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創造の女神アルファス


微睡みから目を覚ます。

そこは自宅の寝室ではなく、見渡す限りの白、白、白。


手足の感覚はあるが地面の感触は感じられない、強いて言うのなら宇宙空間が近いだろうか。宇宙なんて行ったこともないけれど。


「目が痛くなりそうだ、夢か」


「いいえ、夢ではありません」


「誰だ?」


何も無かった空間から絶世の美女…よく見たら結月の方が可愛いな。2番目の美女が現れた。


「私は創造の女神アルファス、異世界サクリフィスの創造神です」


「それで、そのお偉い異世界の女神様が平凡なサラリーマンの私に何の御用で?明日は朝早いので早めに解放してもらえると助かるのですが」


「それは叶いません。大変心苦しいのですが、あなたは勇者に選ばれました。」


「…は?」


勇…者……?


「勇者って魔王を倒したりする勇者のことか?」


そう尋ねるとアルファスは首肯する。


「概ねその認識で間違いありません、あなたにはサクリフィスで勇者になっていただきます。」


「…一応聞くが、帰って来れるんだろうな?」




「いいえ、あなたがこれから行くのは下位の世界。それこそ全世界のリソースをつぎ込まない限りは異世界転移は不可能です。」



俺はもう泣きそうだった、もう結芽の笑顔を見ることも、結月の料理を食べることも、社長に恩返しすることもできない。…しかし、もしかしたら可能性があるかもしれない。


「ちなみに聞くが俺なんだ」


「無作為です」


つくづく俺は運に見放されているらしい、最近が上手くいきすぎていたから幸運の揺り戻しというやつだろうか。


「その代わりといってはなんですが、できるだけこちらで便宜を図ることにしています。あなたの世界でいうところのちぃと?という能力を与えたり残された家族に伝言を残したりです。」


なるほど、それなら()()()()()()()()()()()()


「幾つまで願いを聞いてもらえる?」


「5つまでなら、私にもできないことがありますが」


「じゃあ俺を返してくれ」


「それはできません」


まぁ、そりゃそうか。それができてりゃ俺が非協力的だって分かった瞬間に他の人間にコンタクトをとっているはずだ。今のご時世、異世界に行きたいと思うくらい現実に不満を持ってる輩なんて掃いて捨てるほどいるのだから。斯く言う俺も社長に拾われなかったらそう思っていたかもしれない。


「なら二つでいい、一つは全てを奪える能力をくれ。身体能力、物体的エネルギー、魂、魔力、記憶、感情、技術エトセトラ全てだ」


「…まぁ二つというなら了承しましょう。それで二つ目は?」


「俺とあんたの間に契約を結んでもらう」


「契約?」


アルファスは怪訝そうな顔でこちらを睨む。


「腐っても神ならできるだろう、強制力のある契約くらい」


「…それで内容は?」


どことなく苛立っているように見える、神からしてみれば下等生物がいいところの人間の我儘に付き合わされているのだから当然ではあるのだが。


「俺が魔王を倒す代わりに、あんたが意図的に俺の不利益になる行動の一切を直接的、間接的問わずに禁止させてもらう」


「あなたからそれを確認する術は無いのでは」


「いやいや、そこは女神様の懐の深さを信じるさ。自分が管理している世界の勇者の願いを聞かないほど狭量じゃないってね」


「…それで、罰則はどうしますか?」


「あんたは女神の力を振るえなくなる、俺は魔王を倒すことを契約で何より優先されるってのはどうだ?別に命を取るほどってものでも無いしな、俺にとっては魔王を倒す前にちょっかいかけられるのが嫌だからっていうただの保険だ」


これでいい、アルファスはこの内容を受け入れざるを得ない。自分が多少不利だからという理由で人間と契約を交わさないというのは奴の女神としてのプライドに関わる、ましてそれが女神にとっても利があるというのなら尚更。


「いいでしょう、創造の女神アルファスが命ずる、我と彼の者に誓いの楔を打て。誓約締結(エンゲージ)


俺とアルファスを光が包むとしばらくして消えた。


「ついでにあなたの能力も付与しておきました。早くサクリフィスに向かいなさい」


「へいへい、それじゃあな女神様。…()()()()()


「?」


俺の身は光に包まれ、そして白い空間には女神アルファスのみが残った。



「あの人間、何か強い感情を持っていました。恨み…?いえ、怒りでしょうか」


彼女、創造の女神アルファスは人の感情を理解できない。それは彼女が神でありその中でも随分と若い部類に入るからである。それにしても…


「他の神々から聞いていた勇者とは様子が違いましたね、大半の者はちぃとをもらえると喜ぶと聞いていたのですが」



かくして異世界サクリフィスに一人の男が降り立った。


その者は全てを奪う力を持ちながら、望む物は何一つ手に入らなかった男。


そして、手に入れるために全てを犠牲にしてでも地球に帰ると決意した1人の人間。


彼には魔王も女神も見えていない。唯一その目に映るのは、在りし日の幸福。


後に嘆きの王と呼ばれる災厄がサクリフィスに解き放たれた瞬間である。





《結芽ちゃんからのお願い》


どくしゃさん!よんでくれてありがとうございます!さくひんのひょうかとぶっくまーくをおねがいします!

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