意地悪眼鏡5
「やはり、ゴブリンが同時にかかって来ると見せかけて、藪の中から騙し討ちするつもりだったか、ありがちだが分かってしまえば万が一はないな」
考えてみれば、1階でも同じように魔法を使って見ておけばスライムに気付いただろうし、食人植物に小さな火球を打てばもっと簡単に進めただろう。
少しをケチってピンチを招くのは愚の骨頂。
「ルーク、通常のファイアボールを草むらに撃ち込んでやれ!」
魔法使いの男の子は持っていた鎧を地面に置くと、杖を手に取る。
──Fire lizard god
Lend me the flame of your tail──
杖の先端が燃えたかと思うと、それはすぐに渦をえがいて一つの球体に。
「ファイアーボール!」
そしてキャストと同時に杖で示された方向へそれは飛んで行く。
剣士ユーリカはその炎の玉を追いかけるようにして地面を蹴ると、剣に手を掛ける。
先に着弾した炎からあわてふためいて逃げるコボルトを尻目に、勇敢なるゴブリンは4体同時にその武器を振り上げた。
「スライドスラッシュ!」
剣士ユーリカがそう叫んだと同時に、鞘から抜き放たれた凶刃は、そのうちの三体を一気に切り裂く。
そして剣はそのまま振り抜かれるが、最後の1体を切り裂いた瞬間に左手を剣から抜いたのだろう。
鉄製の小手が、残った1匹のゴブリンの攻撃を防いでいた。
残念ながら彼らの後ろからはコボルトの追撃は無い。
炎の壁が邪魔をして寄ってこれないからだ。
最後に残ったゴブリンの、緑色の表情が歪む。
だがその表情の歪みは、悲痛なものではなかった。
ダンジョンモンスターだから?
死んでもすぐに復活する体だから?
いや。
作戦がうまく行ったときの策士の笑みだ!
剣士はそれに背筋を這う確かな悪寒を感じた。
そして目の前の緑の化物の事など忘れたかのように振り向く。
「リリン! ルーク!」
だが彼女がそれに気付いたときはもう遅い。
その目が捉えたのは、腹から槍が突き出た二人だった!




