錬銀術師
東門から入ってすぐ、気のよい彼らパーティー《漆黒の翼》とは別れた。そんな厨二病なパーティー名だったなんて……。
そして今私は一人で目的地へと向かっている。
途中ベンチに腰かけて、彼らの名前をメモしておくことにした。
「えっと、リーダーがスレインさん、パラディンはラルフだったよね。女の子がローナさんっと……」
私が初めて彼らに依頼をお願いしたときには、ランク1の駆け出し冒険者だと言ってたんだけど、今ではランク3まで駆け上がっていて、さっき聞いて私もビックリした。
「もっと強いモンスターも生け捕りにできるから、考えといてくれ」
力強くそう言われてしまい、これはもう他に乗り換えも出来ないなぁって思ってしまった。
実際、相手のランクが上がれば、それなりに依頼料も上がるんだけど、その辺は最初の契約のまま。つまり破格で請け負ってくれてる。
モンスターのランクに合わせての金額では割に合わないだろうと、私も焦ったけれど。
ギルドを通さない依頼だから割に合うんだって。
「ホントかなぁ」
そうため息を付きながらも、好意で受けてくれる彼らに、素材の代金だけは上乗せしてあげれてよかったと思う。
あと、別れ際にこうも言っていた。
「調査依頼だけだと歩いて帰宅しなきゃならないけど、モンスター倒せば荷車に乗せてくれるからね」
その為だけにワイルドボアを狩ったのか、と考えれば。
パラディン……じゃなかった、ラルフさんもちゃっかりしてるみたい。
彼らがいいって言うなら、甘えちゃう部分は甘えて、それでもなにか他のことで返してあげようかな。
そんなことを考えながら、「ビジネスライク」な関係を作ろうとしていた事がちょっと恥ずかしくなったワケで。