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[1章:徳川編 その1]はじめの一歩

「まず、目指すべきはこの日の本において最大の街、『OーEDO』でしょうね」


今私は『O ーEDO』という街を目指し、街と街を繋ぐ果てしない連絡通路を歩いている。

かれこれ4、5時間は歩いている為、足が棒のようだ。疲れた。

これも全部アタラヨさんがポチでの旅を拒んだせいだ…。


「陽の欠片は各大名が代々受け継ぎ、肌身離さず持つことが定められています。ですので、大名、曽是(ソゼ)にカチコミ…もとい、謁見。後に欠片を奪取、または破壊する事が目標となりますね」


大名、曽是(ソゼ)。一国の主だ、当然私も知っている。

見た目はフツーの太っちょのおじさんだけど、凄い自信家でテレビでも威張り散らしているイメージ。

この間なんて、徳川家が世界で一番偉いから自分を「世界の帝王」だ、なんて言ってMCに止められてた。

あとは異常なまでのサイバー文化否定派で、よくそれで偏った発言をしてはSNSが燃えてるのをよく見る。


「ん〜でもさ、最大の街ならそれだけ警備も厚いよね。簡単に大名(ソゼ)と会えるとは思えないんだけど。」


「ええ。そこで、あれを利用します。」


あれとは?と首を傾げた私に、アタラヨさんは変形した腕で壁にあるポスターを指差した。

えーと、なになに…「第73回徳川祭!!超弩級のエンターテイナー勢揃いの日の本一ド派手な祭!!!」

開催日は…ちょうど明日からだ!しかも、見事大賞を受賞したチームには、主催者・徳川家当主『曽是』より直々に景品及び賞状の授与…とある。


「お分かり頂けたようですね。この祭の会場にソゼは必ず公衆の面前に姿を表す。そこを狙えば良いのです。」


「狙えば良いのです、って…簡単に言ってくれるなぁ」


「簡単ですよ。剣で切れば人は大抵死ぬので。」


「…確かに、こんなに賢いサポートAIがいれば簡単かもね」


「フフ…!ええ、そうでしょうそうでしょう!」


「どうやら皮肉を検知する機能はないらしいけど」


そんなこんなで作戦会議(?)をしていたら巨大な門が見えてきた。

ついに「O-EDO」の国境に到着したわけだ。

そろそろ本格的に足の感覚がなくなってきたところだから助かった。

さて、早速街に入って祭りの会場視察でもーーー


「待て、そこの娘。その光る箱は置いてゆけ。さもなくば一刻も早く去れ。ここから先はさいばぁ文化の持ち込みは一切禁止だ。」


とは行かないらしい。

アタラヨさんの発光を見た門番の兵士に威圧的に警告される。

さて、どうしたものか。


「エッ、やだなぁ門番さん、これはただの鉄の箱で何も怪しいものじゃあないですよぉ〜」


「背丈ほどの鉄の箱を背負う不審者も入れる訳にはいかんわ。そら、とっとと失せんか!」


ウッ、墓穴だったか…精一杯の美少女スマイルもしたつもりだったんだけど、効果はなかったようで

門番の人に文字通り門前払いを食らってしまった。


「結局振り出しだよ〜!どうしよアタラヨさん〜!」


「…仕方ありません。ここは強行突破を」


「いや、ジョーカー切るの早いって!」


門番に追い返されて、少し離れた場所のコンビニに入り、イートインで改めて作戦会議。

しかし手札全てジョーカーの脳筋AIとただの美少女では特に名案が思い浮かばない。


「このままじゃソゼを倒すどころか街に入るのも夢のまた夢だよ〜!」


ウガーっと頭を抱える。欠片探しの旅も早々に万事休すか。

そう思った時だった。


「姉ちゃん達、街に入りたいなら入れてやろうか?」


一人の少年が声をかけてきた。

その少年はキッと、上を向いた目にボロボロの身なりをしていて体はかなり痩せていた。


「え、君が?というか今姉ちゃん『達』って言った?」


「うん。その箱と喋ってたろ?箱ん中に誰かいる事くらい、あんだけデカい声で喋ってりゃわかるよ。あと、キミじゃなくて、トータな。」


しまった。今まで気にせず喋ってたけど、アタラヨさんと喋ってる様子って鉄の箱に喋りかける不思議な美少女だよね。…これからアタラヨさんと喋るときは周りに気を配らなくてはいけない。


「よろしくトータくん。私はカエデ!というか、トータ君は街に入れる方法を知ってるの?」


「トータでいい。入れてやるって言ったろ。もちろん知ってる。タダでとは言わねぇけど。」


ぐっ…しっかりしてるなこの少年。


「とにかくついて来いよ。」


私の返事を聞くまでもなくトータは走り出し、慌てて追いかけると、先ほど門前払いを食らった門から数百メートル離れた大木に連れてこられた。




「ここが俺の秘密の通路の入り口だ。見つかんねえうちに入るぞ。」


大木の根本の草を退けると、そこにマンホールの蓋が現れ、蓋を開けると縄梯子のようなものがかかっている。

穴の底は暗くてよく見えないが、トータは臆する事なく降りていくので私も負けじとついて行く。

これ急に切れたりしないよね…?


「ついて来い、しばらく真っ直ぐだ。」


そう言うと、トータは暗闇を迷う事なく駆け出す。

しばらくついて行くと先ほどと同じような縄梯子のかかった壁に当たった。今度はこれを登って行くようだ。

縄梯子を登り、マンホールの蓋を開けると、先ほどまでの薄暗い通路とは打って変わって煌びやかな光が目に入る。どうやら無事街の中に入れたようだ。


「ホントに入れちゃった…!」


外からは見えなかったが、流石は日の本一の街。かなりの人でごった返している。

祭の開催が近いからか、住人は準備に追われ騒然としており、私達の事も目についていないようだ。


「だから入れるって言ったろ。っつってもまだ街のど真ん中だ。バレたらとっ捕まる。急ぐぞ。」


街に見惚れる私を横目にトータ君は人の目を掻い潜りぐんぐん進んでいく。

私も負けじとついて行くが、見失わないようにするので精一杯だ。

裏道に入って右へ曲がり、左へ曲がって、壁を乗り越え、また曲がって…


「着いたぞ。ここが俺んちだ」


まるで迷路のような道を辿った先にあるのは先程とは打って変わって、みすぼらしい民家のようなものだった。


「ここに一人で住んでるの?」


「今()はな。オレの他にも何人か居たけどみんな捕まって連れてかれちまったよ」


「捕まったって言うのは、徳川に?」


「ああ。アイツらはサイバー文化を目の敵にしてやがるからな。サイバーのサの字でも言ったもんならあっという間にお縄さ」


立て付けの悪い扉を力任せに開きながらトータは続ける。


「サイバーの文化を受け入れりゃ飢えて死ぬ人間だって減る。そう思ってオレ達は日々独学でサイバー文化を学んでようやっと、あと少しで実用化出来るってときだ。徳川の野郎がオレ達に派手な祝砲をぶちかまして来た。」


「祝砲…って」


「ああ、とびきりド派手なヤツを何の忠告も無しになぁ。それで俺たちの集落は一瞬で灰塵よ。残った仲間も次々連れてかれてもうここにゃオレしか居ねえってワケ」


やたら達観した喋りをする子供とは思っていたが……そこまで凄惨な過去があるなら納得だ。

それにしても、徳川がそこまでサイバー文化を毛嫌いしているとは。何故そこまで嫌うのだろう?

それに何より気になるのは…


「で、どうして私達を街に入れてくれたの?」


「言ってたろソゼを倒す、って。だからだ。」


トータは真っ直ぐ眼差しを向けて言う。


「姉ちゃんはともかく…姉ちゃんの持つその箱。ただならぬ気配がするぜ。相当スゲェ奴が入ってんじゃねえのか?」


ど、どこまで鋭いんだこの少年!?まぁ正確に言うと入っていると言うか、、


「ええ。正確に言うとこの箱自体がスゲェ武器、です」


今までダンマリだったアタラヨさんが急に喋り出したかと思うと、勝手に剣モードに変形を始め、あっという間に私の右手に取り付いた。


「…!!こりゃ驚いたぜ…徳川への対策として他国の武器は結構見て来たつもりだったんだが、その中でも喋る武器なんてものはなかった!」


「ただ喋るだけではありません。戦況を見極め、使用者に的確なアドバイスを送ることも出来る、言うなればスーパーAI。最強の剣。どうも私がアタラヨです。」


「すげぇな、意思があるってレベルじゃねぇ!」


…まぁ、アタラヨさんの言うことは置いとくとして。トータは高性能AIを積んだ上、変形機構のあるアタラヨのハイスペックぶりを見て目を輝かせて、これなら行ける!と叫んでいる。…ホントに行けるのかなぁ。


「あのー、盛り上がってるとこ悪いんだけどださ、いくらアタラヨさんがスーパー強い剣だとしてもあの警備を掻い潜ってくのはなかなか厳しいんじゃあ…」


「おや、カエデ。もう忘れたのですか?祭の終盤、ソゼは必ず表彰式に出て来る。そこをバーっと行ってズバーですよ」


「いや、それは聞いたよ!てかさっきより説明適当になってない?」


相変わらず機械っぽさの欠片もない作戦立案をするアタラヨさんに突っ込む。


「問題はあの警備をどう抜けるか、でしょ!」


先程街の中を走っていた時もあちらこちらに衛兵の姿が見えた。と、なると一国の主が出て来る公の場の警備はとても厳重なものとなるのは明白だ。


「警備…ああ、問題ありませんよ」


しかし、アタラヨさんはまるでそんなことは問題ではないと言った口調で続ける。


「簡単に警備の内側に入る方法があるではないですか。表彰式、ですよ?」


「…まさか」


「表彰される側になる、ってことか?」


トータの問いにアタラヨさんがいつもの2割マシで発光して答える。


「その通り。」


「その通り。じゃないでしょ!第一どうやって入賞するの!?祭三日後だよ!?」


あまりの無謀な作戦に私は猛抗議する。流石に現実的ではない。


「ね、トータ君もそう思うよね?」


もっと現実的な作戦を練るべく、横で難しい顔をする少年に同意を求めた。

だが、帰って来た答えは私が思うそれとは違っていた。


「…いや。アリかもしれねぇ、それ」


「…へっ?」

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