20)襲撃事件、その後
本日、2話目の投稿です。
1話目は、午後6時に投稿済みです。
それからの日々、なにも手に付かなかった。
カリンは、シオン殿下が派遣した影たちに24時間、見守られているはずだ。
そう思っても、万が一がある。
魅了の魔法が扱える聖女がジュンヤと居るのだから。
だがシオン殿下の計画を邪魔するわけにはいかない。ここで待つしかない。
シオン殿下が私をカリンのそばに置かなかったのは、私がヘタな動きをしたらジュンヤを捕まえる証拠が揃わなくなるから、というのもあるんだろう。
シオン殿下には、ジュンヤを捕まえてもらわなければならない。
半月後。
カリンを襲撃した犯人らが、騎士団に捕らえられた。
シオン殿下の目論見通りになったのだ。
襲撃犯は6人居た。
そのうち2人は、凄腕の傭兵だった。
2人は、聖女の魅了で、操られていた。
ジュンヤは、カイトが護衛に加わることを予測して、腕のたつ傭兵を雇った。
けれど、腕の立つものほど、貴族令嬢を辱めて惨殺するような、汚れ仕事はしない。
腕がよければ、仕事を選べるのだ。
ふだん、彼らは、豪商の護衛や、盗賊の討伐に加わる、といった仕事をしていた。
ジュンヤからの依頼の仕事を、傭兵のふたりは、一度は、断っていた。
ところが、聖女の魅了で操られ、襲撃犯に無理矢理、参加させられていたことが判った。
傭兵の2人は、むしろ被害者だった。
2人が、騎士団に殺されなくて良かった。
傭兵の2人は、無理矢理、操られていたせいか、動きが悪く、騎士団の投げた網で、無事、無力化させ、無傷で捕らえることが出来たという。
2人は、保護され、魅了魔法を解かれ、解放された。
ジュンヤの実家、ユキノ伯爵家は、のちに、2人に賠償金を支払った。
この事件の罪により、聖女レミ、ジュンヤ、そして、ジュンヤの祖父ユキノ伯爵は、永蟄居が決まった。
私が思うに、この事件の真の主犯は、ジュンヤの祖父、ユキノ伯爵ではないか。
ユキノ伯爵は、傲慢な血統主義者だった。
ジュンヤの父親は、幼いころ、ユキノ伯爵の虐待に近い特訓で身体を壊し、今もその影響に苦しんでいる。
ユキノ家を牛耳っているのは、ユキノ伯爵であり、ジュンヤの教育をしたのも彼だ。
ジュンヤを狂人にしたのは、彼だろう。
それでも、ジュンヤに非が無いとは言えないが。ユキノ伯爵も、同等の罰を受けるのは当然だろう。
我が国の司法は、正しい判断を下した。
◇◇◇
我が父は、引退することになった。
父トキワ公爵が、聖女レミの魅了魔法に惑わされていたことが判ったのだ。
長兄である兄が、王宮の魔導師協会に頼んで調べてもらった結果だ。
これは、実は、かなり恥ずかしいことだ。
聖女の魅了魔法については、王都では、さんざん噂になっていたからだ。
誰もなにも知らないうちに、魅了魔法にかかっていたのならまだしも。
貴族が情報に疎いことは、恥なのだ。
領地を運営し、貴族社会を生きるためには、情報収集は必須だ。
聖女が魅了魔法を使う、という噂が出回った時点で、高位貴族は、みな、精神系魔法を防御する装備を身につけている。
当たり前なのだ。
カリンの兄、ハヤト殿が居る研究所では、何年も前から、そういった防御用の魔導具の普及に努めている。
危険が予告され、そして、防御する方法もある。
それなのに、公爵ともあろうものが、魅了魔法に引っかかった。
これでは、公爵としての能力を疑われる。
父は、事態の説明を求められて王宮に行き、さんざん、嫌みを言われ、誹られたという。
これは、つまり、「さっさと公爵を辞めろ」と遠回しに言われたのだ。
聖女レミの悪行は、表向きは、隠蔽されている。
関係者は、みな、口をつぐんでいる。
だが、我が父は、かなり迂闊な人間であるため、信用されていない。
ゆえに、「王都から退き、田舎に引っ込んでいろ」という意味も持っていた。
裏では、母の実家や、長兄が暗躍していたのだろう。
父がいつまでも、マヌケな投資を続けたら、家の資産が無くなってしまうことも心配だったらしい。
私は、父が領地に引っ込んですぐに、カリンと正式に婚約した。
お読みいただきありがとうございました。
また明日、午後6時に投稿いたします。




