表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/62

第11話

 モシャモシャ、モシャモシャ。

 僕たちは、買ってきたサンドウィッチを食べていた。

 さっき買ってきたやつだ。

 ようやく食べることができた。


「まずは自己紹介からしようか」


 棒立ちしていた二人を、無理矢理テーブルの前に座らせた僕は、取り敢えず場を仕切った。

 サンドウィッチを食べながらだが。


「あ、私、海星(うみほし) 朱夏(しゅか)。朱夏ねえとか、もしくはヒトデちゃんでもいいよ! よろしく!」


 僕の右手側に座る、オレンジの髪に、ヒトデの髪飾り(可愛いかは不明)をつけた朱夏が名乗る。

 ヒトデちゃんとは、言うまでもないが彼女の名字から来たあだ名だ。

 多くの人に呼ばせているらしい。

 僕は呼ばないが。


「わ、私は七夕 たひと名乗る者です。よろしくお願いします」


 そして、僕の左手側に座るたひが、同様に自己紹介をした。

 どうやらたひは緊張しているようだ。

 一方、朱夏はまるで緊張していない。


 まあ、だいぶ昔のことだが、集会で生徒全員の前でスピーチをしたときすら、全く動じなかったような人間だから、当然か。

 それどころかあのときは、アドリブで躍りまでして見せ、後でこっぴどく怒られたそうだ。

 懐かしい。


「で、たひちゃんは、どうしてここにいるのかな? こおちゃんの家に、んー? 一体何者なのかなー? んー?」


 朱夏は、顔を極限までたひに近づけた。

 息がかかる距離。

 当然、たひは萎縮してしまっていた。

 というより、引いていた。

 ドン引きだ。

 当たり前だけど。


 だって、さっき挨拶したばかりの他人に、鼻息を吹きかけるような女がどこにいるのだろうか。

 ここにいるが。

 そんなこと、ゴリラだってしねぇよ。


「まずは朱夏から自分について話せ」


「いて! 痛いよこおちゃん! ひどい!」


 軽くチョップしただけだ。

 大袈裟過ぎる。

 顔を殴られて、壁に頭をぶつけたわけでもあるまいし。


「そんな強くやってないだろ。いいから話せ」


「こおちゃん、私にだけ冷たいよね……もしかして、私、試されてる!?」


 なんだろう、凄くムカつく。

 ジャングルに荷物を持たせず放ってやりたい。

 それでも生還しそうなのが、恐ろしいが。


「……死にたいのか?」


「怒んないでってばー。冗談だよー」


 …………はぁ。

 朱夏といると溜め息が増える。

 溜め息をすると幸運が逃げると聞く。

 もしかしたら、彼女は僕にとって貧乏神なのかもしれない。

 

 長年の付き合いだから、僕は慣れてしまったけれど。

 たひはついてこれてないようだ。


「あ、あの、氷さんと朱夏さんの関係は一体……」


 振り絞ったように、たひは言葉を発した。

 すると、朱夏は胸に手を当て、答える。


「私は、こおちゃんの幼馴染みなの! 一応私が二歳上! 今年から大学生なのだ!」


 ピースサインを掲げた朱夏。

 そんな彼女からは、「ちょっぴり知能が足りないぞ!」みたいなオーラが、出ているような気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ