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[1章:徳川編 その2]祭りの始まり

ウェカピポ。

「さぁ、皆様お待ちかね!今年もこの祭りの季節がやって来ました!!!徳川様の栄光を称え、皆で盛り上がって参りましょう!!!」


ステージ上でマイクを構えた司会者の呼びかけに会場がオオッ、と沸き立つ。

そう、今は祭りの当日。そんな中私達がどこにいるのかと言うと…


「あぁ〜ラララララァ!カエデちゃん!相変わらずお肌艶々で羨ましいわぁ〜!」

「ホントホント!おばちゃん達も学生の頃は派手派手な衣装着てもう少し艶があったんだけれどねェ!」

「今じゃ元気だけ残って艶はどっか行っちゃって!困っちゃうわァ〜!!」


「あはは…」


おばさま達にもみくちゃにされながらステージの裏にいた。

何故こんなことになっているのか、、、話は三日前に遡る。


ーーーーーーーーーーーー


「アリかもしれねぇ…」


「トータくんまで!?」


トータくんがまさか乗って来るとは思わず、私は驚愕の声を上げた。


「いや、だってよ。俺達はソゼが出張って来る夜のステージに立てりゃいいわけだろ?なら強ち悪くねぇ案だぜ、これは」


トータくんが言うには、ソゼが出て来る表彰式の前に、必ずそこで踊る枠を設けられる老舗チームがいるらしいのだ。そのチームはほとんどがご年配の方々で構成され、大らかな人柄が多い。で、あればそのチームの使う大道具の手伝いを申し出て、裏方としてステージに立てば良い、との事だった。そうすれば踊りを覚える必要もないし、急遽の参加も歓迎されるであろうと言う算段だ。


結論から言うと、この考えは的中。

見事、おばさま方からは「こんな若い子があたし達みたいなおばさんチームの手伝いしてくれるなんて嬉しいわぁ、飴ちゃん食べる?」などと熱烈な歓迎を受けたのであった。


その後は、数日間本番を想定した練習に裏方として参加した。

「裏方だから多少の失敗はなんとかなる」などと思っていたが、そんなことはなく。むしろ逆で、これだけ大きな道具が展開するタイミングがズレれば演舞は台無しだ。その責任によるプレッシャーに最初は練習も失敗続き。しかし、おばさま方の手厚いフォローもあり、なんとか本番前最後の練習では演舞をやり遂げることが出来た。その時は、本来の目的を忘れて思わず達成感に包まれた。


そして、迎えた当日。


相変わらず、私とトータくんはおばさま方にもみくちゃにされている、という訳だ。


「それにしても急にカエデちゃん達が演舞を手伝わせてくれ、って練習場所に来たときはビックリしちゃったわぁ」

「小さい頃に見て、感銘を受けて弟さんと手伝いに来てくれたのよねぇ?おばちゃん達も頑張って来た甲斐があったわぁ!」


「ええ、弟…も私も、伝統あるこの踊りが好きで。急なお願いなのに受け入れて下って感謝しかありません。本当は一緒に踊れればよかったんですけど。」


「いいのヨォ!!そんな硬くならなくても!裏方でもあたし達と同じステージに立てば、それはもうチームメイト!胸張って、どんと構えて、本番楽しみましょ!ホラ、弟君も!」


俯き黙っているカエデの(ということになっている)トータくんの肩をバシィンと叩く。

トータくんは一瞬ビクッと肩を震わすと、か細い声で


「あ、ありがとう、ございます…」


と答えた。トータくんも気まずいんだろうな。まさかこんなに温かく出迎えてくれると思ってなかったから。

うう、こんな優しいおばさま方を騙すことになるのは心が痛むなぁ…

でも、おかげでソゼはすぐ目の前にいる。

演舞が終われば表彰のためにステージまで来て、私達と鉢合わせるはずだ。

そこで、ヤツを仕留める。

そうすればーーー


ドォン!!!


突如、思考を中断するほどの凄まじい轟音が響く。

それと同時に周りがワァッ、っと沸いた。


「ホラみんな見て!開幕の花火よォ!アタシ達の出番もそろそろねェ」


おばさま達も打ち上がる花火と上がる会場のボルテージに黄色い声援を上げて盛り上がっている。

その様子を横目に、トータくんと私は目を見合わせて頷いた。

いよいよだ。


「さぁ、祭の始まりだァ!!続いて踊ってもらうチームはーー」


「さ、みんな出番よ!カエデちゃん達も緊張しないで、楽しんで頂戴ねェ!」


司会の紹介が終わり、ステージ裏の幕が上がる。

目の前が真っ白になる程の光の奔流を全身に浴びながら前に出ると、そこに広がるのは広大なステージ。

そして視界の端から端まで埋まる、数多の観客の姿。何千、いや、何万人はいるか。


演舞が始まり、けたたましい音楽が鳴り響く中、皆が踊り出す。

私たちも急ごしらえで覚えた大道具をせっせと運び、決められたタイミングに合わせて展開する。

とても周りが見られる余裕はなかったけれど、ふと観客席中心に鎮座する男の姿を捉えた。


曽是(ソゼ)…!!」


隣にいるトータくんからギリリ、と歯軋りをする音が聞こえる。

それに釣られて私も道具を握る手に自然と力が入る。


当然あちらはこちらに気づく様子もなく、ふんぞりかえって祭りの盛り上がりぶりにご満悦の表情だ。

偉そうに!いやまぁ実際偉いんだけども!!


ーーー


「よいやっサァア〜!!!」


演舞終わりの掛け声が響き渡る。

呼応するように客席からは万雷の拍手が鳴り響く。


「なんとかなったぁ〜!」


「まだ油断できねぇぞ。むしろ本番はこれからなんだからよ」


無事に演舞を終えて安堵するのも束の間、ステージ裏で緊張の糸が緩み蕩けている私にトータくんが一喝する。

そう、私達の目的はあくまで曽是を倒す事。その曽是が現れる表彰式はもうすぐ始まるのだ。


「表彰式まで15分もねぇ。もうそろそろ曽是が舞台裏に現れるはずだ。わかってるな?時間をかければすぐに衛兵が駆けつける。一発で決めてくれよ。で、姉ちゃんが曽是をヤったら、オレが会場中に設置した花火起爆して撹乱すっから、すぐ逃げろ。」


トータくんが作戦を改めて説明する。


「要は、ぶった切って速攻逃げる!でしょ!任せてよね!!!」


私がサムズアップをして答えると何故かトータくんはやれやれ、と言った表情。

何か間違ったかな…


「まー、最悪オレがなんとかすりゃあ…待て、曽是だ!ヤツが来やがったぞ!」


トータくんが言い終わる前に曽是が舞台裏にやって来たのが見えた。その歩き姿は相変わらず不遜で恰幅がよく、一歩進む度にのっしのっし、と言った効果音が聞こえて来そうだ。

すれ違うスタッフにうむ、ご苦労!苦しゅうない、などと声をかけ、こちらに向かって来ている。


「オレはもう行くぜ!姉ちゃん、頼んだぞ!」


トータくんはそう言うと足早に舞台裏から出て、観客の海に消えていってしまった。

一人になると、急に不安になる。いや、アタラヨさんがいるから、一人と一機、か?

なんにせよ、正念場だ。

とはいうけどまぁ、大丈夫。

要は近づいてきた曽是を、このアタラヨさんでぶった切るだけだし!簡単簡単!


「…アタラヨさん今日はずいぶん静かだね?AIなのに緊張してるの?」


しばらくだんまりの相棒に声をかけるも返事はない。

案外、私の方が土壇場にも強いのかもしれない。今も嘘みたいに肩が軽いし。

…ずいぶん軽いなぁ、肩。

鉄の塊を背負ってる割には随分とーー


ーー数刻前。


『よし、これならバレないでしょ!』

アタラヨさんを茂みの影に隠し、落ち葉や枯れ木でカモフラージュを終える。

『じゃあ、私達そろそろ出番だから!演舞終わったら取りに行くから、それまで絶対そこから動いちゃダメだよ!』

『了解。…ああ、カエデ。一つだけよろしいですか』

『何?』

『カモフラージュは落ち葉以外でも可能ではありませんか?そもそも風に吹かれてカモフラージュが解除される可能性もあります。その点無機物でのカモフラージュであれば…ああっ葉の裏に虫が蠢いていて見るに堪えられません。あっ、ほら今も私の発光部分にまぁまぁ大きめの節足動物が…カエデ?応答してください。カエデ?』


(アタラヨさん取りに行くの忘れてたーーーっ!!!)


ドッと冷や汗が滲み出る。

今からでもなんとかアタラヨさんを取りに戻って…


「む、ずいぶん若い娘よ。ヌシもご苦労であったな。先の演舞見事であったぞ」


「アッ、アリガトウ、ゴザイマスゥ…」


いつの間にか目の前まで来ていた曽是。

頭が真っ白になるあまり片言になる私。

緊張のあまり二の句を紡げない私を見かねた大名様(曽是)から、追い討ちをかけるように素晴らしい提案をいただく。


「なんじゃ、随分緊張しておるな。そんなにワシが尊いか?愛い奴よのぉ!…そうじゃ、其方も表彰式の舞台に上がらせてやろう!そうじゃ、それがいい!ワシと並んで舞台に立つなど、こんな機会は滅多にないぞ?己の幸運に感謝すると良い!」


「エッ」


ーーその頃、舞台裏控室


「ええ、ええ。皆様とてもフレッシュで若さに満ち溢れております。やはり活力が美しさに繋がるのですね。」


「やだも〜〜!!アタラヨちゃんったらお上手!!アタラヨちゃんこそ綺麗な緑に光っててかっこいいわよぉ〜!さすがすーぱーえーあい、ねぇ!」


「…!!…ええ、ええ!そう、私こそスーパーAIアタラヨです。で、あるならば…さしずめ皆様はスーパーマダム、といったところでしょうか」


「あら〜〜〜ッ!!褒めても何も出ないわよォ〜!」

「そうよォ!もう1曲踊るだけで精一杯!若い子達のキラキラな笑顔には勝てないわぁ」


「ご謙遜を、マダム。ステージの上の貴方方はこの会場で最も光輝いておりましたよ」


「あららららららァ!!本当にお上手ねェ、アタラヨちゃんは!ウチの旦那もアタラヨちゃんみたいなすーぱーえーあいに変えてもらおうかしら!」

「やだァ、それ名案じゃない!今すぐ交換してもらいましょ!!」


「オ〜ホッホッホ!!」「アーッハッハッハ!!」


控室では、楽しそうなマダムと電子音の笑い声がこだましていましたとさーーー



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