ダンジョン五階の攻防5
バジリスクが放った練度の高い攻撃を、身体強化したスレインがギリギリはじき、最後に距離をとる。
「あぶねぇ……」
私はオレンジに光る剣閃がいくつも煌めいただけにしか見えなかったのに、スレインにはこれといって目立った外傷はないみたい。
「これがランク3のストレンジャーの戦いなんだ……」
ぶっちゃけランクがいくら上がっても、あんな戦い方が私にできるとは思えないんですけど。
「ちょっと! スレインカッコつけてないで、新手よ!」
2人の力は拮抗しているように思えたのだけど、後方からローナの叫び声が上がる。
スレインは目の前の剣士から視線を外さずに、辺りを警戒している。
目の前のゾンビの後ろの暗がりに、うっすらと光る目がいくつも浮かんでいた。
「おいおい、冗談だろ?」
「スペクターがこんなに……」
呆気に取られたようなラルフの声が聞こえてくる。
そういえば富士子さんに、戦闘になったらスペクターでも召喚してと言ったんだったっけ。
動きの遅いアンデットの一種なんだけど、「死霊の手」という特殊能力があって。
触られると、強化魔法が消えちゃったり、目眩を起こしたりする嫌な効果があるんだよね。
本体に攻撃力が殆どないけど、戦っている最中には居て欲しくない敵って事でお願いしたんだけど。
その姿が近づくにつれ、姿がハッキリする。
1、2、3……えーっと両手でも足りないんだけど!?
「富士子さんストップストーップ! 出しすぎですよ!」
私は管理者権限で彼女に指示を送る。
「えっ、もういいの?」
素っ頓狂な声が聞こえたけど、その場にいる全員が苦笑いをしている事に気づいているのかな。
「スチルちゃん、ちと、これはキツいぜ?」
苦笑いのままスレインさんがそう呟いてる。