名様、これは一体どういう事なんでしょうか〜…」
「白々しい演技は不要じゃ。お主が孤児のガキと組んでコソコソしとったことなど筒抜けよ」
ソゼが衛兵に合図すると、人混みの中から、新たな衛兵が両手を縛り上げたトータ君を連れて前に出て来た。
「すまねぇ…しくじっちまった」
「トータ君…!」
「皆の者、見かけに騙されるでないぞ。この童どもは陽の欠片を奪う事を企てた大罪人!何故か定期的におるのよなぁ、陽の欠片を開放するだのなんだの抜かす不届き者が…そして其奴らは全てワシが直々に断罪してきた。そう、この祭の最後の催しとしてなぁ!」
曽是は、40センチはある長い銃身のリボルバーを空に掲げる。
呼応して会場の観客達が沸く。
…そうか、トータ君の仲間もこの景色を見ていたのか…。
「では最期に問おう。何故陽の欠片を奪おうなどと考えた?しかも童二人がこの軍勢相手に…何がそこまで貴様らをこんな無謀な行為に走らせるのだ?」
ソゼは私たちを壇上で衛兵に取り押さえさせ、銃を突き付けながら問いかける。
「答えよ。祭りの締めだ、粋な事を言ってくれると助かるが」
クックックッ、と曽是は笑う。
周りの衛兵も、観客も笑っている。
「…敵討ちだよ!」
トータ君が押さえつけられながらソゼの方を睨み、吠えた。
「お前らが、オレ達の仲間をーー、」
「もうよい」
続けようとするトータ君の問いを恐ろしい程冷たい声色でソゼが遮る。
「同じ村の者だと、間際の言葉ですら同じなのか?実につまらん。…まぁ客は沸いておるのでよしとしてやろう。では、早速その仲間たちの元へ送ってやろうではないか。」
ソゼが銃をトータ君の頭に向かって構える。
引き金に指をかけたその瞬間。
空を一筋の、緑色の流星が駆けた。
「ヌゥウ!?」
その流星はソゼ目掛けて突っ込み、ソゼは間一髪避けるも、私達を取り押さえていた衛兵が反応できず吹き飛ばされる。
「カエデ!」
「アタラヨさん!」
我らがスーパーAIのお迎えだ。
ブースターを吹き出し空を駆けていたアタラヨが私の腕に装着される。
「というか、アタラヨさん飛べたの!?」
「ええ。らしいです。なんかこう、カエデの危機をブワーッと感じまして。急がないと、と思ったら飛べましたね。」
「…とにかく!改めて戦うよ、いい?アタラヨさん!」
「感動の再会は終わったか?」
ソゼがこちらへ銃を構え、散り散りになった衛兵達も陣形を立て直しており、私達は相変わらず囲まれている。
「得体の知れぬさいばぁ兵器よ。しかし、如何に面妖な武器であろうとこの四面楚歌。大人しく死ぬが良いわ!」
ソゼの号令に衛兵達が一斉に剣を振りかざし迫ってくる。
「カエデ。私がサポートします。アナタはただ直感に従い、剣を振れば良い。」
アタラヨで攻撃を防ぎつつ身を払い、迫ってきた衛兵の体勢が崩れた隙に一閃。
一気に3、4人もの衛兵を薙ぎ払った。アタラヨの言う通り、なんとなくこう、くらいの感覚で剣を降るとそれをアタラヨが的確な剣筋に補正してくれているようだ。
「怯むな!相手は小娘一人!さっさと押し込まんか!」
ソゼが兵に向けて檄を飛ばす。
それを受け、数人の兵士が突っ込んでくるも、先程と同じように武器を払い体制を崩したところをすかさず、斬!
次も斬!その次も斬!さらに斬、斬、斬!!!
かれこれ30人は倒しただろうか。しかし、兵士たちの勢いは弱まるどころか増援が止めどなく増えていてジリ貧状態だ。
「やはり理解できんな。仇討ちなどと宣った小僧もお前を見捨てて逃げた。お主が欠片を解放してどうする?欠片が揃えば世は荒れる伝承…貴様も知らぬわけではあるまい」
「そ、れは…」
言葉が詰まる。確かに私はアタラヨに雑賀の一族の末裔だから世界を救え、って言われて飛び出してきたに過ぎない。トータくんのように仲間を殺されたわけでもない。
けど。確かに私の中にはあるのだ。青空への、夜明けへの憧れが。
(昔は空ってのは青い色をしていてね。あの澄み渡る青を貴女にも見て欲しかったなーー)
私の中にあるかすかな記憶。顔は思い出せないけど、誰かが私に向かって優しく語りかけているその情景。
「私、は」
「私は、夜明けが…見たい。青い空を見ずに終わりたくないんだ!」
目の前に立ち塞がる衛兵を斬り倒しながらソゼの問いに答える。
それを聞いてソゼは眉を大きくしかめた。
「夜明け、か。…もうよい。貴様はここで確実に葬る」
ソゼが手を上げる。すると、周りの櫓から衛兵が現れ一斉にこちらに銃を構えた。
櫓からの狙撃兵。増え続ける衛兵。これではアタラヨで空を飛んで逃げるのも難しいだろう。
「万事休す、ってヤツ…!?」
「…いえ。カエデ。逆に最大のチャンスです。隙を見て変形しスカイモード(※今決めた)で突貫します。タイミングを合わせてください」
アタラヨが私にだけ聞こえるような音量で早口で説明する。
確かに、ソゼは既に勝敗は決したと思っている為か、自分達から20m程の距離まで近づいてきていた。この距離ならアタラヨ(スカイモード…?)での突貫であれば僅かに勝機はあるかもしれない。しかし、距離が近くとも衛兵の守りがある限りは決死の突撃も届きはしないだろう。
「大丈夫。彼を信じましょう」
私の不安を読んだかのようにアタラヨは私に語りかける。
すると、遠くで凄まじい轟音と共に、大量の花火が炸裂した。
「な、なんじゃあ!?」
「倉庫の花火です!何者かにより火が放たれ全て炸裂しております!」
ソゼが衛兵から報告を受けている最中、今度は衛兵の包囲網のすぐ真横で花火が炸裂する。
そこに目をやると、手筒花火を抱え打ち上げ花火を背負ったトータ君の姿があった。
「やい、ソゼ!こっちを見やがれ!!!」
花火を炸裂させながら突っ込むトータ君に衛兵が気を取られる。
「カエデ、今です!!」
「了解!!」
その隙に、私は変形したアタラヨに飛び乗ると、曽是に向かって最短距離で突っ込む。
「イっケェええええええ!!!」
「うぬぅう!?!?」
衛兵と同じくトータ君に気を取られていたソゼは私達の突撃に反応することができず、土手っ腹にアタラヨが突き刺さる。そしてそのまま祭り会場の壁まで突っ込む。チェックメイトだ。
トータ君が駆け寄る。軽い火傷こそしているが無事なようだ。
「トータ君、やったよ!私達勝ったんだ!」
「ああ、これで…仇は打った。姉ちゃんのおかげだな。ありがとうよ」
周りの衛兵も突然の事で呆然としているのか、嘘みたいに棒立ちで動かない。しかし、正気を取り戻すのも時間の問題だ。急いでこの場を離れなければ。
「こちらこそ、トータ君が身を張ってくれなければどうなってたか。よし、とにかくまずは逃げよう!乗って!」
「おう!…へへ、オレも無茶した甲斐があったな」
トータ君をアタラヨに乗せ全速力で飛び立つ。
こうして、私達はなんとか、無事ソゼを討ち取リリ離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離リリリリリリっリリ離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離離り離離離リリリリりりrーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あってなるものか。こんな結末。すぐにでも描き直さねば…」




