11)鑑定の結果
ゴールデンウイーク中も、投稿予約いたしました。
旅行行く予定もない作者ですが(^_^;)
馬車の中で、カリンがジュンヤと聖女を鑑定して判ったことを聞いた。
カリンは、ふだんは、勝手に鑑定するのはマナー違反だから、ひとの鑑定はしない。
でも、ジュンヤたちは、カリンになんの承諾もなく、真否判定の魔導具を用意して尋問したのだから、カリンが彼らを鑑定しても文句はないだろう。
カリンの鑑定は、ひとの心の深い感情を見ることができる。それは、彼女の独特の能力だった。
ただし、読心術ではないので、考えを読み取ることは出来ない。
「私に関しては、レミさんは、嫌悪。
ジュンヤさんは、憎悪と嫉妬でいっぱいでしたわ。
それから、ソラに関して、ジュンヤさんは、明らかに好意、恋情をもっていますわ。
そして、非常に強く執着しています。
ジュンヤさんの、優越感、幸福感、満足感、そういったものと、ソラの存在が、関わっているみたいです。
愛って、複雑な感情ですのね。
私、ジュンヤさんから読み取れた感情を、すべて言葉で言い表すことはできませんわ」
とカリン。
ジュンヤが、私に、歪んだ愛情・・というか執着心を持っている・・?
まぁ、あいつの生い立ちや、育った環境などを思うと、どんな偏執狂になったとしても不思議はない。
だからといって、ジュンヤは許せない。
環境がどうであっても、誰でも性悪になるとは限らない。
ジュンヤは、自分で自分を歪ませている節がある。
だから、同情する気はない。
さらに、カリンは、
「ジュンヤさんは、おそらく、待っています」
と言う。
「待ってる? なにを?」
「ソラと婚約できる日を、ですね」
「なんだって?」
「ジュンヤさんが女性に戻れるとしたら、彼女の厳しい祖父が亡くなられたときでしょう」
「ああ・・。
そういうことか」
カリンは、ジュンヤと聖女レミとの関係が、『契約』であることを読み取っていた。
ジュンヤは聖女に協力し、シオン殿下たちや、我が父トキワ公爵との繋がりを取り持った。
その代わり、聖女レミは、私を婚約者にする。私を他の女と婚約させたりしないためだ。
そして、ジュンヤの祖父が亡くなり、晴れてジュンヤが女に戻れたら、聖女レミは、私をジュンヤに返してやる・・。
「私は品物じゃないんだけどな」
不愉快だ。
顔を見るのも嫌な奴と、結婚なんかしてたまるか。
「ジュンヤさんは、嫉妬で狂うほどにソラが好きなんですのよ。
そのジュンヤさんが、ソラとの婚約を画策しているレミさんと親しく協力的なのは、事情があるんですわ」
おかしいな・・私は、ジュンヤから好意を感じたことがない。
まぁ、男だと思い込んでいた、というのもあるが。
今も、ジュンヤが女と言われても、ピンとこない。
聖女レミは、ジュンヤが私を愛してる、と吐き気がするようなことを言っていたが、ウソだと思う。
あるいは、大いなる勘違いだ。
ひとは、好きになった相手に、自分も好きになってもらおうと、心遣いをするものではないか。
けれど、ジュンヤは、私から嫌われるようなことしかしない。
ジュンヤの亡き母は、私の父の姉だった。
私は、時折、父に連れられ、ユキノ家を訪れた。
ジュンヤの祖父は、厳つい、まるで鬼人のような顔をした痩躯の老人だった。
彼は、ユキノ家に君臨していた。
ユキノ家の者は、一人残らず・・邸で飼われている犬に至るまで、ユキノ伯爵の支配下にあった。
そんなユキノ家で、ジュンヤひとりが、ユキノ伯爵の寵愛を受けていた。
ユキノ家では、ジュンヤは特別な存在だった。
私は、ユキノ家に行くと、ユキノ伯爵の前で、秀才のジュンヤに比べ凡才な息子だと、いつも父に言われた。
ユキノ伯爵は、「ハハハ。ジュンヤは、優秀だからな。まぁ、仕方があるまい」と鷹揚に笑った。
ジュンヤは嬉しそうにしていた。
けれど、今は亡き彼の母は違った。痛ましげな、哀しげな・・あるいは、苦しげな顔をしていた。
自分の息子が褒められているのに、なぜ喜ばないんだろう、と不思議に思ったことを覚えている。
父がユキノ家に行くのは、しばしば、投資で失敗した金の都合をつけるためだと、後から知った。
カリンは、ジュンヤの「優越感、幸福感、満足感、そういったもの」と私が関わっている、と言った。
ジュンヤは、彼の祖父や私の父に溺愛されていた。
私と比べられることで、さらに、優越感に浸り、満足を得ていた。
私を踏みつけることで、幸福を感じていた。
それが、愛だろうか?
少なくとも、私に対する愛情ではない。
彼なりに、私に対する多少の好意はあるのかもしれない。
でも、私には、そんなものは感じられない。
彼がもっとも愛している対象は、自分自身だ。
自分をもっと幸福にするために、私が必要だから、私に執着しているんじゃないかな。
ジュンヤは、利口なやつだ。
その知能を、自分の利己的な目的のために使うやつだ。
それから、聖女レミは、「キースレア帝国の皇族」に強い執着を持っている、らしい。「恍惚と憧れ」、「強い恋慕」を。
さらに、聖女レミが、『シオン殿下』『コウキ』『ソラ』『カイト』の4人に抱いている感情は、欲望、執着、好意、必要性、だという。
「レミさんは、なにかを・・いえ、誰かを、求めている。
そのために必要なのが、ソラたち4人。
レミさんには、4人の関連とともに沸き起こる感情があるんですわ。
それも、かなり強力な。
レミさんは、誰かに、非常に強い執着をもっている。
ジュンヤさんがソラに執着しているのと同じように。あるいは、それ以上に」
要するに、聖女レミは、私たちを踏み台にして、キースレア帝国の皇子のもとへ行こうとしているのだろう。
「なるほどね。
でも、それは、我が国にとっては、裏切りだろう」
「キースレア帝国は、荒れた大地が広がり、耕作地が十分にないのでしょう?
聖女が荒れ地を癒やせば、戦争の理由がひとつ減るのでは?」
「カリン。
たしかに、キースレア帝国には荒れ地が広がってる。
けれど、過去に起こしてきた戦争のおかげで、人口も減っているんだ。
キースレア帝国は、国家運営をきちんと出来れば、食料には困らないはずなんだ。
キースレア帝国の問題は、長年、戦争ばかりしてきて、平和な世を治めることができていないからだ。
おまけに、戦争をやりたがる軍人と武器商人の力が強く、政治に関わっている。
キースレア帝国は、単純な国じゃないんだ。
レミ嬢のような、ひとを魅了で操ろうとする人間が、キースレア帝国に嫁いでいったって、良い結果になるとは思えないな」
「それは・・そうですわね・・」
「それに、キースレア帝国の荒れ地は、大規模魔法で荒れたのが原因だが、炎魔法や氷結魔法で木々や草木が根こそぎになっているだけで、呪いで荒れたわけではないんだ。
聖女の魔法を使うまでもないことだよ」
「ひとが多く亡くなった土地なので、浄めたいのでは?」
「そういう供養は、その土地の宗教が行うべきだろう・・。それが本来の形だよ。
キースレアの大地のことは、私は、むしろ、土魔法でほぐしたり、カリンがいつも鉢植えを元気にする方法で、草木を癒やしてやるほうが良いと思うけどな。
実際、土魔法で、少しずつ、耕作地を増やしている、と聞くよ。
キースレア帝国の皇太子妃が中心となって、活動をしているらしい。
キースレア帝国が、聖女の件でアノス王国に接触してこないのは、そのためだろう」
「では、レミさんが、キースレア帝国に行こうと思っても、計画通りには、いかないかもしれませんね。
レミさんは、『予知』が出来ると言ってましたけれど、ハズレたのかしら」
「う~ん。まだキースレア帝国については判らないけれど。
彼女が言っていたことは、いくつか、思い込みで間違っているところがあるんじゃないかな。
カイトは、今のところ、聖女の取り巻きじゃないけど、レミ嬢の予想通りだったら、魅了されていたはずなんだろ?」
「そうですわね」
◇◇◇
私たちは、カリンの兄上の研究所へ行った。
私が魅了防御の魔導具を持っていることが、ジュンヤたちにバレたからだ。
「ソラが魅了魔法を防御する魔導具を持っている、と告げたときの、ジュンヤさんとレミさんの感情が気になったのです。
焦りと、困惑・・それから、どす黒い悪感情。悪巧み・・。
ろくな感情ではなかったですわ。
ソラの持っている魔導具は、どうやって手に入れましたの?」
とカリン。
「従者に買ってきてもらったものだ」
「そうしたら、従者は、トキワ公爵に尋ねられたら、話してしまいますわ。
取り上げられかねません」
「あぁ・・そうだろうな」
「ハルトお兄様は、魔導具制作に関しては優秀なんですのよ。
お願いすれば、魅了を防御する魔導具で、傍目からは判らないものを用意してくれると思います。
ソラと、カイトお兄様のぶんと、私のと、3つ、もらいましょう」
装備しているのが判りにくい腕輪型の魔導具を用意してもらった。
研究所のカリンの兄上は優秀な方のようだ。その上、穏やかで優しい人物だ。
ジュンヤたちのおかげで、気分が荒んでいたが、カリンや兄上と話していて安らいだ。
ホントに、誰が聖女だろう。
お読みいただきありがとうございました。
また明日、午後6時に投稿いたします。




