僕だけの秘密
「もしもーし、聞こえてますかー?」
ヘッドホンをつけ、延々と音楽を聴いている彼女に声をかける。
彼女は僕が声をかけても反応しない。
音楽を聴きながら本を読んでいる。集中しているので気づいてないのだろう。
僕と彼女が一緒に過ごすのは、決まって放課後の教室。
日中話すことはないが、放課後のこの時間は一緒に過ごしている。
お互い時間を潰しているだけの時間。
たまに読書を終えると感想を教えてくれたり、好きな曲が流れたらおススメしてくれたり
なんてことない時間を彼女と過ごしている。
「今日は恋愛小説読んでるんですねー。」
無視。聞こえていない。
「なんでそんなに可愛いんですかー?」
無視。彼女の風に揺れる柔らかな髪が愛しさを感じる。
だけど僕は知っている。
「君のことが好きです。」
この一言で顔を赤らめる表情。だけどいつも無視される。
聞こえてることは知っているんだ。
面と向かって伝える勇気がなくて、一度ヘッドホン越しに伝えたことがある。
その時も顔を赤らめて無視をされた。
そのヘッドホンを外してまた伝えたら、君はどんな顔をしてくれる?