ジョロモの街へ
ティアからダンジョンの説明を求められて、私がそれに答えていると、バジがムクリと起き上がってきた。
「復活にも意外と時間がかかるんですね」
ダンジョンがどういうものなのか、理解しているティアは、バジを実験材料のように眺めてそう呟いた。
「そうなの、ゾンビみたいに自己修復するモンスターは、ダンジョンの治癒能力の対象外になる事があるから……もっと修復不可能な死にかたをしたら、ダンジョンが飲み込んで、パッと修復してペッて吐き出してくれるんだけどね」
私は苦笑しながらそう答えた。
修復にも結構時間が掛か……
時間?
「あぁあああ! 忘れてた。私町に行かなきゃいけないんだった!」
彼らとのファーストコンタクトになった玄関前に何しに行ったかというと。出掛けるためだったのをすっかり忘れていた。
私はこの三人をこのままにしてていいのかと少し悩みはしたが、牢屋に入れているし問題は起きなさそうだと、見て見ぬふりをすることにした。
「ごめん、私ちょっと出掛けてくるから!」
そういうと脱ぎ散らかした鎧もそのまま、その場を後にする。
後方で非難の声がしたがそれも聞こえてない事にして。
私は急いで出掛ける用意をすると、入り口を飛び出した。
もちろん新たな迷惑の種が出てくることもなく、急ぎ足で森の中の道を進んでいくと、少しづつ当たり前の日常に気持ちが戻っていくのが分かる。
……考えまいとしているだけかも知れないけどね。
ところで、今向かってる近場の街ってのはジョロモって言うんだけど、名前の通り創造者がジョロモ=モナンヘーゼルっていう人だから。
でも過去の人じゃないよ。
いま現役の領主様。
ここの領地もダンジョンと同じ感覚で、ジョロモさんが魔法で城壁を作ったってこと。
すごいよね、周りを歩いて一周するのに3日もかかるんだって……いったいいくら使ったんだろう?
ジョロモさんも昔はダンジョン経営をしていたらしい。
商人として名を馳せるに至ったのも、そのダンジョンで挑戦者の武器や防具をせっせと集めて、片っ端から売りまくったと言うのだから、商魂の逞しさを感じられるよね。
始めは私と同じスタートだったんだなって思えば、夢があるよね!
でも成金っぽく横柄なかんじじゃなくて、今度はみんなに恩返しをしたいからって、市民に優しい街を作ったんだって。
中に住む人からの税金は安く、通行税も取らないっていうんだから、本当にお金儲けのために街を作ったワケじゃないみたい。
もちろん私達のような市外地……つまり塀の外住みの人間も自由にさせてくれる。
だから私もこの街を選んだんだけど、その人柄に感謝しかないよね。
街の東にある森を抜けると、ちょっとした穀倉地帯が広がる。
トウモロコシとか、麦とかがあちこちで栽培されているんだけど。
ここも別に区画が決められているワケじゃなくって、勝手に耕して、勝手に植えて、勝手に生活している人達の畑になってる。
怒られないかって? そこがジョロモさんの良いところ。
街道さえ潰さなかったらいいよって言うんだから心が広いんだと思う。