恐怖の邂逅4
「ハァハァ……」
気が動転して息が上がっている。
ドッドッドッド……
心臓の鼓動が耳の中から聞こえるみたいだ。
狭かった視野がだんだんと広がると同時に、気持ちも落ち着いてきた。
でも見続けている扉からは何の音もしない。
ただ賑やかさを取り戻したのは、いつもの鳥の声。
私が落ち着いてきた頭を回し始めると、先程とはまた違った不安が私を襲ってきた。
「なんで……なんで出てこないの? 死んでないってこと……」
私は再び青い顔になって、今逃げてきたはずの扉に向かって這って行く。
腰が抜けていて立つに立てない。
膝にはいくつか小石が食い込み、少しだが血が滲んでいるようだ。
なんとか門までたどり着くと、管理者権限で中の状態を把握する。
【中には誰も居ない】
そう伝える言葉が機械的に紡がれる。
「嘘っ! あの人たちは、どうしたの!?」
私はこの扉を開けるか一瞬だけ戸惑ったけど、庇ってくれた青い剣士の瞳を思い出して決心する。
自分の事よりも他人を心配する純粋な目に、私には見えたから。
──ご主人様のお帰りよ
おサボりさんも飛び起きて
お出迎えの準備して──
『開門』
ダンジョンを司る大地の精霊との契約時に決めたこの呪文も、震える声で唱えると滑稽に思える。
だってこんな血なまぐさい状況なんて想定してなかったんだもん。
少し地面を擦る、ジャリジャリという音と共に外向きに扉が開かれる。
そこには誰もいなかった。
夢だと思いたいところだけど、あの半ばで折れた剣が転がっているところを見ると現実らしい。
私は急いで扉を閉めると、マスタールームへ飛び込んだ。
普段なら服を脱ぐスペースを、そのまま突っ切る。
お気に入りの絨毯だけはどうにか避けて、靴のまま奥の部屋へ転がり込むと、ダンジョンを操作する板を起動させた。
音もなく青く光った天板は、現在のダンジョンの状況を表してくれる。
5階まであるダンジョンのそのどれもに、人間の反応はない。
その代わり私が気付いたのは、予備のモンスターアイコン。
コボルトを捕獲した時のように、彼らもダンジョンが食べたらしい。
「うそっ、ダンジョンが人間を食べちゃうことなんて……あり得るの!?」
今までそういう話は聞いたことがない。
私は恐る恐るそのアイコンを5階の空き部屋へと移動させたワケで……。
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