街でやること2
「──っはぁ、メガネ怖!!」
妙な夢を見たのか、なにかを叫びながら真夜中に目が覚めた。
自分が背負い袋さえ下ろしていないことに気付いて苦笑。
っていうか、ほっぺたにタタミの跡がしっかりついていて、触ると気持ち悪いんだけど……。
私は背負い袋をおろし、ホルダー付きのベルトを外していく。
流石にここで全裸というわけにもいかないけど、取り敢えず薄い肌着を残して全部脱いだところで、入り口に何かが置いてあることに気付いた。
それは宿屋のおばぁちゃんの差し入れのお握り。
私がなにも食べていないのを察したのかもしれない。
バレバレだったのだろうかと、少し恥ずかしい気持ちにはなったけど、ありがたく食べさせて貰うことにした。
翌日、おにぎりのお礼を言って宿を出る。
これといって会話は多くないんだけど、私にとってはそれが心地いい。
普段は日帰りできる距離の街だけど、今回みたいに時間が合わなかったり、滞在中に時間を浪費しすぎて帰宅の時間に間に合わなかったりする時にはいつもお世話になっている。
まだ朝日が登ったばかりだというのに、表通りの賑やかさは凄い。
朝の早い時間であれば、露店で食料が売られていて、昼頃には売り切って帰ってしまうので、今の時間にしか無いものも多いんだけど。
「うぅ、がまんがまん!」
今日の私は懐が心許ない……。
まずは朝一番で、鑑定商の所に行くことにした。
見て貰うものはあらかじめ、背負い袋に入れてきている。
ダンジョンに挑戦したストレンジャーは、モンスターにやられた時にアクセサリー等を落とす事があるんだけど、ダンジョンには吸収されずにその場に残り続けるんだよね。
放って置けば次の挑戦者が拾っちゃうから、私はこまめにそれを拾い集めて、宝物庫へと保管しているんだけど。
その中でも持ち運びやすくって、価値の高いアイテムをいくつか見繕って持ってきたってワケで。