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ダンジョン五階の攻防3

 あっという間に5階へ到着したので、私は魔法で様子を写し出してみた。


 完全に無傷で余裕の《漆黒の翼》が5階の階段を降りてくる。

 フロアの中央にはお尻を地面につけて座り、足を投げ出したバジリスクと。魔法の杖を左手で持ち、眼鏡を直しながら降りてくるストレンジャーを睨むティアマットの姿。


「お前らが新入りか?」


 抜き身の剣を肩に担ぐようにしたスレインがそう問いかける。


「アークゾンビだわ、珍しい……」


 ローナが呟くと、サッとラルフが彼女の前に盾を構えて立つ。


「2対3で悪ぃが、実力を見させて貰うぜ」


 スレインがそう言うやいなや、走り出す。

 バジリスクもそれに応戦するため、体を曲げてバネのように跳ねて起き上がった。


 スレインは肩で反動をつけ、まずはティアマットへと刀を振る。

 それを阻んだのは隣のバジリスクの刃。

 ガギィンっと窓の無い部屋に音が響く。


「おっと、脳は腐ってないみたいだな」


 スレインはゾンビである彼らの反応を見るためにわざと魔法使いを先に狙ったのかもしれない。

 ゾンビになって日がたてば、脳などの思考回路が腐敗し、単調な思考しか持たなくなるものが多いって聞くから。

 エンドライン兄弟は、幸か不幸か「新鮮」な状態でここに顕現したため、思考回路は人間の時とさほど変わらない筈なんだよね。


 一度体勢を整えたスレインは、隙無く刀を構える。

 それは両刃で、刃渡りが150㎝くらいのブロードソード。連戦の影響か、所々刃が欠けている。


──雨が川を伝うよに

  血潮を流れる源の

   魔素をその身に宿したる──


『フィジカルコネクション』


 ローナが《身体強化》の魔法を、ラルフとスレインにそれぞれ掛ける。

 彼らの身体に外的な変化は見当たらないけれど、身体を巡る魔素の流れがスムーズになり、動きや筋力に補正がかかったはずだ。

 同時に手にした大天使の羽が4枚、灰になり崩れ落ちる。


「ははっ、ローナ! トバしてんな!」


「ばかっ、敵に集中しなさいよね」


 その言葉通り顔を戻すと、すぐ目の前にバジリスクが迫っている状態。

 青い鎧からは音もなく、キレの良い斬撃が振るわれるが、身体強化されたスレインは余裕で躱す。

 返す刀で幅の広い剣を、バジリスクの肩に突き刺した。


 その様子をモニタリングしていた私は「ひゃっ」と声を上げてしまう。

 思えば《漆黒の翼》が人間相手に躊躇無く刀を振るうとは、何故か思っていなかったから。

 もちろん相手はゾンビなんだけど、腐ってもいないし、ちょっと心持ち穏やかじゃない。


 でもバジリスクは痛がる様子もなく、肩から剣を抜くように後退すると、刀を構え直す。


「痛くねえよ」


 強がりのように聞こえるその言葉だけど、ゾンビだしね。きっと本当に痛くないんだろうなぁ。

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