錬銀術師4
私はおずおずと声を潜めて聞いてみる。
「で、おいくらでしょうか……」
オーダーメイドで、錬銀術の商品を買うと言えば、目が飛び出るほどの金額を請求されるのは分かってるんだけど、毎回この瞬間が一番怖い。
「そうだな、5,000エンかな」
覚悟していた。けど、ちょっとだけ魂が出そうになる。
いや出てたかも。
ダンジョンの維持費と、生活費で言うところの2、3ヶ月分だもん。
だけど、仕方ない「ぐぬぬぬ」と言いながら小切手に数字を書く。
ペンには私の魔力が籠っていて、そのサインが本物かどうかは、銀行がわりのギルドで判断されて、口座からのお渡しになる。
「ありがとう……と言いたいところだけど、毎回苦虫を噛み潰したようにお金を払われると、こっちも悪い気がしてくるじゃないか」
ホアキンはため息を付きながらメガネを直すと、なにやらコンゴに耳打ちをしている。
彼はその巨体に似合わず素早く部屋の奥に消えていった。
「いえ、思ったより……良い物で……」
未だダメージが拭えていない私は、下唇を噛みながら答えた。
「ちょっと待っててくれ、少しおまけしてやる。大口だし、取引も今回が初めてじゃないからね」
そう言うとコンゴが持ってきたいくつかのアイテムを、皮の袋に入れて寄越した。
「睡眠薬、麻痺薬、解毒剤なんかを詰めてやる。その捕獲網の発射装置に取り付けれるようになってるからな。中に使い方も入ってる、まぁ役に立ててくれ」
女の子は《オマケ》という言葉に弱い。
さっきまで血涙でも流しそうだった私も、笑顔でそれを受け取った。
「現金なヤツだなぁ」
いや、足元見て大金貰ってる貴方に言われたくないですけど。と言いそうになったが、こんなアイテムを作れるのも彼だけだからと口をつぐんで、笑顔を継続しておく。
「何かまた欲しいものがあったら言ってくれ。この街には3ヶ月ほどしたらまた来るから」
そう言いながら私を表までエスコートすると、静かに壁を閉めてしまった。
いや、関係が悪いワケじゃないんだけどさ。
やっぱり彼に物を頼むと高くついちゃうんだよねぇ……。
表通りに出ると、さっきまでの暗かった雰囲気から一転、屋台が昼間のようにひしめいて明るく街道を照らしていたんだけど。
買い食いをするほどの元気はなかった私は、そのまま宿を目指したワケで……。
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