6.探索
遅くなってすみません
さて......武器だが、実は吸血鬼は己の血と魔物の素材や金属などを使って血武器という自分専用の武器を作れるのだ。つまり、僕は今からそれを作ろうとしているのである。しかし素材をどうするかだが......幸いここは研究所らしい。いいものがあるだろう。
「さてさて、物色しますかね〜」
どこにものがあるか把握してるのかって?実は魔法陣のあった部屋の隣の部屋に棚とかが沢山あるのに気付いていたのだ。多分倉庫である。まずは入口の右側にふたつ並んである棚からだ。瓶に入った謎の液体や怪しい粉とかがあるけど......さて、鑑定鑑定。えーと、魔力回復薬に体力回復薬、狂人薬に媚薬、致死毒とか麻痺毒とかの毒薬まであるぞ......どうやらここは薬品棚みたいだな。これ、毒薬を素材に使ったらどうだろうか......よし、やってみよう。じゃあ次は反対側の左に3つほどある棚。奥の方は行かないでおこう。明らかにヤバいであろう生物が謎の液体に浮いたデカいガラスの円柱とかがいっぱいあるのが見えるし......何かあってあんなのが解放されても困るし、近づかないのが吉だ。
さて、反対側の棚には......お?角とか骨とか明らかに生物の1部であろうものがある。これは当たりじゃないか?えーと、鑑定すると......うわ、暗黒龍王の牙とかエルダーリッチの魔骨とかやばそうなのが結構あるな......てかこれ角じゃなくて牙かよ。どんだけでかいんだ。魔力量が明らかに多いやついくつか貰っとこ......ん?この鉱石亀の甲羅ってのについてる紅い綺麗な金属......ヒヒイロカネ!?うわ、ファンタジー金属だ。ちなみにこの世界でヒヒイロカネは「神鋼」と呼ばれていて、魔力伝導率はオリハルコンに劣るものの硬さや丈夫さ等は圧倒的に勝っている。そのため、基本的にヒヒイロカネを使う際は竜の骨粉を混ぜたり、オリハルコンと合金にしたりして魔力伝導率を上げるのが基本だ。
「よし、こんだけあればいいだろ。というか、これ以上は持てん」
ヒヒイロカネといくらかの魔物の素材、そしてあの棚にあった毒各種を持って魔法陣の部屋に戻る。床に適当に置いて、持ってきた暗黒龍王の牙で手を刺して血を出す。種族のページにある血武器生成の魔法陣を床に血で模写して、その中心に持ってきた素材を全部置く。そして魔法陣に魔力を流し込んでいくと、魔法陣が真紅と漆黒を混ぜたようなとても綺麗なダークレッドの輝きを放ち始めた。この色はその本人の魔力色と同じ色に輝くらしいので、どうやら僕の魔力色はダークレッドのようだ。なんか血の色みたいだな......って言うか、結構魔力持ってくな!?もう八割くらい持ってかれてるんだけど!酷い車酔いみたいで気持ち悪い......あ、やば意識が......
最後に魔法陣が一際強く輝いたのを確認したあと、僕の意識は途切れた。
「うっ......痛たたた、頭が痛い。なんか二日酔いみたいだ。なったことないけど」
そんなことを言いながら起き上がると、一瞬フラっとしたが直ぐに立ち直れた。多分魔力が最低限しか回復してないからだろう。後であの棚にあった魔力回復薬飲もう。さーて、僕の武器はどうなったかなーっと。まあ、多分あれなんだろうけど......
僕が書いた魔法陣は跡形もなく消え去り、ちょうどその中心にあたるところに1本の剣があった。多分これが僕の血武器だ。近寄って手に取ってみる。黒い刀身に赤い線が血管のように走っている。......なんだろう、すごい呪われてそうな、禍々しい見た目してるけど......大丈夫なんだろうか?とりあえず鑑定してみよう。というか、めちゃくちゃ軽いなこれ......
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銘 災禍
属性 闇系統
種別 刀剣(直剣)
魔力伝導率 S
スキル
闇系統強化
形状変化
魔纏
知覚速度上昇
毒生成
自己複製
自己復元
所有者固定
神鋼に真祖の血や暗黒龍王の牙、エルダーリッチの魔骨など、高魔力のものを合成した¦血濡れの神鋼で作られた剣。素材に使われた暗黒龍王の牙やエルダーリッチの魔骨などの影響で闇系統への親和性が非常に高く、ヒュドラの毒牙や、多種多様な毒が素材に使われたことで所有者の魔力から様々な毒を生成し、刀身に分泌することが出来る。また、所有者の魔力と血を供給することで最大一振りまで自身の複製を生み出したり、折れたり欠けたりした刀身を一瞬にして復元できる。また、魔力との親和性が非常に高いため、刀身に属性変換した魔力を流すことでその属性を纏わせ、強化したり斬撃を飛ばしたりすることも可能。また、所有者には非常に軽く感じられるが、実際の重さは非常に重い。血武器の共通の特性として、使わない時は異空間に収納出来る。この空間は血武器専用であり、他のものを入れることは出来ない代わりに出し入れにタイムラグが存在せず、瞬時に出し入れできる。
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.........うん、なんか悪の幹部が使いそうな説明文だね。スキルも名前からしてヤバいのがあるし。まあ能力確認できてないのは危険すぎるから見るけど......
闇系統強化
闇系統の属性を強化する。このスキルが付いているものを媒体として闇系統魔法を発動した時、威力や射程距離等が上昇する。
形状変化
その武器種の範疇を逸脱しない範囲でなら自由自在に形状を変化させられるスキル。例としては直剣を大剣や短剣、刀のように変化させることが出来る他、刀身から棘を出したりすることが出来る。
魔纏
属性魔力を流すことで、刀身にその属性を纏わせ、強化することが出来る。普通に強化する事も、斬撃を飛ばすことも出来る。
知覚速度上昇
知覚速度を大きく上昇させることが出来るスキル。あくまで知覚速度のみが強化されるため使いこなすには経験が必要。
毒生成
魔力から様々な毒を生成することが出来るスキル。
自己複製
一振りまで、自分のスキル等も含む全てを完全にコピーした複製を生み出すことが出来るスキル。
自己復元
歪みや傷、破損などを瞬時に復元できるスキル。
所有者固定
使用可能な所有者を固定し、その他の者には使うことが出来なくなるスキル。
うわぁ......なんか、僕のスキルや武器だけ見ると明らかに悪役なんだけど......僕悪役なんて目指す気ないよ?自由には生きるけど出来るだけ法は守るつもりだよ?はあ......
「......とりあえず、物色した後脱出して町を目指そう」
物色するのはもしかしたらお金や服などがあるかもしれないからだ。泥棒?うるさいな、もう素材とか回復薬持っていってるから一緒だよ!......罪悪感がないと言えば嘘になるけど、まあもう使う人もいないしいいでしょ。
と、誰にでもなく言い訳をして物色を開始する。この部屋には3つ出入口があり、さっきの倉庫と思われる部屋や外に繋がっている道以外にももうひとつある。その部屋は出入口は普通に扉が付いていて、先を見通すことは出来ない。なので素直に扉を開けて次の部屋に行く。その部屋は、特に何も無い学校の教室程度の広さの部屋だった。
ブー!ブー!ブー!
侵入者です、侵入者です、脅威度を測定............推定脅威度B〜Aクラス、最高防衛機構、起動
その部屋に入った途端、急に警報が鳴り響き、「起動」の音声と共に部屋の左右の壁が開き、そこから大量に異形の化け物が現れた。
「うわ!なんだコイツら!?」
鬼、おそらくはオーガのようなやつらだが、ただのオーガではなく下半身が蠍であったり、触手であったりと、それなりに気持ち悪い見た目をしている。おそらくはここの持ち主がやっていた研究の成果達だろう。多分種族を変えるときに他の生物の特徴を引っ付けられないか試したんだろうが......嫌悪感を覚える研究だな。まあ、僕も殺されたくはないし戦うとしよう。
「『知覚速度上昇』『魔纏・黒炎』『毒生成・ヒュドラ』」
とりあえず一般人である僕に戦闘ができるほどに余裕があるわけが無いため知覚速度を上昇させ、魔纏で1番威力がありそうな黒炎を付与、毒生成で現状生成できる最強の毒であるヒュドラ毒を生成する。ヒュドラはFランク〜EXランクまである中でも上から4番目のSランク。その毒は大抵の生物に有効だ。その分生成する時の消費魔力も中々のものだが......背に腹はかえられない。魔力を惜しんで死んだら元も子もない。ちなみに不思議なことに黒炎でヒュドラ毒が蒸発したり高熱消毒されることは無い。
「グオオオオオオオ!」
鬼共が襲いかかってきた。しかし、知覚速度上昇のおかげか多数相手でも回避はできる程度に遅い。なぜか知覚速度上昇中でも普通に動けたのでそのまま避けて近くにいた鬼の腕に黒炎を纏った災禍で切りつけた。
ザシュ!
「グォォォォ!」
災禍はそのまま鬼の腕を切断すると腕に燃え移った黒炎がその鬼を燃やし尽くしていく。結構エグい光景だ。鬼が燃え尽きた後には骨も残っておらず、その威力を物語っていた。
「......これなら」
僕はそう呟くと、鬼が密集しているところに向かって災禍を振るい、魔力を解き放つ。
ボォォォォォォ
災禍を振るった軌道に沿って炎の斬撃がその範囲を拡大しながら飛んでいき、一度に多くの鬼を切り裂いて燃やし尽くした。そのまま壁に激突し、炎は消えたが、およそ100体程いた鬼が今の斬撃で3分の1ほど燃えているため、まだ明かりは残っている。その炎に照らされている鬼たちの顔にははっきりと「恐怖」の色が見えた。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
僕は気合いとともに何度も斬撃を飛ばし、鬼を殲滅していく。最初ほど密集していないため1番初めの1撃よりは一度に倒せる数は少なかったが、鬼たちにこちらに向かってくる意思がないためそのまま殺しつくせた。
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】......
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、うぷっ」
僕は魔力の欠乏と生き物を殺した嫌悪感により吐き気を覚えたが、あいにく体が新しくなってから何も食べていないため何も出てこなかった。
「これは......いつか慣れるんだろうか......毎度これは中々キツイんだけど......」
だが、いつまでもこうはしていられない。どれだけキツくても、前に進まなくては。ああ、そういえばレベルが上がったっていう通知があったな。確認しないと。
僕は災禍を収納し、スキルを唱える。
「『ステータス閲覧』」
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名前オリジン
種族 吸血鬼族(真祖)
Lv20
固有スキル
空間把握
スキル統合
黒炎魔法適性(大)
呪岩魔法適性(大)
呪怨溶岩魔法適性(大)
黒炎魔法Lv2
呪岩魔法Lv1
希少スキル
暗黒魔法適性(極)
全言語理解
ステータス閲覧
鑑定
武の極意Lv2
通常スキル
魔力感知Lv1
魔力操作Lv1
種族スキル
自己再生Lv8
吸血強化Lv8
血液貯蔵Lv8
変身Lv8
飛行Lv8
暗視Lv8
幻魔眼Lv8
加護
武神の恩寵
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いやいや、いくらなんでも急にレベル上がりすぎじゃないか?確かに100体くらい倒したけど。そんなに強い魔物だったのかな......まあいいか。
僕は考えることを放棄すると、そのまま奥の扉に向かって歩き始めた。
「さて、次の部屋はどんな部屋なのか......」
扉を開けると、そこはまるで人の生活空間のようだった。広さは6畳くらいで、机に椅子、ベッドに本棚、箪笥と色々ある。
「ここで研究してた人の自室......か?」
ここを物色するのは本格的に泥棒な気がするが......物の痛み具合や埃の厚さ的にもう長いこと放置されているだろう。使われないよりかは使った方がいいはずだ。というわけでまずタンスから物色する。タンスを開けると、服が色々と薄茶色のポーチが1つかかっていた。それぞれを鑑定したり虫食いがないか確認して、自分の着る服を探す。その中に、驚くべきものがあった。
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アイテムボックス
高ランクの魔物の素材で作った鞄に付与魔法で空間魔法を付与した魔道具。本来の容量の倍程度から、豪邸ひとつ分位の容量まで色々ある。本来入れ口の大きさ的に入らないサイズのアイテムでも不思議と収納できる。このアイテムボックスは一般家屋なら1つ入るくらいの容量であり、しかも内部時間が停止しているため、国宝クラスの希少度である。
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なんと国宝クラスのアイテムがあったのだ。しかも明らかに今僕が必要としているアイテムだ。遠慮なく貰っていく。服を着替えてアイテムボックスを腰に着け、物色を再開する。本棚にあった本はとりあえず全部アイテムボックスに収納する。机の引き出しには金貨3枚と銀貨10枚、銅貨30枚入っていた。つまりこれだけで43000Gだ。もちろんアイテムボックスに放り込んで貰っていく。
「よし、こんなもんかな。あの部屋にあった薬品とか素材諸々貰っていこうかな......いや、薬はともかく素材は使わないかな......まあ最悪売ればいいか」
なんかだんだんここから物持っていくのに躊躇いが無くなってきてるなあ......
「さて、そろそろ脱出して地図にあった街を目指すとしますか」
例の隠し扉まで行き開けようとしたのだが.........全く開け方がわからない。外側のように隠しスイッチがあるのかと思って探してみても見つからない。一体どうなっているんだか.........仕方ないから正規の入口を探すことにする。どう考えてもこれ裏口とか非常口の類だろうし。