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生まれた先は英雄の子  作者: KB
第二章 幼年期
19/24

狼の誓い

お久しぶりですm(._.)m


※2017/2/9改稿

※スマホ読み推奨。

「これから、どうされるんですか?」


 少女が片膝をついた状態のまま俺の様子を伺うように聞いてきた。


「うーん、取り敢えず野盗退治が無くなっちゃったからなぁ」


「あっ……すいません」


 白銀の狼耳と尻尾がしゅんとなった。


「あぁ、別に君のせいっていう訳じゃないよ」


「そう……ですか?」


「うん、いてもいなくても大して変わらなかったと思うし」


「そうでしたか」


 納得したのか尻尾が左右に揺れ始めた。


「でも、本当にどうしたものか」


「一度お戻りになられてはどうでしょうか?」


 シャルが無難な案を出してくる。


「家にかい? この子をなんて説明すればいいの?」


「すでにお考えになられているのではないのですか?」


「あははっ、全く、これっぽっちも考えちゃいなかったよ」


 普段は何かと考えて行動してたから、こういう突発的なことはどうも苦手だ。


「それでも、一度説明されるのがよろしいかと」


「あぁ〜、そうだよね。やっぱり」


 やっぱりここは一度家に帰るのがいいように思えてきた。


「じゃあ帰ろっか」


「馬車はどうしますか?」


「まとめて運んじゃおう。一度待機場所まで戻ろうか」


「かしこまりました」


 そういう事で朝にテントを張っていた所まで戻る事にした。

 片膝をついた状態の少女にもついてくるように言う。


「ついておいで」


「はい」



◇◇◇◇◇



「お帰りなさいませ、ルード様」


 待機場所にて待機していた幾つかの部隊の者達が声を揃えて出迎えてきた。


「ただいま」


「その者は?」


 先頭に立っていた部下は、俺の右斜め後ろを歩いてついてきていた少女を一瞥して尋ねてくる。


「拾った」


「そうでしたか」


 それでいいのか。とも思わないでもないが、狂信者と準狂信者の集まりみたいな部下達に俺の行動を止めようとする意思なんてないんだから気にするだけ無駄な事だろう。


「野盗退治も終わったから、すぐに帰ろう。さっさと準備―――」


「いつでも大丈夫です」


 ついさっきまで俺を出迎える為に色々と準備をしていたテーブルなり何なりが一瞬の内に片付いて、全員が整列していた。


「忘れ物は?」


「ありません。いつでも帰還できます」


「ならいっか。よし、それじゃあ、帰るとするか」


 そう言って俺は魔法を発動する。


「移動魔法『ル○ラ』」


 地面に全員を囲い込むほどの巨大な魔法陣が発動する。


(これ、絶対に勇者がド○クエを参考に作った魔法だよな)


 そんな事を考えながら、魔法陣が全員を包み込む。

 因みに、『魔導の書(グリモワール)』を使わなくとも、魔法くらいは発動する事ができる。父との特訓の時は『思考の代理人(サブブレイン)』まで使わないと攻撃が防げないから、その2つを併用して使っているだけに過ぎないのだし。


(絶対にそんな特訓はおかしいと思うんだけどな)


 そんな事を考えながら、帰ったら母上に何て言い訳しようかと考える。

 父に許可も認可も求めないあたりが、敬意の差を如実に表しているとも言えるかもしれないが……。


 一方、ルードの配下となる事を決めてついて来たはいいけど周りの状況についていけていない少女は、ルードに寄り掛かろうとして、睨まれて。ルードに話し掛けようとして、睨まれて。を繰り返して魔法陣の中ですでに涙目になっていた。


(ル、ルードさまぁ……)


 そんな少女も含めて全員が魔法陣に包まれた時、森の中から30人以上の人が一瞬にして消えた。



---------------------


移動魔法『ル○ラ』

二代目勇者カズヒコが使えたら便利だなぁ、と思い作った魔法。

勇者、僧侶、神官、武闘家のメンバーのみ転移可能。

一度行ったことのある街の前に転移する。


---------------------



 ルードは勇者すらも軽く凌駕する。

 因みに、この時の勇者のパーティーは勇者、重戦士、剣士、僧侶、神官、魔法使いであり、作ったはいいけどお蔵入りになった魔法である。



◇◇◇◇◇



 バシュッ



「到着っと」


 総勢32名で行った野盗退治は死傷者0の33名で帰還する事ができた。


「どうされますか? ルード様」


「まぁ、取り敢えず母上に帰還の報告とこの子の事を話してくるよ。シャルとウィズはついて来て」


「「かしこまりました」」


 1人はしずしずと、もう1人はふよふよと俺の後をついてくる。


「それじゃあ行こっか」


 そう言って少女の方を振り返ると、少女は軒先にあるオブジェに釘付けになっていた。


「ル、ルード様?」


「ん? どうしたの?」


「あ、あれは?」


 そう言って少女が指差したのは、我が父フォードの氷像だった。


「父上だね〜、うん」


「い、いや、え? お父様、ですか? あれが?」


「気にしたら負けだよ。早く行かなきゃ復活しちゃうし」


 そう言って少女を引っ張っていこうとしたが、氷像に罅が入り始めた。


「あ〜あ、だから言ったのに」



 バリ バリ バリイィン



 そんな音を立てて、氷像から父が出てきた。


「ん〜……、おっ? ル―――」


 氷の中から背伸びをしてアホ面晒しながら出てきた父を再度氷の中に封じ込めるために、母上の残存魔力を用いて封印魔法を唱える。


「封印魔法『氷結封印』」



 パキキキッ



 再度、父は氷のオブジェクトになった。


「え? ルード様? 何を?」


「さて、母上に挨拶に行くよ」


「あの、先程の魔法……」


「さぁて、どう説明したものかな」


 少女の問いかけをガン無視して母上の下まで引っ張って連れて行く。



◇◇◇◇◇



「只今戻りました、母上」


「あら、お帰りなさい。ルード」


「父上が出て来ようとしていたので、封印しておきましたが良かったですか?」


「えぇ、ルードを危険な目にあわせるような者に生きる価値はないですからね」


 にこやかな笑顔で恐ろしい事を言う我が母メリッサ。

 ここ最近、ムスコンと座学の厳しさの差がひどくなってきたようにも思う。

 誕生初日から放置した事を負い目に感じているのか、父上との特訓の時は何があろうと必ず見学している。

 ついこの間なんか、母上に面倒ごとを持ってきた昔の仲間を氷のオブジェクトにして玄関前に放置していた。


「それよりも、その娘はどちら様かしら?」


 母上が目を細めながら少女の事を見つめる。

 少女の方は、母上の眼力にすっかり竦み上がってしまっている。


「拾ってきました」


「あら、そう」


 そう言って、へにゃりと眉尻が下がる。


「初めまして、ルードの母のメリッサです。よろしくね?」


「ひゃ、ひゃい、ひゃひめまひて」


 緊張と混乱で噛み噛みの少女。


(それにしても、母上よ、貴方もそれでいいのだろうか)


 俺が拾う=安全の式がどこで成り立っているのかよく聞きたい。


「貴方、名前は何て言うの? 見たところ白狼族の子供のようだけど」


「あっ……」


 母上のそんな質問に、沈んだ顔をみせる少女。


「あら、ごめんなさい。そういう事ね」


 そう納得すると母上はこちらを向いて言った。


「家族に、するのね?」


「はい」


「責任は?」


「【私の愛する(ジ・ディ)父上の剣と(・ラペーラ)母上の杖に誓って(・マレペーレ)】死ぬまで共に過ごしていくつもりです」


「そう、いいでしょう、許可するわ。あの人には私から言っておく」


「ありがとうございます、母上」


「ちゃんと名前と家名、あげるのよ?」


「はい」


 それだけ言うと母上はもう一度少女の方を向いた。


「これからよろしくお願いするわね、お嬢さん」


「は、はい!」


 何がどうなってるか分かっていない様子だったけど、取り敢えず返事を返した、少女―――あぁ、いや、もういいやフラン、そうこの娘の名前はフランにしよう。

 茫然としたフランを連れて俺は自室へと戻った。


「さて、それじ―――」


「あ、あの!!」


 名前なり何なりを付けようかなと相談をしようとしたら、フランから声をかけられた。


「ん?」


「誓いを、誓いを立てさせてください!」


 そう言って、俺の目を真剣に覗き込んでくるフラン。


(誓い、か。この世界の誓いって魂の神約みたいなところがあるんだよな)


 そんな事を思い出しながら確認を取る。


「いいの?」


「はい、貰ってばかりではなく。口ばかりではなく。形にして示したいので」


「なら、いいよ。どうすればいい?」


「そこに立ってもらってもいいでしょうか?」


 そうフランに言われるがままに、部屋の中央に立つ。


「ルード様」


 シャルとウィズが確認をしてくる。


「2人は何があっても動かないでね」


「ルード様の御身に何事もないのであれば」


「隣に同じく」


 先に2人に釘を刺しておく。


「それでは始めます」


 そう言ってフランは上着を脱ぎ、自分の指を噛み切って少しばかりの血で自分の胸と俺の周りに魔法陣を描いた。


「【我白き狼の末裔デ・ディ・ヌープ・ブランシェ


 今此処に(イレ)主と定めし者との(・クルシェス)魂の約定を(・エンドュマ)結び(・アメイン)主の剣となり(ジュアン・ラペーラ)盾となり(ラ・ボゥーチ)目となり(ラ・イグス)耳となり(ラ・オレリス)鼻となる(ラ・ネス)


 この誓いを持って(コンス・マルシス)我の全てを主に捧げる(・スサーミア)】」


 そう言うと同時にフランの胸の魔法陣が輝き、俺の足元の魔法陣もそれと呼応するようにして光りだした。


「しばらく、待ってもらえますか?」


 額に汗を流し息も絶え絶えながらも、こちらの目を見て微笑むフラン。


 少しして光が消えると、フランの胸と俺の手の甲に同じ魔法陣が浮き上がっていた。


「これで、大丈夫です。ありがとうございました」


 そう言い、頭を下げるフラン。


「じゃあ、僕からも1つ何かを返さないといけないね」


「え?」


 ほぇ? と顔を上げたフランに望んでいたものあげる。


「これからよろしくね、フラン」


「え? ふ、らん?」


「あぁ、そうさ、君の名前だよ。フラン・アストラーゼ、僕の3人目の家族」


「ふ、らん、ふらん、フラン、うっ、ううぅぅっ、あぁぁぁっ」


 そう言って地面に蹲って泣くフラン。


「さて、家族であり配下でもある、愛しいフラン。死ぬまでよろしくね」


「は、はい、はい、よろじぐおねがいじまず。ルードざまぁぁ」


 そう言って、笑い泣き顔を見せるフラン。


(あぁ、これから楽しくなりそうだわ)


 俺はそう思った。

 その思いが後々、いろいろな形で叶うとも知らずに。

よ〜やく夏休みになりましたわ。

出来る限りハイペースでいきたいと思います。


BM7,500から急激に減り始めた笑

読者離れが恐ろしい。


ムスコン→息子(son)コンプレックス

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