第12話
「いやー、私よりこおちゃんの方が大人っぽいよねー。これで高校生とか信じられないよね!」
「朱夏が子どもっぽいだけだと思うけどね」
騒がしいやつだ。
昔から変わらない。
いや、最近は昔より酷くなったな。
「で、で? 私のことはいいから、たひちゃんのことを聞かせてよ!」
「食べながら話すなよ」
朱夏は、口にサンドウィッチを含みながら話すものだから、かなり汚い。
そしてそのサンドウィッチは僕の分だ。
言っても返してくれないだろうが。
「わ、私は、その……」
たひが僕をチラチラ見てくる。
どうやら、死神であることを言うべきか躊躇っているようだった。
確かに、あまり言うべきではないのかもしれない。
誤魔化してみるか。
「親戚の子が遊びに来たんだ」
「それは嘘だね! こおちゃんの親戚は、全員の顔と名前と誕生日、血液型と好きな食べ物まで調べてるけど、たひちゃんって子は、知らないよ!」
食い気味の反応。
そして、どや顔だ。
びっくりするくらい、どや顔だ。
しかし……朱夏はストーカーなのか?
しかも、かなり悪質な部類の気がする。
ちょっと怖くなってきた。
「えっと、じゃああれだ、隠し子だ」
「私を勝手に隠し子設定にしないで下さいよ!」
えぇ……
たひは味方じゃなかったのか?
おかしいな。
「こおちゃん、本当のことを言って! 私、何があってもこおちゃんの味方だから!」
どっちかと言えばお前は敵側だ。
たひも朱夏も。
これが四面楚歌ってやつなのか。
中々大変だ。
今は二面しかないけど。
「分かった、分かった。正直に言えばいいんだよな。たひ、言っていいよ」
「わ、分かりました。実は私……」
ごくり。
朱夏が喉を鳴らした。
「死神なんです」
「し、死神……?」
衝撃的なカミングアウトだ。
僕は、実際にあり得ない現場を見たから信じられたが、そうでなかったらどうだろう。信じなかったのではないだろうか。というか普通信じない。
だから、認めないで、笑い飛ばすものだと思っていた。
だけど違った。
「す、凄いね! 私、死神なんて初めて見た! あ、握手してー!」
僕は朱夏を見くびっていたようだ。
予想以上に素直な馬鹿だった。
強い力でたひの手を、目を輝かせながら上へ下へと振る彼女を見て、僕はそう思った。