家族への報告5
「時にスチル嬢。ここになにしに来たんです?」
唐突に話を戻され、二人の関係にほほえましいものを感じて、ちょっと緩んでいた頬を引き締めた。
「今後のダンジョンの方針が決まったのでお知らせに」
私は、このルームの難易度調整について二人に話して聞かせた。
通常は一人づつ指名で相手をすること。
ストレンジャーの意向次第では連携も可。
富士子さんに関しては保留。
「ふむ、妥当な判断ですね」
「いんじゃね?」
呆気なく提案が通ったところで。
私は気になっていたことを聞いてみることにした。
「ところで、二人の加護ってなぁに?」
その途端、二人の顔が曇る。
ティアマットはあまり変化は無いのだけど、バジリスクはあからさまに目線をそらしてばつが悪そうにしていて、何かあるのがバレバレ。
「あっ、無理にとは言わないからね?」
気を使ったこともバレバレではあるんだけど。
私の顔を見たティアマットはため息をひとつ落としてから語りだした。
「私達の加護は、ベルゼブブですよ」
その答えに世間知らずな私ですら驚いたよ。
「貴方たち悪魔崇拝者だったの!?」
────守護と悪魔崇拝。
この世界は誰でも魔法が使える。
しかし、こと戦闘に置いては高いランクの精霊や神との契約が必要になる。
それが守護霊や守護神と呼ばれるものたち。
だが希に悪魔と契約を結ぶ人間がいる。
これは世界の統治者である天使からすれば、敵対する勢力であり、厳しく断罪される存在──。
「俺達は先祖代々、ベルゼブブを崇拝してきた家系だったんだ」
いつもは元気なバジリスクが、どこか申し訳なさそうにこちらの顔色を伺う。
ツンツンの青頭もいまは心なしか萎れているように見えるから。
「えっと、私は別にそれが悪いことだとは思わないよ」
ついついフォローしてしまう。
だけどティアマットは明らかに不機嫌そうな顔をした。
同情したとでも思われたんじゃないかな。
「では貴方は天使に対して仇なす立場なんですか?」
その声は皮肉にも聞こえたけど、どこか不安げな響きも混ざっているようで、この答えに私は慎重になった。
天使に支配されている人間の立場は脆い。
この問いにイエスと言うには、あまりにリスクの大きな世界だから。