第46話
動かないんじゃない。
動けないんだ。
そりゃあ、手の力だけなら振り払って、なんとかなるかもしれない。
でも、違う。
まるで金縛りに遭ったように、体がピクリとも動かせないのだ。
「余計なこと考えなくていいのよ」
さきは、そう言った。
声は優しく、語りかけるように。
だけど、さっきから、彼女はまばたきひとつすらしていないから、ちょっと怖い。
いや、目だけじゃない。
腕も、足も、頭も、口も、ずっと動いていない。
まるで、時が止まったか、死んでしまったかのようだ。
……口も?
「念力と思ってもらえば大丈夫よ。直接頭に、というよりは瞳を通じて心に、私の言葉を流しているのだから」
腹話術でもしているのかと疑い始めた僕だったが、それは否定された。
そうか。そんなことができるのか。
凄いな。
「まぁ、当然のスキルよ」
平然と、心を読まれてしまう。
じゃあ、僕はもう喋らなくていいのか。
地の文だけというのも寂しいのだけど、仕方ない。
「ええ。喋らなくていいわ。だけど、喋らなくていいから質問には答えてね」
ん?
えーと、たぶん、聞かれたことを思い浮かべればいいのだろうけど、そんなことをする必要はあるのだろうか。
だって、今、繋がっているのだから……。
「繋がっていると言っても、記憶までは共有できない。だから、答えて」
なるほど。
頭ではなく心と繋がっているとは、そういうことか。
それなら、しっかりと答えよう。
説明が長くなってしまったわ、と彼女は言って、それから、じゃあ、と続けた。
「取り敢えず、あなたに、七夕 たひと暮らしていたという記憶はある?」
ない。
ないからこうしている。
「まあ、そうよね。それは分かっていたわ」
すぐ答えられる簡単な質問というのも、大切なのだと聞いたことがある気がする。
理屈は知らない。
もしかしたら嘘かもしれないけど、たぶん、次からの質問とかが答えやすくなるんじゃないかな。
もしくは、クイズ番組なら盛り上がる、とかかもしれないが。
「ではでは第2門!」
本当にクイズ番組なのか……。
「ノリが悪いわね。それと、問の字が門になっているというツッコミも欲しかったわ」
思念だけでツッコミをする能力は、僕にはない。
ごめんなさい。
あと、漢字変換ミス対してツッコミをするとか可笑しいと思う。
音は同じなんだから。
この人は、僕とは違う世界を見ている気はしていたけど、あながち間違っていないのかもしれない。
「もういいわ。ふざけるのは終わりよ。シリアス展開に入るわ」
ふざけていたのは、僕ではないと思うけど、特に何も言うまい。
そんな僕の反論も聞こえているのだろうけど。
彼女は、それを無視して続けた。
「あなたの、家族について教えて」




