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夜に繰り出すオンナたち

作者: 黒川瑞希

"今日は中華かな"とミカコは言う。

久々にほぼ同じタイミングで帰宅した私たちは、

上着を着たままソファに座って30分は過ごしていた。


この夏に越してきたばかりの

築30年リノベーション済み1DKは 

鉄筋コンクリート造りで温かみが無く

細長い上に2面の大きな窓があるので10月後半の今はとても冷え込む。


幼馴染の彼女とは3年程前から一緒に生活している。

女2人でこんな狭いところに暮らしているのは、

互いに安月給のくせして渋谷に住みたい、

しかも風呂トイレは別、駅近で清潔なところ!

という無茶苦茶な憧れを無理やり形にしたからだ。


なんだかんだ喧嘩もせずうまくやっているのは、

どちらもあまり神経質でなく気分屋で、

同じくらいだらしがなく嫌いなものが一緒だからだろう。

(友人関係において、好きなものが同じよりも

嫌いなものが同じ方が仲良くできると私は思う。)


家から20mほどの、ビルの2Fにある目的の中華料理屋は

隠れ家的で雰囲気がよく、奥の個室にはときどき芸能人が来ているという。

(私たちはまだ遭遇したことがないが。)

ポツリポツリと料理を注文し、自家製サングリアで乾杯すると

ふっと肩の力が抜ける。


デザートまで終えて甘い香りの中国茶が運ばれてきたころ、

互いにケータイをみて微笑みあう。

"そっちも?"


お茶を一気飲みしてそそくさと会計を済ませ、足早に帰宅し

私はグレーのジャージー素材のロングワンピース、

彼女は緩いニットとタイトスカートへとさっと様変わりし、

歯磨きやメイク直しを済ませ、重い鉄の玄関を飛びだす。


"ぎょーざ食べなくて良かったね"

ふふふ、ケタケタと軽やかな笑い声を零しながら、

まだ電車が動いているというのにタクシーを捕まえる。


じゃあ、またあした。

お互いの彼によろしくね。


私たちはそれぞれの男の元へと輝く渋谷の夜を駆け抜けていく。






ありがとうございました。

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