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元の世界に戻り、例の喫茶店。城が消えたからといってすぐに警戒態勢を解く事はできないようで、少なく見積もっても今日いっぱい避難命令は解除されないらしい。
市役所とその付近は酷い惨状だった。道路は舗装を破壊して隆起し、近隣の建物の窓はすべて割れていた。
真堂によると、みりるちゃんが彗星を落としたらしい。それを受け止めるべく真堂は巨人を出現させたとの事だった。ちなみにあの巨人は植物性で、道路に手を着けた真堂と繋がっていたらしい。
「同等以上の力があっても経験がなければ扱えない。単純な力は奥が深い」
奥の四人席で真堂の説明に納得しつつ、リヒトウはまくまくとケーキを食べている。そんなリヒトウを隣に座るレムリアは嬉しそうに見つめている。姉に溺愛されてたりきれいなお姉さんに慕われてたり、意外と愛されキャラなのかもしれない。ムカつくやつだ。
「私が作ったの! おいしいでしょ? おいしいでしょ!」
リヒトウの対面に座る紗綾は既に三皿目おかわりだ。黒髪に戻った頭ではアホ毛が元気に躍っている。
ちなみにちゅーの約束はあっさり反故にしてやった。具体的には目の前でアイスコーヒーをちゅーと飲んでやった。紗綾の扱いなど赤子の手を捻るより容易い。
真堂は飲み物を運んだり片付けに勤しんでいる。俺の分のケーキはもう紗綾の胃袋に収まっているため真堂を手伝っている。なんだかんだで一番頑張っていたのは真堂だと思う。
なお、みりるちゃんはカウンター席にロープでぐるぐる巻きに固定され、赤いバッテンの付いたマスクで口を覆われている。その表情は明らかに不服そうだ。
「……みりるもケーキ食べたいのです」
冗談みたいなマスクだが、リヒトウがみりるちゃんを黙らせるためだけに作った法術による代物だ。あれを付けていると法術が使えないらしい。
「図々しい事ほざくなぶっ殺すぞ」
紅茶を運ぶ真堂が薄笑いで囁いていた。みんな仲良く大団円といきたいところだが、こればかりは仕方がない。マジで殺そうとして殺したと思ったあと気にも留めなかった罪は重い。街を破壊したのもみりるちゃんが原因だ。
リヒトウによると初めからみりるちゃんと共謀していた訳ではなかったそうだ。レムリアを城の真下に置いたのは紗綾を誘い出すためだったそうだが、真堂とみりるちゃんのガチバトルが繰り広げられ、初めてみりるちゃんがいると気付いたらしい。
こうなるともうついでの域だが、家に傀儡を寄越したのもみりるちゃんだった。
これだけの事をやらかしておきながらお仕置きがケーキお預け程度で済んだのは、俺が地に額を擦り付けてどうか恩赦をと頼み込んだからだ。
みりるちゃんだって愛する弟のためにやった事だ。もちろん悪意がなければ何もかも許されるなんて思ってはいないが、彼女の行動は彼女の暮らす国において至極妥当だったと思うし、そもそもリヒトウが面倒な事を企てなければこんな事にもならなかった。
無論、かわいいから許したところもある。
男だったら首だけ出して砂浜に埋めていただろう。くらげを頭に乗せ続けるぐらいの事はやっていたかもしれない。真堂の力を借りて過去の黒歴史を聞き出し続けていたかもしれない。
ではなぜリヒトウがお咎めなしなのかといえば、リクルートスーツを着たきれいなお姉さんから「ごめんなさい何でもしますから許してください」とお願いされたからだ。そんなのもう許すしかない。これで許せない男なんてこの世界には存在しない。
冗談はさておき、リヒトウの罪はこの世界に城ごと現れたぐらいだ。紗綾を探すために強硬な手段を取る事もなかったし、上戸市の経済的損失を無視すると実は特に何もしていない。
おそらくもう二度と元の国には帰れない事を鑑みれば、一緒にケーキを食べるぐらい許されてもいいはずだ。




