部屋。曇のち…
今回は主人公(浚)と楓の距離が接近…!?2人の心の行方は如何に…ッッ!
楓「はぁー…まだやっぱり外は冷えますねぇ…でもここは暖かくて最高ですー♪」
楓は稲荷寿司を頬張りながら心底幸せそうにそう言った。あれから約1時間後、俺と楓は家に帰ってきた。無論俺の家だ。ついさっき出会ったような奴に誘われても迷惑なのでは?と、誘うという行為をまごついていたのだが、楓はそんな葛藤をいともたやすくクモの巣を破るかのように了承してくれた。
浚「そうだなぁ…ここ最近暖かいなーと思いきや寒くなりやがったりするし、やりにくいよなぁ…服の着合わせとか」
楓「そうですかー?私は常にこの服装なので、そこら辺の事はよくわかりません」
楓はそう言うと俺に着物の袖を振って見せた。なんだこんちくしょー!相変わらず可愛いな!
浚「ん、確かに万年それじゃあな…つぅか、寒くねぇの?冬場とかその格好で」
楓「そうですねぇ…冬とかは自前の毛皮があるので寒くないですね♪…夏場はスゴく鬱陶しいですが……」
楓は御自慢の尻尾を撫でながらそう言い、コレから暑い時期が来るのを恨むかのように外を見た。外の様子はさっきまでとは一転し、暗い雲が空を泳ぎ出していた。
浚「あー…こりゃ降ってくるなぁ…。楓の服買いに行きたかったが、こりゃ叶わんかねぇ….」
独り言の様に呟き、先程からずっと気になっていた事を楓に問いかけた。
浚「なぁ、楓。なんでお前、俺の誘いにオーケーしてくれたんだ?」
楓「え…?何のことですか?」
とぼけているのか?それとも眠気が来てるのか?どちらとも取れない返事が来たので俺はもう少し具体的に問いかけた。
浚「や、だからだな…俺がさっき家来るかって聞いた時、なんでオーケーしたんだ?お前は確かに神様かもしれんが、その以前に女…あーいや、メスだろ?怖いとかねぇのか?」
コレでちゃんとした回答が来るはずだ。そう思いながらも、回答を聞きたいと思う俺と、聞きたくないと思う俺が居た。何故なら、楓がもし本当は怖い。なんて言おうものなら無理矢理連れてきてしまったという罪悪感に冒されるし、反対に怖くない。等と言われたら楓の事をその…軽い女として見てしまうような気がしたからだ。
楓「んー…そう、ですねぇ…。」
数秒だろうか?はたまた数分だっただろうか?どちらにせよ主観的にはとてつもない間が空いた後、楓はいつものニッコリとした顔でこう答えた。
楓「なんというか、確かに普通なら不安になるはずなんですが不思議と不安なんてありませんでしたね…。むしろ…ちょっと浮き足立ったりしてみたり♪…でもそれが何故かと問われると…わかりませんねぇ…。しいて言うなら、信じてたから。ですかねっ♪」
なにかとんでもなく恥ずかしい事を言われてるような気がするが、なるほどよく分からん。しかし先程心配していた様な回答内容ではなくて安心した。むしろ…言わせんな恥ずかしい!
浚「信じてたって…何をだ?」
楓「そりゃ…浚さんは優しい人って事をですよ!」
この言葉を聞いて俺は心底驚いた。何回も言うようだが楓と俺はついさっき会った間柄だ。そんな人間をどうしたら、特に俺みたいな奴をどう見て優しいと判断したのか理解できなかった。そして、何故なんの根拠も無しにソレを信じれるのかも理解が及ばなかった。
浚「はぁ?いや、お前さ…俺のどこをどう見たら優しいとか信じれるわけ?俺が優しいってんならそこら辺の人間は皆ボウズになれるぜ?」
ちょっとした皮肉ジョークと卑下という調味料をぶち込んで吐き出すように言った。
楓「優しいですよ!優しくない人が私みたいな素性も正体もわからない化物同然の生き物に対して稲荷寿司奢ってくれたり、話し相手になってくれたりしません!」
浚「や、そもそも奢ったのはオメェが奢れっつうから…」
楓「優しくない人だったら、奢れって言った時点で断りますよね普通。それに最初から逃げ出す事だって可能でしたし」
ぐっ…確かにそうだ。俺は別に自分を最低な人間として認識させたい等とは思って居ないが、誰かに優しいとか言われるのはとてつもなく、こう…全身がむず痒くなるので必死にそれを否定したかった。また、そうする事で俺は安心できた。しかし、そんな俺にトドメを刺すかの様な、決定的な証拠を突きつけられた。
楓「そ・れ・に!さっきバイク置き場で私がちょーーーーっと姿をくらましただけで、あーーーんなに大慌てで人の往来関係なく私の名前を大声で叫びながら探そうとしてた人が………優しくない訳無いじゃないですか♪」
コイツ実はクソが1億ほど付くSなんじゃねぇのか?そんな事を考えてる俺の顔はさながらタコを茹でたように真っ赤になっている事だろう。
浚「………………わかった…俺の負けだ」
どんな勝負をしてたのかわからないが、そう言うのがやっとだった。しばらく楓は俺の顔を見てニッコニッコと、まるでパンツを履いたカエルを見るかの様な嫌な笑みを浮かべていた。クソッ流石、神。1枚も2枚も上手だ…ッッ!…しばらくして落ち着いた後、さっきどうしても聞き逃しできなかった事を指摘した。
浚「楓、さっき自分の事を素性も正体もわからない化物同然みてぇな〜とか言ってやがったよな?」
楓は何も言わずコクリと頷いた。
浚「それはちげぇ。少なくとも…本当に少なすぎて申し訳ねぇが…俺はお前の事…楓の事そんな風に思った事は無い。俺からしたら楓はほら…アレだアレ。見た目の割にはガキクセぇ綺麗め姉ちゃんでしかねぇよ。」
もはや蔑んでるのか褒めてるのか虐げてるのか区別のつかないセリフだったが楓は理解したらしく
楓「ほら、やっぱり優しいヒ・ト♪」
と答えた。暗い雲が先程まで空を飛び回って居たのに、いつの間にかソレは消えてまた明るい日差しが雲を掻き分けて地上に照りつけていた。俺はそれを好機と見て、楓にありったけの笑顔で訪ねてみせた。
浚「買い物、行こうぜっ!」
続く
毎日投稿を心掛けようとしては居るのですが…やはり文を考えるのは安易ではありません故…どうか広い心で許して欲しいです(^人^)