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Bランクの魔物、オーガ

続きです。

アンさんに新しい剣をプレゼントしてもらった同日、 ボクとアンさんはそのままギルドに来ていた。

前に話した通り、Bランクの依頼を探しているところだ。


「やっぱり近場にBランクの魔物討伐の依頼はないわね」


「そうですね」


時間帯も昼を過ぎていて、あまり離れたところの依頼は受けられない。

夜の森になれば一層危険度が増す。

アンさんがいれば夜の森などまったく問題はないだろうが、一応、ライカに心配はかけたくない。


「今日は諦めーーあら?この依頼はーー・・・」


アンさんは一枚の紙を掴み見る。


「場所もそれほど遠くないわね。このオーガ討伐の依頼にしましょう」


その依頼の紙を剥がすと、受付に向かった。

ボクも隣から依頼の詳細を覗く。


「本当ですね。オーガがここまで近くに・・・」


ボクがオーガと戦うなんて、つい数週間前までは考えもしなかった。

不安と緊張で表情が強張る。


「大丈夫よ。今のノア君はオーガにも負けないわ」


アンさんは自信に満ちた声色で言う。

ボクはBランクの依頼をこなせるほど成長できたのか・・・?


「それでノア君、オーガについて知っているかしら?」


「ごめんなさい。名前しか・・・」


「だと思ったわ。まぁ半月近くでDランク冒険者がBランク冒険者並みに強くなるなんて珍しいものね。知らなくても当然ね」


ボクがBランク冒険者並みに強くなっているのなら。アンさんのスパルタの修行と英才教育?の賜物だろう。


「アンさんには感謝しています!」


「はいはい。それは言われなくても、ひしひし伝わっているわ」


そうテキトーにあしらうように言いながらも、アンさんの頬は少し赤みを帯びているように見えた。

何度か言っているが、そうだとしたら、凛とした美女とのギャップが可愛い。

でも、決してそのことを口走らない。

怒られるだろうから・・・。


「さて、ノア君にオーガについて教えるわね」


オーガ・・・オークよりもひと回り大きく、最低でも二メートル、最高は三メートルで筋肉質。

移動速度は遅いが、攻撃力が高く、攻撃速度も早い、防御力もある、中でも一番厄介なのは・・・。

再生能力があるらしい。


「いい?ノア君。再生と言っても一瞬で再生しないわ。まずはオーガの攻撃をしっかり回避すること。回避と同時に攻撃をすること。攻撃するなら目とかアキレス腱とか行動に支障がでるところがいいわね。今のノア君なら六連撃でオーガの防御力も再生力も突破できるわ。・・・あとは怪我をしないように」


「は、はい!」


「そうね。それじゃあ行きましょうか」


ボクとアンさんは以前オークと戦闘をしたコッコルスの森へ向かうのだった。





コッコルスの森の入り口から約三時間ほど歩いている。

道中の魔物はアンさんが倒している。

その理由は、ボクが万全の状態でオーガと戦えるようにするためだ。

それに、目の前でアンさんの美しい剣術を見れるのは嬉しい。


「ノア君。この先にオークがいるけれど、それは私に任せなさい。その代わり、オーガはノア君の獲物だから」


「はい」


前にアンさんが言っていた感知の魔法だろうか。

本当に便利な魔法だ。

するとアンさんが。


「来るわね」


「えーー」


ボクの声を掻き消すようにすぐそこの茂みから。


『ブギャアァァァ!』


突然、オークの鳴き声が聞こえた。

オークは女性(雌)の匂いに敏感だ。

普通の冒険者相手なら良い不意打ちになっただろう。

しかし、アンさんの前では。


「うるさい豚だわ」


襲いかかってくるオークを一瞥もせずに剣をサッと振った。


「欲情するオークも男も似たもの同士ね。気持ち悪いのよ」


ドスの効いた声で呟くと同時に、オークの体に無数の亀裂が入る。

その後はゆっくりとズルズルと崩れバラバラになった。

・・・実は昨夜、アンさんは男にナンパをされていて機嫌そこまで良くない。

なんせ、その男がしつこかったからだ。

そんなこんなで森の奥へと歩みを進める。





「ノア君、見つけたわ」


アンさんが立ち止まると、そう口にした。

ボクは警戒をするが・・・。


「まだ大丈夫よ。二百メートル先だから」


ボクはホッと胸を撫で下ろす。

心の準備ができるからだ。

そしてアンさんが言っていた距離を詰めると・・・。


「凄く強そうですね。それに見た目が怖いです」


オーガの見た目は人間の腕のようの太い牙が二本、下顎から上に向かって生えていて、鬼のように恐ろしい顔をしていた。


「怖い・・・ね。ふふ」


「ん?アンさん今なにか?」


「いいえ、頑張って倒してきなさい」


「そ、そうですか・・・。じゃあ行ってきます!」


ボクは身体強化を発動させ勢いよく茂みから出る。

ステップでオーガに接近して、オーガの横を通り過ぎるように新しい剣の初切りをくらわせた。


『ンゴガッ!?』


剣はすんなりとオーガの肉体を切り裂いたが、それほど深いダメージではない。

ボクがステップをやめ、振り返ると。


「ッ!?」


視界の隅から丸太のような腕がすぐそこまで迫っていた。

ボクはバックステップで急いで回避した。

ボクの目の前をもの凄い風圧と共に通り過ぎていく。


「いくら再生能力があるからってすぐに反撃してくるのか!?」


ボクは気を取り直して、ステップで懐に入ろうと試みた。

しかし、オーガが腕の倍はあるであろう足で回し蹴りをしてきた。


「ふッ!」


ボクはその蹴りを跳んで躱す。

着地と同時に再びステップで今度こそ懐に入った。


「はぁッ!」


同時にオーガの太もも辺りに三連撃をくらわせる。

しかし、この攻撃も深手にはならなかった。

オーガは切られたことを気にせずに反撃をしてきた。


「こ、こいつ!痛覚がないのか!?」


ボクはステップを使い、オーガの攻撃を避け、回避と同時に攻撃する。

しかし、どれも決定打にならない。

やはり、目やアキレス腱などの部位を攻撃するしかない。

そこで、ボクは顔に攻撃をしようと試みた。

オーガの薙ぎ払いを避け、蹴りを避け、懐に入った。

そして顔に向かってジャンプし、六連撃をーー瞬間。

ボクは強烈な衝撃と共に飛ばされた。

視界がぐるぐると回り、気持ちが悪い。


「ッ・・・痛った・・・」


ボクは辛うじて軽い脳震盪と軽い出血で済んでいた。

しかし、被っていたヘルムは変形し、地面に転がっていた。

どうやらボクのヘルムの端っこが殴られたようだ。

もしその攻撃が直撃していたらと思うと、ゾッとする。

ボクは立ち上がりオーガを見る。

視界がクラクラするが、そこは気合で踏ん張った。

視界が元に戻ると、オーガに与えた傷のほとんどが再生していた。

オーガの攻撃をかいくぐるにはもっと早く、スピードで翻弄するしかない。


「すぅー・・・ふぅー・・・よし。」


ボクは息を整え、ステップで接近する。


『グオォォォォォォッ!』


オーガが雄叫びを上げ、丸太のような腕で攻撃してくる。

ボクはステップで横へ避け、立て続けにステップでオーガに接近する。

オーガの攻撃速度の速さに、この攻防を何度も繰り返した。

オーガの攻撃速度に目も体も慣れ始め・・・。


「今だッ!」


オーガの股下を滑るように潜り込み、後ろに回り込んだ。


『ウオオォォォオオッ!』


オーガが振り向きと同時に、裏拳で攻撃をしてきた。


「お前の攻撃速度はわかってる!はッ!」


ボクはバク宙をし、同時に体をひねる。

オーガの頭上に到達すると、剣を素早く振り三連撃をオーガにくらわせた。

オーガの両眼は剣で切られ、流石の痛みで両手で顔を覆った。

その隙を突き、両アキレス腱に六連撃を切り込んだ。

オーガは自分の体を支えきれなくなり、膝をついた。

ボクはガラ空きの首に向かってジャンプし・・・。


「トドメッ!!」


ブシュゥー・・・


オーガの首が胴体と別れを告げ、血が噴水のように流れた。

ボクは自分一人の力でBランクの魔物、オーガを倒したのだ。


「もう、見ててヒヤヒヤしたわ。でもよくやったわ、おめでとう」


アンさんは少し焦ったような声色で近づいてきながら言う。

最後は優しい笑顔で讃えてくれた。

と、思ったのも束の間。


「ん?・・・ノア君って本当に男の子?」


ボクの素顔をマジマジと見て言った。


「男ですよ。・・・ってそうだ!ヘルムっ!」


ボクは自分のヘルムがグニャっとへしゃげているのを思い出し、がっくしと肩を落とした。


「ノア君のトラウマって・・・もしかして、女の子のように可愛らしい顔のこと?」


「ぼ、ボクは男です!女の子じゃないですっ!」


ボクの顔は・・・自分で言うのも嫌な話だが、女の子の顔みたいに可愛いのだ。

それもかなり・・・。


「わかっているわよ。でも、その・・・可愛い・・・わね。それにその綺麗な水色の髪、女の子みたいなショートカット、ボクっ娘じゃないわよね?」


「さすがにアンさんでも怒りますよ?」


「ごめんなさい。この際なんだけど、トラウマになった出来事聞いてもいいかしら?」


「はぁ、わかりました」


ボクはトラウマになった出来事を語った。





今から九年前。ボクがまだ七歳の時だ。


「ノア!お願い!一回でいいから女の子の服着て!お母さんの一生のお願い!ね?いいでしょう?」


ボクはお母さんに、女装を頼まれたのだ。


「いいじゃん!ノア!わたしもノアの女の子の服きてるところ見てみたい!」


幼馴染のライカも頼んでくる。

ボクは諦めて、ふりふりのピンクのワンピースを着せられた。

まだそれだけなら良かった。

ボクはその姿のまま買い物に連れていかれ、いろんな人に見られた。

なんだあの美少女は。と、言う人もいたが、当時の男の子であるボクにとっては恥辱なのだ。

そしてボクの八歳の誕生日にお父さんに安いヘルムを買ってもらい、今に至る。





っという昔話をアンさんに話した。


「男の子にはそう感じるのね」


「当たり前ですよ!ボク自身も自分の顔を女の子みたいって思っているんですから!コンプレックスなんです!」


「わ、わかったわ。王都に戻ったらヘルム買いに行きましょうね」


オーガを討伐した後、色々あったがボクとアンさんは王都へ戻り、冒険者ギルドへ報告する前に、防具屋で新しいヘルムを買った。

防具屋に着くまで、男の人からも女の人からも、美少女。可愛い。などの声が聞こえ、ボクは恥ずかしくてたまらなかった。

ややあったが、冒険者ギルドに戻り、オーガ討伐報告をするとBランク冒険者に昇格した。

オーガはBランクの魔物の中でも強い部類で、それを一人で討伐できる実力が評価されて、昇格が決まった。

しかし、ほとんどの冒険者はCランクかBランクで引退をする。

その理由はAランクに上がる条件が厳しいためだ。

ボクはその条件を知らないが、コツコツ依頼をこなしながら、強くなっていけばいずれなれるかもしれない。

そんなことよりも、ボクがBランク冒険者に昇格したことを、アンさんやロライドさんが喜んでくれて、それが嬉しかった。

そしてボクはアンさんと別れ家に帰った。


「ただいま」


「お、おかえり。遅かったーーって、あれ?ヘルム新しいの買ったの?」


ライカは弱々しい声で心配した声色で言う。


「魔物に殴られてダメになっちゃったんだ・・・。でもね、殴られる直前に首をひねって反らしたから大丈夫だよ」


「ほ、本当に・・・?」


ボクはライカのことを見ていない。

もう、無意識に拒絶をしているのかもしれない。

あの日から時が進むにつれて・・・。

ライカはあの日から不安と後悔、言わなければいけないが言えない。という、負の感情がぐるぐると巡り、その影響でろくに眠れず、食欲も落ちていた。

ボクはライカのことを見ていなかったことを後悔することをまだ知らなかった。

そしてそれはすぐに起こるのだった・・・。

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