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閑話 父と娘

時系列的には主人公が召喚される5日くらい前です。


「はぁ…」


私は机に突っ伏したままため息を吐く。この仕事部屋には値が付けられないほど高価な調度品が数多く置かれているが、私の心は絢爛な部屋の様相に反して積乱雲の如くどんよりと重たい感情に支配されていた。


先日まで軍部との会談ばかりだったが聖教国からの親書で勇者召喚の準備に追われている。他の貴族は勇者召喚を政治の道具程度にしか見ておらず、延々と進まない会議に連日出席していた。ストレスなのか抜け毛が増えたのは気のせいだろうか、気のせいであってくれ。


コンコンとノックが聞こえる。


「誰だ?」


突然の来客に身構える。


「お父様、エカテリーナですわ」


なんだ、娘か。「入っていいぞ」と言うとなにやら言いたげな面持ちでエカテリーナはやってきた。


「どうした、お前がここに来るなんて珍しいじゃないか」


「ええ、お父様に確認しておきたいことがありますわ。本当に勇者様を召喚するつもりですの?」


これは以前から聞かれていた。エカテリーナは聖教国から親書が送られてからというもの、勇者召喚に反対していた。


確かに勇者召喚を反対する者はエカテリーナ以外にもいるが、その理由は勇者が確実に益を齎すとは限らない。という理由の持ち主が大半を占める。


初代…と言っても先代勇者が聖剣パナケアと共に消失したせいで外交上の問題が頻発していることで王国に限らず国のお偉いさんは勇者にあまりいい感情を持っていない。


エカテリーナのそれは単純に一人の人間の人生を狂わせるのではないかという憂慮が根幹にあった。


「あぁ、これが聖教国からの要望ならまだしも神託まで下されておるのだ。やらぬわけにはいくまいよ」


「そう…ですの…」


それに勇者を召喚する利は他にもある、1つは我が国が聖剣を所有していないこと。勇者は聖剣の代わりに魔王に対する抑止力になりうる。


2つ目は現在、帝国に留学という名目で人質になっている王太子であるウィルバートの返還交渉のカードに勇者の派遣を使えること。


これだけの理由があれば勇者召喚を行わないという判断はできない。勿論、人道に反していることは重々承知しているが、今の疲弊した4ヶ国では次の魔王の活動期を凌ぐことは到底できない。


その為にも人類の希望になり得る勇者は喉から手が出るほど欲しいのだ。


「あの、お父様。できれば勇者様のご希望にはできるだけ応えてほしいのですわ。知らない世界に1人だなんて、あまりにも可哀想ですの」


「そのつもりだとも。世界を救ってもらうのだ、便宜を図ることくらい安いものだとも」


エカテリーナは安堵の笑みを浮かべる。彼女の笑顔には今は亡き王妃の面影があった。王妃とは政略結婚ではあったもののお互いの馬が合った。ウィルバートとエカテリーナを産んだのは彼女だ。


今は側妃の1人だった侯爵家の元御令嬢が王妃を務めているが、あくまでビジネスパートナーといった感じで、元王妃との間にあったほどの熱は感じられない。私が歳をとったということもそれに拍車を掛けた。


「わたくしも勇者様の力になれれば良いのですが」


王宮で育ったにしては心優しい子だ、私がどうなろうとも彼女だけは幸せにしなければ。


「それは勇者殿に来ていただいてから考えるとしよう。先代勇者の記録が書庫にあったはずだ、参考にしたいから探してきてくれるかな?」


「はい!」


エカテリーナは返事を返すと小走りで書庫に向かった。今は多少マシになったがおてんばな所はなかなか治らない。嫁の貰い手が心配になる。


いざとなれば勇者殿に貰ってもらえば…ところで此度の勇者殿も男なのだろうか?

まあ女ならウィルバートと見合いでもさせてみよう。あの歳の王太子に婚約者がいないというのも問題だからな。




《結芽ちゃんからのお願い》


どくしゃさん!よんでくれてありがとうございます!さくひんのひょうかとぶっくまーくをおねがいします!

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