第16話
「で、朱夏さんについてどう思うか、ですよね?」
「えっ、あ、うん」
てっきり、もうその質問はなかったことになったのかと思っていた。
だが、こちらに背を向けたまま、たひは続ける。
「……少し乱暴だけど優しい人なんじゃないかと思います」
そう言って、たひは、くるっと僕の方に振り返った。
「まだちょっとしか関わってないのでよく分かりませんが」
そして、そう付け足した。
思っていたのと違う答えだった。
「意外に高評価だね」
もっと貶されるものだと。
すると、たひは目を細めて、再び僕を睨む。
「悪いですか? 何ですか、もしかして、私が悪口を言うのを期待してたんですか?」
「そんな訳ないよ。ただ、意外だなって思っただけだから」
人と関わることが苦手そうな気がしていたから。
忘れかけてきてたけど、たひは死神だし。
それに、悪口を言うのを期待するなんて、誰がするんだ。
僕はそこまで悪趣味じゃない。
まあ確かに、朱夏の悪口を聞くのは悪い気分じゃないが。
「そうですか……あ、でも一応言っておきますが、高評価って程じゃないですよ。警戒してますし」
「警戒って……」
苦笑いしてしまった。
警戒って、一体何を警戒をするんだ。
朱夏は確かに乱暴だけど、害は与えてこない。
害を与える力はあっても、与えようとする意志がない。
いやまあ実際、彼女は無意識に振り回してくるだろう。
でも別に、害って程じゃない。
だから大丈夫だと、たひに伝えた。
だけど、たひは溜め息を漏らした。
「違うんです。朱夏さんは、知り合いと顔が似てるんです。それがなんとなく気になってしまうんですよ。それだけです。特に気にすることはないって分かってるんですが」
「へぇ……知り合いって死神?」
「勿論、そうです」
死神に似てるってどうなんだろ。
そっちもうざいのだろうか。
ちょっと気になるな。
「あのさ、その子について教え……」
「さぁさぁ二人とも決まった!?」
その死神について聞こうとした瞬間、朱夏が僕とたひの間に割り込んできた。
なんか、にやけてて気持ち悪い。
「まだです」
たひが答えると、朱夏はくねくねと気持ち悪い動きでたひに近づき。
肩に手を乗せ、顔を近づけた。
僕は、そんな光景を、ただ見ていた。
「あれー、まだなんだー。まあ、じっくり決めたいよねぇ。普通はダブルベッドかぁ……あ! いっそ買わないでシングルベッドで二人で寝……っ!」
「少し黙ってください!」
「ぐふっ……」
何を話していたのか、聞こえなかった。
分かったのは、たひの腹パンで朱夏がダウンしたことだけ。
苦しそうな表情で、朱夏はくの字に倒れた。
白目になって、泡まで噴いていた。
一体どんな地雷を踏んだんだ……
「じゃあ適当に買って帰りましょう」
「いや、でも……」
「ね?」
今まで見た中で一番爽やかな笑顔なのに、一番殺意を感じる。
正直、鎌を持ってたときより怖い。
「……はい」
僕は頷くしかなかった。




