恐怖の邂逅3
「こんなところまで逃げるなんてネ、でももう終わりヨ……」
それは怒りに満ちた声だという事はわかったが、人の声ではなかった。
私はその声の方を、見上げるように振り向くと。
そこにはボロボロの法衣のようなものを纏った、骸骨がいた。
それは私の事など興味がないように、その骨の手で私を横に避けて、彼等の方に進んでいく。
ローブの男は少し顔を上げてその骸骨を視界に入れた後に、観念したのか頭を床に付けて天井を仰いでいる。
青い鎧の男だけは最後の体力を振り絞り立ち上がると、仲間と骸骨の間に立ちふさがった。
しかし鞘から抜き放った剣は、半ばから折れており、到底戦える状態だとは思えない。
だが目からは闘士を感じる。
その美しい瞳に一瞬見いってしまった私に向かって、男が叫ぶ。
「君は逃げろ!!」
その言葉に弾かれるように飛び上がると、私は這うようにして骸骨を尻目にダンジョンの外に出た。
扉の部分を過ぎると、膝に地面の小さな粒が食い込み顔をしかめるが、痛みを恐怖が上回っているのか、そのまま這いつくばって進む。
次に私が振り返ったのは、あの青い鎧の男性の短い呻き声が聞こえたから。
彼は胸を押さえてよろけている、肺に穴が空いているのか、口から血を大量に吐いている。
法衣の骸骨の右手には大量の返り血が……。
私は真っ青になりながら、そのまま下がる。
うつ伏せに倒れた青鎧がこちらに向かって口を動かしていたのに気付く。
声が聞こえるわけではないが、唇がそう伝えていた。
「トビラヲシメロ」
はっと、私はさっき唱えた【閉門】の続きを口走る。
重苦しく門が閉じていく。
門さえ閉じてしまえば、彼等が死ぬ瞬間にダンジョンの外に排出されるはず!
そして扉は彼らを置き去りに、ピタッと合わさった。