錬銀術師2
街は夕暮れになりつつあった。
大通りを一つ逸れたところにまで露天がならび、街はこの時間でも活気がある。
大抵は荷車に野菜などを乗せて運び込み、そのまま売っていたり。
『屋台』と呼ばれる、移動式のカートにお店の看板がついたものまで様々だ。
午前中は野菜などの生鮮食品がならび、午後からはおやつになるような屋台や、アクセサリー等の非日用品が並ぶ。
そしてこの時間になると、夕食を取れるような露店に早変わりする。
まだ明るいけれど、仕事をこなした大人達が酒を呷って仕事の疲れを労い合っているようだ。
「ああ、色々食べたいなぁ……でも我慢我慢!」
私は一人で誘惑を振り切りながら、その奥の方へ足を進める。
そしてたどり着いた先には壁、行き止まりだ。
そこに「Tumble magicpotion 」と書かれた看板が駆けてあるだけで、入り口もおろか、窓すら無い。
私が初めて案内されてここに来た時は焦ったけれど、もう慣れたもので。
看板に装飾のように掛かったベルを持ち上げると、チリンチリンっと高く美しい音を奏でた。
それが聞こえたのか、一枚の石で出来ているように見えた壁に、うっすらと筋が入りはじめた。
「いつみてもすごいなー」
「おお嬢ちゃんかい、入りな」
中から顔を出した武骨なスキンヘッドの男が、私を見るなり柔和な顔に変わって出迎えてくれる。
中は簡素な土壁の部屋になっていて、入り口が閉まると部屋の中が仄かな明かりに照らされていることに気付いた。
「以前はランプでしたよね」
確かにそれはランプとは違っていて、揺らめきもしないし、燃える匂いもしない。
「狭い部屋で火を焚いていると、死んじゃうからね。新しい明かりを研究中なのさ」
私の問いかけに、奥の暗い場所から歩いてくる人物が返事を返してきた。