第14話
同人誌とか、たひは知ってるんだな……。
死神の女の子には全くいらない知識だろうに。
まあいいや。置いとこう。
僕は、目の前に崩れた二人を見下ろした。
「話を戻そう。たひが死神だって話だ。いいな?」
「……いいよ」
「分かりました」
二人の頭にはたんこぶができている。
たひは泣いていないのに、朱夏は涙目だ。
しっかりしてくれ、大学生。
「窓からたひがやって来た。俺を殺すために。いいか?」
「うんうん、なるほどなるほど…………って、えぇぇぇ! こおちゃん殺されちゃうのぉ!?」
明日、世界が滅びますって言われたみたいなリアクションだ。
というか、殺されることはさっき言ったよな。
本当に、何も理解できていなかったのか。
……はぁ。
「……そうだ」
「そんなの、いやだよぉぉぉ! うわぁぁぁぁん!」
…………泣き出した。
滝のように溢れる涙。
めんどくさいな。
しかも、中々止まないから、どうしようかと途方にくれていると、たひに袖をちょいちょい、と引っ張られた。
「どうしたの?」
「あの、朱夏さんに寿命のことは言わないでください。言ってはいけないきまりなので」
「あ、そうなんだ。それなら最初に言っておいてよ」
「すいません。うっかりしてました」
……うっかりで大丈夫なのか?
死神のルールとか、破ったら大変そうだけど。
僕はよく分からないが。
まあ、そういうことらしいので、泣き止まない朱夏に話しかけた。
「あ、朱夏、殺されるってのは嘘だ」
「……うぇ?」
なんとかやり過ごそう。
「たひは僕の家に遊びに来たんだ。な?」
「あ、はい。そうです」
「ほら。たひも言ってるだろ? だから顔拭けよ」
鼻水と涙で、朱夏の顔はぐちゃぐちゃだ。
なんでそんなに泣いているのか、よく分からない。
朱夏は僕からティッシュを奪うように受け取って、顔を乱暴に拭いた。
「うん、分かった……こおちゃんを信じる」
ゆっくりと朱夏は頷いて。
深呼吸の後、ぽつりと、ぽつぽつと、言葉を吐き出した。
「でも、死ぬなんて冗談でも言わないでね。私にはとても耐えられないから……」
「…………ああ」
このとき、僕にとって、そこら辺に落ちてる埃みたいに軽い僕の命は、朱夏にとっては重いものなんだって、思い知らされた。否、思い出した、のだった。
「さぁやって来ました買い物ターイム!」
「なんでついてきたんだよ……」
これからの生活に必要な物を買うために、僕らは大型スーパーに来た。
そして、どういうわけだか、朱夏までついてきた。
「私の力は不可欠だからね! よし、突撃だー!」
そんな言葉を残して、朱夏の背中はどんどん小さくなっていくのだった。
サバンナの野性動物みたいな俊敏さだった。
「さすがです……朱夏さん……」
そんなたひの呟きが、聞こえた。




