やったね家族が増えるよ1
「取り敢えず落ち着いてくださいね」
一通り自己紹介は済んだけど、何にも解決はしていないのに気付いちゃって、勝手に溜め息がでてくる。
弩で撃たれた筈のバジリスクは相変わらず元気そう……くそぅゾンビめ。
「バジ、あまりがっつくと女性に嫌われてしまうぞ」
メガネを掛けたティアマットが、バジリスクに対して嗜めるように言うと、バジリスクが凄く驚いた顔で言った。
「マジか……」
「マジですよ」
うんマジだよ。
どうやらティアマットの言葉は信頼度が高いようで、バジリスクは少し大人しくなった。
こちらを横目でチラチラ見てくるけどね。
「デ? どうやったら私は家に帰れるノ」
下らないやり取りに横槍をいれた富士子さんは、未だ現状を飲み込めていないみたい。
少し困ってしまったので、明らかに顔にでちゃったかもしれないけど。
「えっと、あの、帰るのは……」
この人にどうやって説明しよう……。
「帰れませんよ、貴女はずっとここに閉じ込められたままです」
ティアマットがきっぱり言ったことで富士子さんはキィーって金切り声を上げながら反論する。
「出られないってどういう意味ヨ! あの場所には私が500年間の間貯めた財宝もあるんだからネ!」
うわ、500年も生きてたんだ、だいぶ先輩だぁ。
火に油を注ぐような発言に現実逃避をしながらも、私は仕方ないと口を開く。
「残念ながら、ティアマットさんの言うことは間違っていません。貴方達はこのダンジョンに食べられて、ダンジョンの一部として顕現している状態です」
その言葉にティアマットはやっぱりかと頭を抱え、バジリスクは頭にはてなマークを浮かべ、富士子さんは理解したくないと喚く。
私はなんか申し訳なく感じて、ひきつった笑顔を作るしかなかったワケで。