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第7話「落ちこぼれは部員を探したい」

 昼休み――。


 俺はゲーム部の残りの部員2人を集めるべく奔走することに。


 まずは俺、凛花、東雲、葛西の4人はゲーム部創設のため話し合うが。


「まずは廊下の掲示板にゲーム部の広告を貼り、部員を集めることにした。対象となるのはまだどこにも入部を決めていない連中だ。1年のほとんどがもう部活をどこにするかを決めている。だからまずは無所属の奴を1年から探すんだ。広告を貼った後は声をかけろ」

「それはいいけどさー、ゲーム部って何すんの?」


 葛西が素朴な疑問をぶつけた。確かにゲーム部って何やるんだろ。


 俺は片手で顎を持ちながら天井を見た。


 言い出しっぺの石谷は運動場まで遊びに行ってるし、とても話しかけられそうにない。でもどんな部屋でどんな活動をすべきなのか、大体想像はつく。


「えっと、確かゲーム部の活動はとにかくゲームがうまくなるように毎日ゲームをするんだ。そしてゲームの大会で優勝することを目標にする」

「ゲームの大会なんてあんの?」

「ある。一応調べてみたが、毎年の夏に『ビデオゲーム甲子園』が開催されているそうだ。これの優勝目標に活動するということなら、担任も認めてくれるんじゃないか?」


 凛花が俺をフォローするように補足する。


 そんな大会あったんだ。知らなかった。出任せで言ってはみたけど、本当にそんな大会がずっと前からあるのは驚きだ。


「つまり、ゲーム部の目的はゲームで甲子園を目指すってことでいいのかな?」

「建前上はそういうことになるな。じゃあ今から手分けして声をかけて回ってくれ」


 そんなわけで俺と凛花、東雲と葛西の2組に分かれて部員を探すことに。


 とは言っても、チャンスがあるのは今週の昼休みだけか。この残り少ない時間で部員が集まらなかったら俺は野球部に強制入部して退学コースか。でもバイトするんだったら部活やらなくてもいいんだよな。だったらバイト先も探すか。


 昨日凛花の悲しそうな顔を見た時、胸が締めつけられるように痛んだ。


 何故なのかは分からない。でもあんな顔は二度と見たくないと思った。


 最悪バイト先を見つけて幽霊部員になって過ごすことにするか。


「野球部の強制入部がかかっているというのに随分と楽観的だな」

「そうなったらバイト探すから問題ねえよ。1人暮らしだからバイトしないといけないって言っておけば問題ない」

「そういう時だけは知恵が働くんだな」

「俺は逃げることにかけては超一流だからな。ところで次のターゲットはどうすんだ?」

「まずは机に座って暇そうにしている生徒、図書室にいて大人しく本を読んでいる生徒からだ。バイトをしている場合は最悪幽霊部員として入ってもらう」


 しかし、次々と該当する生徒に声をかけるも、いずれも既に他の部活に決めていることを理由に断られた。


 予想はしていたが、このままじゃマジでやべえぞ。


 凛花は俺の隣からスマホの画面と睨めっこをしながらそれをいじっている。


「雫たちもまだ見つかっていないそうだ」

「バイト先探すか」

「陽登、ぼっちは昼休み行きそうな場所と言えばどこだ?」

「屋上とか」

「それだ。屋上なら誰かいるかもしれない」


 俺たちは屋上へ向かった。俺自身がぼっちだからこういう勘は冴えている。


 屋上の扉を開けると、辺りには殺風景極まりない風景が広がっており、コンクリートの床の周囲には転落防止用の金網が覆っている。


「――何でここに来たの?」


 後ろから声が聞こえた。振り返ってみれば、扉の真上にある梯子付きの高台には1人の女子生徒が足をブラブラさせながら座っており、ジト目で僕らを見つめている。


 グレーのブレザーに赤いスカート、そしてピンクのポニーテールにいつも眠たそうなジト目、子供のような顔で背丈は子供と変わらないくらいか。胸は慎重に比例して控えめのようだ。


 見た目ですぐに1年だと分かった。


 男子ならネクタイ、女子の場合はスカートの色を見れば学年が分かる。


 1年は赤、2年は黄色、3年は青だ。そのおかげで先輩かどうかで迷う必要がなくなっているのもここを選んだ理由だ。


「俺たちゲーム部の部員を探しに来たんだよ」

「ゲーム部?」

「ああ、部活には入ってるか?」


 その女子は俺たちの目の前にスタッと飛び降りてきた。


「入ってない。でも一応料理部に入って幽霊部員として過ごそうと思ってる」

「もしかしてバイトしてるのか?」

「何で分かるの?」

「俺も部員が集まらなかったらそうするつもりだったから」

「なるほど、あなたもこっち側なのね」

「じゃあ、お前もか?」

「……うん。私は北条友恵(ほうじょうともえ)。友達に恵まれるようにって意味でこの名前をつけてもらったけど、今まで一度も友達できなかったから名前負けしてるの」


 トローンとした目で恥ずかしげもなく淡々と自己紹介をする。


 表情はほとんど変わっていない。どうやら不思議ちゃんタイプのようだ。


「ふふっ、発想がお前にそっくりだな」

「うるせーよ。俺は霜月陽登、こいつは桜月凛花。あのさー、もしよかったら俺たちと一緒にゲーム部に入ってくれねえか?」

「幽霊部員でもいいなら別にいいけど」

「ああ、それでもいい。ていうかバイト何してんの?」

「うちは実家がカフェだからそこでバイトしてる。どこの部活にも入りたくないし、みんなと一緒にいると息が詰まるからいつもここにいるの」


 うわ、こりゃ戦力としては期待できなさそうだな。


 まあでも、俺もその気持ちめっちゃわかるから反論できねえわ。


 いるんだよなー、1人の方がずっと気楽なタイプが。俺もそのタイプだから分かる、分かるぞ。これで1人見つかった。あと1人、あと1人でいいんだ。


「じゃあさ、ゲーム部って書いて提出してくれ」

「うん、分かった。でも私、多分行けないと思うよ」

「構わん。入部してくれるだけで十分役立ってる。ありがとな」

「! ……私、役立ってるんだ」


 少しばかり柔らかい表情に変わると、ほっぺがポッと赤く染まった。


 屋上を後にした俺たちは教室へと戻り、東雲たちの帰りを待っていると、2人が残念そうな顔で戻ってきた。もう目線を下に落としている表情の時点で見つからなかったことが分かった。


「収穫はなかったようだな」

「だってみんな他の部活に入ってるんだもーん」

「あはは、ごめんねー。なかなか見つからなくてさー。そっちは?」

「1人見つけた。他のクラスからで、幽霊部員になる予定だけどな」

「あとの1人は明日探そう。今日はもう解散だ」


 凛花がそう言うと、スマホの画面を見ながら読書をしている。


 後ろから覗き込んでみたが、とても難しそうな電子書籍だった。見たこともないような漢字ばかりだし、見ているだけで頭が痛くなりそうだが、しばらくして英語で書かれたニュースらしきものを読み込んでいる。


 彼女が言うには、暇なときは勉強に時間を費やすらしい。


 朝は運動や体操をしていたし、ホント寝てる時以外は何かしらやってるんだな。無駄なく生きているように見える。


 それに引き換え俺はいつも家でゲームばかりだし、どう考えてもこいつの方がずっと有意義に生きてると思う。


 俺はずっとこれでいいのだろうか……。


「陽登、どうした?」

「いや、何でもない。今週中に見つけような」

「ところで、昼食はもう食べたのか?」

「あっ!」


 俺は大きく口を開けた。まるでこの世の終わりが迫ってくるかのように。


 しまった。部員を探すのに夢中で昼飯を食べそびれてしまったぁ~。


 そう思った直後、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ってしまった。食堂の人気メニューはもうとっくに売り切れていることだろう。くぅ~、腹が減った。帰りにコンビニに寄って飯を買って帰りたいところだが、あと5時間目と6時間目がある。どうする?


 あっ、そうだ。授業サボっちゃおう。


「どこへ行く?」

「5時間目は食堂で飯食うわ。腹が減って死にそうだからさ」

「なら私も一緒に行こう」

「おいおい、お前までつき合う必要ねえだろうが」

「私はお前のボディガードだ。つきっきりだと約束しただろ」


 俺と凛花は5時間目をサボることに。凛花は後でノートを見せるように言っていたあたり、抜け目がないな。


 食堂へ行くと、昼休みの時とは打って変わってがらーんとしており、食堂の人以外は全くいない様子だった。


 ただ1人を除いては。

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読んでいただきありがとうございます。

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