意地悪眼鏡4
悔しげに地面を蹴る剣士。
足元に気を付けながらも、油断なく食人植物の方へ歩き、一太刀で切り伏せた。
魔法使いも、足元に気を付けながら剣士の後を追う。
「ユーリカ、これどうする?」
1階層を降りるときに魔法使いの男の子が聞く。
「とりあえず、私が持っていては片手が塞がってしまう、ルークが持ってきてくれないか?」
そんな会話をしながら一行は階段を降りるのだった──。
という一部始終を私は管理人室から見ている。
「完全に初見殺しだけど、よくこんな意地悪思い付くよね」
ダンジョンマスターは意地が悪いと以前言ったかもしれないけど、ティアマットの方がもっと意地が悪いってば。
っていうか、顔に出てるよねあれは、うん。
「モンスターの特性を生かした最大限の効果ですよ」
眼鏡をクイっって上げながらそう言われても、頭良いなぁってより、性格悪いなぁって気持ちが勝ってたもんね!
私は思い出し苦笑してから、ダンジョン管理のツルツルとした石板へと目を落とす。
「──2階層か」
先ほど油断をしたせいで鎧の一番大事な部分を失ってしまった剣士は、しかめっ面でその空間を睨んでいる。
二階層は元の三階にあたる、コボルトとゴブリンの混成部隊だ。
といってもスライム同様ランク1の魔物。
ゴブリンであれば、近所のガキ大将程度の体格にパワーしかない。
人間と違うところは、相手を殺すことに躊躇がないことくらいだろう。
逆に言えば大人、ましてや鎧を着て経験を積んだ剣士等には到底及ばないのは明白だ。
「今度はゴブリンにコボルト……先程のスライムといい、100エンランクのダンジョンとは思えないな」
剣士は失笑する。
とはいえ先程の失態の件もあり、緩みかけた顔を引き締める。
「ここにも卑劣な罠があるだろう、先に私が行く」
先程と同じ作戦ではあったが、今度は油断はしない。
「リリン、敵の生体反応は?」
指名された魔法使いは一つ頷くと魔物を関知する魔法を唱える。
──見えてる見えてる
隠れてないで出ておいで──
「マナハウリング」
魔力を測る目によって、女魔法使いにはきっと茂みに隠れたコボルトの数まで見えているのだろう。
元々奇襲を避けたり、得物を探すための魔法だ。うってつけだといえる。
「見えてるゴブリンが4体、その裏の茂みにコボルトが2体隠れてるわ」
そう言いながら念入りに部屋を見渡す。
もちろん今通ってきた道も、足元の土の中までも。
その視線を追って、問題ないと感じたのだろう。
一つ頷くと剣士ユーリカは眼前のゴブリン4体を見据える。