ショッピング時々晴れ
浚「なぁ、嬉しそうなのがヒシヒシと伝わってくる理由教えてやろうか?尻尾がな…ブンブン振り切ってんだよ。不自然に腰に巻いてるセーターが動いてらっしゃるわけよ。その心は?」
皮肉たっぷりに問いかけてやった。俺達はショッピングモールとかいうリア充様達の巣窟に来ているわけだが、先にも言った様に不自然にセーターが踊ってらっしゃる。暗にそれを鎮めろと伝えたつもりなんだが…
楓「えっ?その心はですねぇ…」
顎に指を当て、可愛らしく首をかしげて考えてらっしゃる。クソ!可愛いすぎる!!
楓「あっ!その心は、嬉しい。ですね!!」
浚「答えになってすらいねぇ!つぅか!良くもいけしゃあしゃあとドヤ顔で言えたなオイ!」
本当にコイツは神様なのか?と疑いたくなる。実は違うだろ…
楓「違うのですか!?」
浚「ちげぇよ!!その心はだなぁ!尻尾を落ち着かせろってんだ!」
楓「あっ、なるほどー…」
彼女は納得し、すぐにセーターは踊るのをやめた。
浚「ったく…隠してる意味ねぇよこれじゃあ…」
気苦労が多いなぁ。と思いつつ、やはり高揚した気分もそこには添付されていた。
楓「それでですね…どこ行くんですか?」
浚「適当に女もんの服屋入るって感じだな」
俺は女のファッションに関しては少々疎いが、なんとかできる自身はあった。
浚「うっし、アソコ行こうぜ」
俺はそう彼女に言って、指さした店へと入って行った。
店員「らっしゃーせー」
相変わらず店員のコレはやる気無さMAXだなと思いながら服を物色しはじめた。
浚「なぁ楓。どんな服が好きだ?この中から選んでみてくれよ」
楓「んー…そうですねぇ…あっ、コレとか気になります!」
浚「ん?」
彼女が手に持っているのは黒の長めの丈のワンピースだ。着物の名残がほんの微かに残る物故だろうか?
浚「おぉ、良いんじゃね?フィッティングしてみるか」
楓「フィッ…フィットネング?」
何言ってんだコイツ?と思いつつそこは華麗にスルー。店員にフィッティングルームの場所を教えてもらい、楓を引っ張って行った。
浚「この部屋の中で着替えてきな。」
楓「えっ?着てもいいんですか?」
浚「おう。いいぞ。むしろ店内の服全て着てもいいまである。」
楓「凄いですねぇ…今の時代は…」
確かに、彼女の場合は途方もない過去から存在しているのだから珍しいだろう。
浚「俺にとっちゃ普通だけどなー」
月並みな事を言って再度彼女にフィッティングを促した。が、問題が発生した。
楓「でもこれ…着方がわかりません…」
浚「あっ…」
全てを察してしまった。察した結果導かれる答えは…そう。俺もフィッティングルームに一緒に入って着させないといけないという事だ。
楓「浚さんが着させてください!」
浚「や!それはほら!色々と問題がね?起こるのよ?俺の息子も怒る…ごほっごほっ…とりあえず!俺は中に入れないっつの!」
楓「でも着方が…」
明らかにしょぼくれてコチラを見つめている。
浚「…その服はな、ただ単に下の方から頭を突っ込んで着ればいいだけだ。紙がついてる方を後ろにしてな。」
ジェスチャーを加えて色々と説明したら分かったらしく、彼女はルームに入って着替えを始めた。
浚「ふぅ…」
一息ついて店のイスに腰掛けてると店員が話しかけてきた。
店員「可愛い彼女さんですね?」
浚「いやー…彼女じゃないんスけどねアレは…ははっ」
しばらく店員と話して居ると、彼女は出てきた。
楓「浚さん!どう!?」
破壊力抜群だッッ!一気にHPが0になった。
浚「お、おう…可愛いじゃねぇか…サイズ感…小さかったり大きかったりの違和感はあるか?」
楓「特に何もないですよ♪」
その言葉を聞き、俺は即決でその服を買い、店を後にした。
楓「着たまま帰れるなんて思いませんでした!」
浚「そうかー…」
俺が生返事で返答してしまった理由。それは彼女の胸の頭にその…プクッとあるからだ。
浚「あ、あのよ!ブラ!ブラも買おうか!」
楓「ブラ…下着のことですか?」
浚「そう!」
説明をしなくて済んで良かったと心底思った。
楓「んー…浚さんが選んでくれるなら…」
浚「無理だから!?流石に!」
流石に下着は自分で選ばして、家に帰ることにした。コレは余談だが、彼女の胸はどうやらDだったらしい。
浚「じゃあ帰るか!」
楓「…ふふっ」
浚「なんだよ?」
彼女の突然の笑いが気になりそう問いかけた。
楓「なんだか…こういうのっていいなって思ったら、つい♪」
彼女は今まで孤独にあの山の中で生きてきたであろう事は容易に想像出来た。故に目頭が熱くなったが、それを振り切るように頭を振り、言った。
浚「これからはずっとこうだ。その度に笑ってるとほうれい線増えちまうぞ?」
楓「なっ!?そういう事言っちゃダメですよ!!………不器用ですね、本当に」
彼女が最後らへんにボソッと言った事は聞こえなかった風を装い改めて
浚「さっ、帰るぞ!」
と言った。