二人
マルタがクリスティーヌの10の誕生日に彼女に与えた弓は特注の立派な品だった。
弓自体は金属でできており、それは三つに分解できる。そして分解した弓は一見旅人が荷物を入れるためによく使用するような袋にしか見えないケースに収納できるようになっていた。この袋は内部が二つに分かれていて、中に弓とそのほかの荷物を分けて収納できるという優れものだ。
武器の扱いを教わる過程で彼女が幼いころからマルタに言い聞かされていたことは、「武器を持っていることを他人に悟られないようにすること」であった。女が武器を持つことはこの世界においてあまり一般的ではないため注目を集めてしまうし、堂々と武器を所持していると周囲の人間に警戒されてしまう、というのがマルタの考えだった。そのために、与えられたケースを一目見た瞬間からクリスティーヌにはそれの役割がわかっていた。弓は距離を取って攻撃できるという点で重宝する武器であったから、一見それとわからずに持ち運ぶことができるのは彼女にとってありがたかった。
弓のほかにもクリスティーヌはマルタにナイフと鞭の使い方も教わっていた。そして彼女は、いざというときにすぐに取り出せるようにとの教えを守ってそれらを常に腰から下げていた。
クリスティーヌはマルタの指示通りに弓を組み立て、ナイフと鞭の入った鞘をいつものように腰に下げると外に出た。
オーウェンとマルタはもうすでにそこにいた。
二人も自分と同じ弓を持って鞘を腰から下げているのに気づき、クリスティーヌは少し驚いた。オーウェンはともかくマルタが彼女と同じように武器を身に着けているところを彼女は見たことがなかったからだ。マルタはいつもクリスティーヌに教えるときは長弓を使っていたし、彼女が腰に差していたのはいつもナイフではなく長剣だった。それにマルタはクリスティーヌの知る限り、鞭を持ち歩いていることなどなかった。
しかし、同じような服装の二人を見てクリスティーヌは少なくとも彼らは同じ組織に属しているようだ、と考えた。