第1話 魔術師長様。貴方、結婚する気があったのですか?
私は幻覚を見ているのだろうか。目の前に座っている人がどう見ても有名人にしか見えない。
いや、御本人様だとわかる。何故なら魔力の多さを表す漆黒の髪に、光を反射しているような金色の瞳。そして、一瞬女性かと思えるほどの容姿が整った麗人。
噂高い麗しの魔術師長様本人だと、人との繋がりが希薄な私ですら知っている。
これが仕事の話し合いなら百歩譲って、魔術師長直々に話し合いの場に出てきたと理解できる。
しかしここはアズヴァール公爵家のサロンの一室だ。そして、魔術師長の名は……なんだっけ?アズヴァールでは無かったはず。現在アズヴァール公爵家は公爵お一人しか存在しない。子供に恵まれず、養子も取らず、奥様に先立たれ、今はお一人しか住んではいない。
「確認したいのですが、私はお見合いをするように、ここに呼び出されたのですが、間違いはないのでしょうか?」
そう、ここにはお見合いをするように言われて来たのだ。来てみれば麗しの魔術師長様がいる。それは確認もしたくはなるだろう。
お前、結婚する気があったのかと。
確か、何度か婚姻の話が上がったと聞いたが、ことごとく目の前の男が握りつぶしたと聞いた。結婚などする意味がないと。
「間違いは無いですよ」
間違いはない。ということは、結婚をしなければならない事態になったということか。たとえば、このアズヴァール公爵家を受け継ぐことになったこととか。
「そうですか。私で何人目ですか?」
「その言い方は傷つきますね」
いや、取り敢えず私が何人目のお見合い相手か確認するだろう。この私でも耳に入っていることだ。結婚する意味がないと、いくつも縁談を潰していったか。
「では言い換えます。なぜ、私なのでしょうか? 私は田舎の血筋だけは古い家に生まれた伯爵家の娘ですよ」
伯爵令嬢とは言わない。なぜなら、私は貴族の中では行き遅れと言われる二十二歳。
「そうですね。私の事はどれほどご存知でしょうか」
「さぁ? 名乗られてもいない方の噂を聞かれても、どちら様でしょうかとしかお答えできません」
いや、目の前の男は名乗ってないから。私は使用人にこの部屋に案内されて、グラシアール伯爵令嬢が参られましたと、紹介されたから、頭を下げて名乗ったよ。
『レイラリズ・グラシアールと申します』
『そこに掛けてください』
と返された。この男は私には名乗ってはいない。
「ド田舎には私の絵姿は出回っていないようですね。私も己自身に傲っていたようです。はじめまして、クロード・アズヴァールです」
そうそう、クロードだ。
ん? アズヴァール? それに名前ももっと長い名前だったはず。
「このたび、アズヴァール公爵の爵位を承ることになった者ですよ」
ふーん。やっぱり、爵位の譲渡に婚姻の条件が付けられたのか。しかし、私の嫌味に、田舎者と蔑んできた。といっても、本当のことなので、何も思うことはない。都会には何の魅力も感じない。
「それで理由ですか……私は貴族の付き合いというものは無駄だと思っていましてね。領地から出ること無く、行き遅れの令嬢があのグラシアール家にいると聞きましてね。丁度いいと思ったのです」
丁度いいねぇ。あのグラシアール伯爵家に引きこもりの行き遅れの娘がいるのなら、文句をいう輩も居ないという魂胆なのだろう。我が家は血筋だけは建国時から存在するからね。
「契約結婚を持ちかけるにはですね」
契約結婚。公爵の地位を得るために、婚姻の条件が出されたのであれば、自分の都合のいい嫁を探して、文句を言わせないように契約で縛ろうということか。
「そうですか。では、アズヴァール公爵様の条件提示をお願いします」
「おや? 反論しないのですか?」
「反論ですか? この状況でですか?」
この状況。見合いとはいえ、見合い相手と二人だけの状況ではない。サロンの中には複数人の人がいる。案内をしてきた使用人は勿論のこと、黒いローブを纏った者たちが壁際に二十人ほど控えている。
その黒ローブの者たちからの殺気が酷い。恐らく私の前に呼ばれたご令嬢方も同じ状況に追い込まれて、逃げ出したに違いない。
「それにここにはお見合いに来るように言われたのです。アズヴァール公爵様に……今はご隠居されたのでしょうか? アレン大叔父様、御本人に言われたのです。まぁ、反論があるとすれば、見合いの席で私がお聞きするまで名乗らない方を跡継ぎに指名したのは如何なものなのでしょうかと、アレン大叔父様に耳打ちするぐらいですね」
目の前の男は黒ローブどもを使って威圧してくるのであれば、私はこの屋敷の主の名を出そう。
恐らく爵位の譲渡はまだのはず。何故なら、先日会ったアズヴァール公爵様はまだまだお元気で、単身グラシアール伯爵領まで来たぐらいだ。
せめてお供の者は付けたほうがいいと私は思う。
しかし、私がアズヴァール公爵様の名を親しげに出したことで、目の前の男は笑みを深めた。美人が綺麗に笑うと怖いな。
いや、内心思うように事が運ばなくて苛ついているのかもしれない。本当ならこの異様な空間は普通の令嬢では耐えきれないだろう。
「そうですね。条件は国王陛下主催の夜会には一緒に出てもらいます」
ちっ! 面倒くさい。
だが、国王陛下主催の夜会に公爵夫妻が揃って出ないと、色々勘ぐってやっかみを言うのが貴族社会というものだ。まぁ、それは仕方がない。
「後は、私に干渉しないでいただきたい。貴女に割く時間は、これ以上ありませんから」
白い結婚をお望みということか。面倒事が無くて良い。
「まぁ! とても好条件ですね」
私が両手を打って喜ぶように言うと、綺麗な笑顔が瞬時に真顔になった。これで好条件と言われるとは思わなかったのだろう。
「私の条件も同じく、私に干渉しないでいただきたい。これのみです。気が合いそうですわね」
私がニコリと笑みを浮かべれば、男も直ぐに気を取り直して、胡散臭い笑みを浮かべる。
「ええ、本当ですね。契約書を作るまでもなさそうですね」
互いに干渉するなと言っているのだから、事細かに決める必要はないということか。まぁ、この男が私に用があることもないだろうから、それでいい。
「では、これにサインをしてください」
そう言って男は胡散臭い笑顔で。婚姻届を差し出してきた。婚姻届の書類に今ここでサインをしろということは……この男は本当にこれ以上私に割く時間はないと言いたいのだろう。
「互いに干渉しない。そうですよね」
そして、言わせないと言わんばかりに念を押してくる。
うーん? これはアレン大叔父様はどういうかな? まぁ、いいか。責任を取るのは目の前の男だ。
「ええ、式も披露宴も無いということですね。わかりました」
了承して、私は婚姻届にサインをした。私がサインをした用紙に男もサインをして、そのままサロンを出ていった。黒ローブ共を引き連れて。
「奥様。申し訳ございません。この様なことになるなど……」
私が座っているソファの横に来て、深々と頭を下げている人物がいる。この屋敷の中を案内してくれた使用人だ。
しかし、奥様か。そんな柄じゃないのだけど。
「ディオールさん。頭を上げてくださいな。全部、アレン大叔父様が悪いのです。見合い相手を楽しみにしておくと良いと言って、紹介者のアレン大叔父様がこの場に居ないのですもの」
そう、それがあの男を助長させることになっていたのだ。この場に大叔父様が居てくれれば、少しはマシだったと思う。まぁ、少しだけだろう。
ディオールと呼んだ使用人は頭を上げて、困ったような顔を私に見せてきた。白髪のご老人だか、私が幼い頃は公爵様の侍従としてグラシアール伯爵領に付いてきた人物だ。すっとした隙がない立ち姿から、ディオールが武人だと言うことが窺い知れる。
「大旦那様は今、急遽国王陛下に呼び出されて、辺境の地に向かって行っている次第であります故、この度の件は誠に申し訳ございません」
辺境に? 大叔父様が? 確かに武人と名を馳せた大叔父様に国王陛下が命じることもあるかもしれないけど、六十を越えた老人に辺境の地の仕事を与えるのは普通なのだろうか。
まぁ、私がそんなことを考えても仕方がない。
「それで、私は今日からここに世話になるでいいの?」
「はい、お部屋の用意は整えてあります。しかし、本当に侍女をお一人もお連れにならなかったのですね」
「必要無いから。それに私のことは聞いているのでしょう?」
私のこと。それは私が領地どころか屋敷からも出ないということを。
「はい。お部屋から出られないと、お聞きしています」
「そっ。私は与えられた部屋から出ないから、侍女は必要ない。それから、部屋に誰も入らないで欲しい。まぁ、アレン大叔父様も好条件の人物を私に充てがったものね」
私は別名引きこもり姫だなんて言われているぐらい部屋から出ない。出る必要がない。
「私の部屋はどこかしら?」
「事前に伺ったとおりに、日当たりが悪い北側の部屋になりますが、本当によろしゅうございますか?」
ええ、北側の日当たりの悪い部屋がいいのよ。
「いいわ。さっそく案内して」
そして、私は案内された北側の薄暗い部屋に入った。中に入るときにきちんと、絶対に扉を開けないようにとも言った。
中は昼間にも関わらず薄暗いが、女性の部屋らしく、明るい色で整えられている。そこで一番に目に入った座り心地の良さそうなソファに腰を掛けた。
「なんだか、昼寝をするのによさそうなソファ」
横になりたいけれど、今日の見合いの為に整えられたドレスを着たまま横になると、きっと窮屈で、横になった気にはなれないだろうな。
そう思い、立ち上がって誰も居ない部屋でドレスの背中で留められているボタンを外す……窮屈すぎて腕が上がらない。
「はぁ。もうこのドレスはいらないか」
このドレスは兄の嫁が嫌がらせのように私に着せたドレスだ。いつまで実家に引きこもっているのだと。さっさと出ていけという意味なのだろう。
しかし、馬車で3日掛けて、この窮屈なドレスを着続けるのも疲れた。胸からナイフを取り出して、思いっきり上から下に切り裂く。
そのままコルセットの紐も切る。この殺人兵器は最悪だ。簡単に息の根を止めてくる。
だから、人と会うのは嫌なんだ。こんな殺人兵器を着なければならない。
「ふぅ。やっと解放された……ああ、このまま帰ろう」
私は先程入ってきた扉に向かって、扉のノブに触れる。
「『我の家路の扉を開け』」
そして、扉を押して開く。そこは青い空が広がり、緑の楽園が視界を占め、遠くの方には空を写したような光り輝く海が見える。
「ただいま。三日……いや四日ぶりか?」
ん? 部屋から出たから、家から出たことになってしまった。
「おい露出狂。四日ぶりに姿を見せたと思ったら、なんだ? その格好は?」
顔を声がする方に向けると、鋭い牙が一番に見えた、そのまま視線を上げると、私を馬鹿にしたような新緑の瞳が見下ろしているのが視界に捉えた。
「やぁ。サイファ、久しぶり」
「四日ぶりだ。はぁ。服ぐらい着ろ」
「半裸のヤツに言われたくはない」
全身が緑の鱗に覆われた竜人の男には服など意味がなく、帯剣するための腰巻きとベルトを身に着けているのみだ。しかし、四日ぶりに見るサイファは相変わらず、厳つい顔つきだ。絶対に肉食だろうと思える。歯なんてギザギザだし、口は裂けているし、頭から角なんて生えているし、剣なんていらないだろうっていうぐらい鋭い爪なんてもっている。絶対に肉食だよな。
「クソ暑いのに服なんて着てられるか。で、どこに行っていたんだ?」
「ああ、結婚してきた」
「は?」
シミーズドレス姿のままだと、流石に痴女か。空間に手を入れて、白いワンピースを取り出し、頭からかぶって袖を通す。
これでいいだろう。
さて、四日も留守にしていたら、腐っている食材もありそうだな。もったいない。
「おい! ちょっと待て!」
出てきた扉を再び開けようと、取っ手を掴んだところで、呼び止められてしまった。
「結婚してきたって言ったよな」
「言った」
「夫はどこに消えたんだ? 墓地に埋葬してきたとか言わないよな」
「失敬なトカゲだな」
「俺は泣く子も黙る竜人だ!」
「そうだね。恐怖で固まってしまうってやつだね」
「違うわ! 英雄サイファは子どもたちから人気だったんだぞ!」
「英雄様も今じゃ島流しにあって、この島の何でも屋だな」
「うぐぐぐぐ」
ここは海の中にポツンと浮かぶ孤島。周りには他の島影は見られず、大陸の影も見えない。
「魔女様、帰ってこられたのですか?」
いじけて背中を曲げている鱗をまとった巨体の向こう側から、金髪の青年が苦笑いを浮かべながら声をかけてきた。
英雄というものは所詮、使い勝手の良い国のプロパガンダだ。必要なくなれば消される存在。この青年もそのことを良くわかっているのだろう。
「つい、さっきな」
「よかったです。妻の薬をいただけませんか? お代は今日狩ってきた野鳥です」
金髪の青年の左手には羽をむしり取って、内臓も処理された肉の塊があった。今日の夕食は焼き鳥にしようか。
「ああ、いいよ。それにしても少し前まで、鳥の羽をむしるのも嫌だと言っていたのに、成長したな」
「まぁ、妻と一緒に生きるためなら、私も変わりますよ」
私は空間に手を入れ、片手で持てるほどの大きさの茶褐色の小瓶を取り出して、青年に差し出す。
「君たちに後悔が無いのなら、それでいいよ」
茶褐色の小瓶を受け取った金髪の青年は、世の女性たちを魅了した綺麗な笑みを浮かべた。
「後悔はありますよ。妻があの様になる前に、魔女様に頼っておけばよかったと」
そう言って薬の代金として、鳥肉を置いていったのだ。
「あの聖騎士様も変わったな」
竜人サイファが金髪の青年の後ろ姿を見ている。それは己も変わったと言いたいのだろう。
「それで、奥方の聖女様の容態は芳しくないのか?」
「呪いを浴びすぎて自身が呪いと化しているからね。今は日常生活を送れているけど、呪いが勝つか、私の術が勝つか、微妙だね」
教会という組織で酷使され続けた聖女は既に聖魔術を使えないほどに、呪いに蝕まれている。今は聖騎士の青年の術と私の術で押さえ込んで、何とか日々を送っているのだ。
聖騎士の青年が、私を頼らなければ、聖女は教会の手によって、神の元に還されていただろう。聖魔術が使えず、呪いを持った聖女など表には出せないからな。
聖女の呪の解除には時間がかかる。それは仕方がない。
さて、今日は焼き鳥だ!下ごしらえをしなければ!
私は自分の家に入ろうとしたところで、肩を掴まれ引き止められてしまった。
「それで、結婚相手は地面の下に埋めてきたのか?」
だから、なぜ私が結婚相手を地面に埋めなければならないのだ?それから、爪が肩に食い込みそうで、嫌だから離してほしい。
「サイファは私をどう見ているのか聞いてみたいなぁ」
ジト目で厳つい竜人を見る。どういう思考でこんな結論を出したのか、言ってみるといい。
私はサイファの凶器的な手を払い、家の中に入る。
「それはこんな元無人島に好んで住む貴族の令嬢だろう?黒橡の魔女って名乗っているだろう?お節介焼きだろう?」
まぁ、合っている。ここは貴族というしがらみから開放されたいという願望から、幼い頃に見つけて遊び場としていた島だった。何が嫌だったかというと、血だけ古い家というのは、貧乏のくせにプライドだけは高くて、理不尽な教育をしていたことだ。
黒橡というのは、まぁこの世界には無い言葉だ。櫟の実を砕いたものを染料にして染めた青みがかった黒の色のことだ。この世界では無いところでは貴人の喪服に使われた色でもある。そして、青みがかった黒色はグラシアール伯爵家特有の色だ。
「人の心をえぐるのが得意だろう? ムカつくっていうだけで、火の海に叩き落とす鬼畜具合だ」
「まぁ、そんなこともあったね。昔のことだ」
「で、可哀想な旦那をどう処理したんだ?」
このトカゲは本当に失敬だな。
はぁ、戻って来たばかりだから、このトカゲは構って欲しいのか。そうかそうか。なんだかんだ言っても寂しがりだな。
私は長椅子に腰を下ろし、魔術でお茶を用意する。お茶ぐらいならわざわざ私が直接用意しなくても、簡単に済ませられる。
するとサイファは向かい側の長椅子に腰をおろしてきた。
「私の結婚相手は、今の魔術師長様だ。私がどうこうしようものなら、世間的に問題になる。そんな面倒なことはしない」
「今の魔術師長って誰だ? 俺が居たときは、つるっぱげのクソジジイだったよな」
つるっぱげのクソジジイが五年前に引退したために、今の魔術師長に代替わりしたのだ。というのが世間一般的な見方だけど、裏の噂では、魔術師長の地位を得るために、魔術師クロードが引きずり下ろしたとも噂されていた。
「魔術師クロードだ」
「……あの坊っちゃんか?」
「ああ」
サイファから見れば、人族は大きいか小さいぐらいしか、違いがないのだろう。私も他の竜人がサイファと並んでも、違いがよくわからないからな。
「もやしのようにヒョロヒョロのシャルヴァール侯爵家の坊っちゃんか?」
もやし……確かに出会った頃はヒョロヒョロで栄養不足のように思われた。そうそう、家名も思い出した。グラシアール家と同じく魔術が使えないとクソ扱いする一族だ。
「ああ……シャルヴァール家だった。思い出した」
「いや、シャルヴァール家の出来損ないって言われていた奴を一年ほどここで引き取ったじゃないか! 覚えておけよそれぐらい」
「いやぁ、懐かしいね。あの時はまだサイファと賢者しかこの島にいなかったからな」
アレン大叔父様に言われて、貴族社会から切り離した生活をさせて欲しいと言われたんだっけ?
さて、マグカップにキッチンで用意していたポットを浮遊させながら、お茶を注いでいく。因みに熱いと目の前のトカゲは怒るので、冷えているお茶だ。
その入れたお茶を器用にマグカップから飲むトカゲ。よくこぼさないで飲むものだと、毎回感心する。絶対にギザギザの牙の隙間から漏れそうなのにな。
「ん? あの坊っちゃんは普通にお前を解放したんだな」
「解放? いや普通に関わってくるなという感じだったな。忙しいのだろう? 色々と……」
まぁ、見た目が良いから、女性には良い印象を持っていないのだろう。自分の周りをつきまとうなというオーラがありありと見て取れた。
「は? いや、あれだけイズミと一緒にここで暮らすって、別れ際に泣きつかれていたじゃないか」
「はぁ。サイファ。私は当時五歳。十二歳の貴族の子息を面倒みるには問題になる年齢だから、外見を二十歳ぐらいにしていただろう。それに名前は偽名だ」
イズミは前世の氏だ。偽名でも呼ばれて違和感のない名にしたのだった。