オッズのその後
続きです。
俺が意識を取り戻したのは、次の日の昼だった。
そこは病院のベッドの上で四肢は骨折、肋骨も数本骨折。
ギルドカードは没収され、冒険者ギルドも辞めさせられた。
冒険者ギルド内での冒険者同士の戦闘はご法度だからだ。
俺はノアを心の底から憎み恨んだ。
絶対に殺してやる。
しかし、まずは自分の怪我を治すことが先決だ。
ここは大人しく治癒魔法にお世話になるとする。
白色魔法である治癒魔法は、病気は治せないが、切り傷や擦り傷の軽傷から、骨折や重度の火傷などの重傷でも治せる。
それでも怪我の度合いにもより、俺の場合は骨折なので長くても一週間で治る。
治るまで一日一回ずつ治癒魔法をかける必要があるのだが、その際、治癒の代償として激痛が全身に走る。
あまりの痛さに悲鳴を上げる者は多い、それどころかあげない者はいないだろう。
俺もその一人だ。
折れた骨を無理矢理治そうとするのだから当たり前なのかもしれない。
冒険者の間では、骨折と切断以外の怪我は大丈夫という認識だ。
しかし、ノイシュバン王国とその右隣の隣国ドラグニカ皇国の間に位置するコンスタン聖国の奇跡の聖女と呼ばれる人だけは、骨折も一瞬で痛みなく治し、さらには失った体の一部でも再生できるのだとか・・・。
それから約一週間、改心したように猫を被って完治するのを待った。
俺は退院するとある場所へ向かった。
その場所は黒瓶だ。
あそこならヒプノのような催眠薬を取り扱っていた。
その繋がりで、力を増幅するような違法薬があるかもしれないと思ったからだ。
近年、発見された薬で一時的に筋力や魔力、五感をブーストさせる違法薬だ。
それを国が騎士団や冒険者に使えるように改良して、使用できるようになった薬もある。
違法薬でないブースト薬は、確かにブーストされるようだが、違法薬に比べるとかなり劣ると聞く。
その代わり、副作用が小さく、連続で使用できるところが優秀な点だ。
逆に、違法薬の副作用は、効果が切れた途端にブーストしていた時間の分だけ、三倍から五倍の疲労と吐き気が反動で返ってくる。
「ようやく着いたな」
俺は黒瓶の扉を開いた。
相変わらず、薬品の臭いとホコリとカビの臭いが充満している。
「婆さん、久しぶりだな」
「おや、あんたかい。今日は変装しなくてもいいのかい?」
「あぁ。ん?婆さん、なんで変装のことを知ってんだ?」
「覗かせてもらっていたからねぇ」
婆さんはそう言うと、一つの水晶を取り出した。
見たところ、魔法具の一つだ。
「この魔法具はワシの魔法と連動していてな、ワシの魔法で作り出したこのカラスでーー」
婆さんの方に一羽の漆黒のカラスが現れた。
「お前さんの行動をずぅっと覗いていたのさね。ヒヒ。よかったじゃないかえ、若くてめんこい娘とやれて」
婆さんは、ヒッヒッヒ。と不気味に笑う。
そして続けた。
「お前さんはオッズと言うそうだね。お前さん、ヒプノの説明を詳しく聞こうとしなかったから、おもしろいもんを覗かせてもらったよぉ」
「ヒプノの説明?五回に分けて最低でも四日開ける。ってやつだろ?」
「まぁそうだねぇ。でもそれは説明の全てじゃあないさね。必要最低限というやつさね。そうでもしないとあの娘の精神がぶっ壊れちまうと楽しめないだろう?慎重な奴ならもっと詳しく問い詰めるはずさね。まぁ、ここにくるような人間は、欲にまみれた愚かな連中ばかりだがね。お前さんのように薬さえ手に入れば視野が狭くなっちまうような連中ばりなのさ」
俺は苛立ったが黙って聞いていた。
婆さんは話を続ける。
「お前さんが去った後、帰ってきたヘルムを被った小僧に催眠を解かれたみたいさね」
「なっ!?そ、そんな早くに・・・」
話を聞いて、改めて俺はノアに強い憎悪を燃やした。
「でも、その後がおもしろかったさね。お前さんがあの娘のところを何度訪ねても無視されてたり、別の女に手を出そうすれば軽くあしらわれ、挙げ句の果てにヘルム被った小僧に喧嘩売って返り討ち。最後はギルドまで辞めさせられて・・・いい道化だったさね」
「おい、ババア。今なんて言った」
「いい道化って言ったんだよ。お前さんは本当によく踊ってくれた。ワシは存分に楽しませてもらった。アッヒッヒッヒ」
俺はババアに殴りかかろうとした・・・が、背後から黒いフード付きのローブで顔を隠していた男二人に取り押さえられた。
「離せッ!クソッ!ババアーーガッ・・・」
頭部に強い衝撃を与えられ、気を失った。
「婆さん、この男どうしますか?」
「いつものように変態貴族用の性奴隷にでもしちまいな。欲望に忠実な愚か者に高額で薬を売りつけて、最後に奴隷商に売る。儲かるさねぇ。ヒッヒッヒ」
「婆さん、相変わらず性格悪りぃぜ」
「お前さんらも儲かるからお互い様さ」
こうして俺は奴隷商に売られて、奴隷に堕ちることになった。
奴隷になった俺は、変態貴族に買われていった。
毎晩夜の相手をするのはとても苦痛だった。
最初のうちは悲鳴を上げて、止めてくれ!とも言った。
そういうと、その貴族は逆に興奮し、俺を一層嬲るのだった。
いつ頃からだろうか、苦痛を感じることは無くなり全てが快感へと変わり、俺は心も体も変態貴族を求めるようになった。
変態貴族も嬉しそうに俺のことを責めてくる。
責められると俺は胸が温かく、体も痺れるような快楽に包まれるようになった。
俺はついに今までの自分を捨てた。
俺、いや、私はこの人を心から愛している。
この人も私に愛情を与えてくれた。
変態貴族と罵倒していた俺はもういない。
私はオッズという名前をオズマリーという名前に変えて、この人と一生添い遂げることを決意した。
なお、この出来事をノアが知ることは生涯無い・・・かもしれない。
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