表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

エピローグ

 とある海に囲まれた孤島に、変わり者たちが住んでいるという噂がまことしやかに流れている。


 そこは黒橡(くろつるばみ)の魔女と名乗る魔女が住み、建国の賢者が住まうと言われている。


 その魔女の住処に行く方法は三つ。一つは魔女の家の招待状を持って、王都の何処かの裏道を歩くと、突然古めかしい扉が目の前に顕れ、魔女がその場に居るときは、中から声がかけられ扉が開くであろう。それと同じく魔女の力を借りたい身分が低い者には快くその道が開かれる。

 しかしそれは魔女に対価を支払って願を叶えてもらう魔女の家の行き方。


 魔女の住む島に行く方法はあるのか?

 海に出て一週間。途中で縄張りをうろついている海竜を倒し、船を沈めようとしてくるクラーケンを倒し、通るものを己たちと同じ身の上にしようと死の船団が行く手を阻む、海を越えて行き着かなくてはならない。

 どんな猛者でも海上という場で、これほどの強敵に打ち勝つのは無理というもの。


 最後の一つ。それは死の慟哭から魔女が手を差し伸べてくることがある。その手をとるか取らぬかは、己次第。

 その手を取れば島に行けるだろうが、魔女の島に囚われ二度とこの地には戻ってはこれぬ。

 魔女の手を取らなかったものは、安らかな死を与えられることだろう。


 なぜなら魔女は『死』の魔女なのだから。




 そんな魔女の島は今日も平和だ。青い空が広がり、青い海が島を囲んでいる。


「魔女さま〜。お酒をお持ちしましたよ〜」

「カリーナ! 走っては危ないです!」

「魔女様。今日のお野菜お持ちしましたよ」

「魔女殿。今度のおもちゃはどうだ。いい出来だろう?」

「魔女。今日は海に行ったら人魚が釣れたが食べるか?」

「魔女さんや。今日はハンバーグが食べたいのぅ。それからトカゲの。人魚は海に帰して来るがよい。魚は嫌じゃ」


 魔女の周りはいつも人でいっぱいだ。

 それがこの島の形であり、魔女の願いなのだから。

 人々の願いは魔女が叶えよう。魔女の願いは島が叶えよう。それが魔女の住処の存在意義なのだから。





「ったく、ハンバーグって気楽に言うなよ。卵と牛乳がいるんだからな!」


 私はぶちぶち文句を言いながら、魔牛(ンモーモー)の乳を桶に絞っている。

 腹いせにハンバーグに野菜を練り込んでやるからな!


「それにサイファ! 私は普通の魚を釣って来いと言ったのに、何故に人魚! 亜人種系は食べないって言ったはずだけど!」


 いつもながらの島の状況に、ふと顔を横に向け、青い色を見る。いつもと変わらない空と海との境界線がわからない青一色の風景。


「レイラ! ここに居たのか! 探したぞ!」


 聞き慣れた声に、そちらの方に視線を向ければ、肩で息をしているクロードが立っていた。

 王都から戻って来たばかりなのだろう。コートを肩にかけている。

 王都はまだ寒いらしいが、この島の気候にコートは必要ないからな。


「別に探しに来なくても、必要な材料を手に入れれば戻るし」

「レイラが一人でいると心配になるじゃないか」


 ……いや、私は迷子になるほど子供ではない。


「やっぱり魔術師長の仕事をやめて、ずっとこの島にいるべきだと思う」

「はぁ、あの王子が色々手をくだしたんだから、クロードは当分の間、魔術師長をしないといけないと思うけど?」


 王子は今は王代行という形をとって、国を動かしている。代行というのは前王の死後一年後、正式に王として名乗ることが許されるらしい。喪に服すという意味だそうだ。 


 その王子が王弟と関わった者たちを裁いたらしい。これはクロードから聞いた。

 それにより、魔術師団はほとんど機能しない状態になるほど人が減り、クロードが色々頑張っているらしい。本人からの言葉なので、頑張ったアピールをしたいだけなのかもしれないが。


 だから、今この状態でクロードが抜けると、国の防衛としても意味が成さなくなってしまう。


「アズヴァール公爵を継ぐ頃には絶対に辞めるからな」


 それは一年後になると思うから、それまでに人を育てればいいだけの話だ。好きにすれば良い。


「そうすれば、殆どをこの島で過ごして、レイラと一緒に食材探しや、島の管理も一緒にできる」

「公爵の仕事があるのを忘れているだろう」

「さっきもまた、ここではないどこかを見ていただろう? 俺がレイラの側にいる。だから俺がレイラの居場所なのを忘れるな」


 別に空と海を見るぐらいいいと思うけど?


 必要な乳は取ることができたから、帰るか。私は立ち上がって、クロードを見上げる。


「私の居場所はこの島ということに変わりはないよ。クロード」


 家に向かって足を進めると、右手に持っていた桶をクロードに取られ、右手を繋がれてしまった。


「ここで暮らして一ヶ月が経ったのだから、そろそろ旦那様呼びしてもいいと思う」

「いや、しないから」


 海の香りを風が運んでくる。傾いた日差しの中、今日も変わりなく一日が過ぎていくことに、私の心は穏やかだ。


 しかし、魔術師長とあろう方が、自分の足で魔女の私を探しにくるなんて、如何なものなのでしょうかね。旦那様。



ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


教主の話まではたどり着かず、王弟の話で加筆は止めておきます。

一気に追加しましたが、如何でしょうか?

説明不足があるようでしたら、追加します。



ご意見ご感想等がありましたら、下の感想欄からお願いいたします。


面白かった。楽しかったと評価いただけるのであれば、下の☆☆☆☆☆を反転させて評価していただければ、うれしく思います。


”いいね”で応援ありがとうございました。

ブックマークありがとうございます。

評価ありがとうございます。


読んでいただきましてありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ