晴れ。山にて
初めての投稿です。色々な声を、御指導等ございましたら気軽にお寄せ下さい!
ヂリリリリ!…
浚「んぁ…うっせぇ!」バキッ
けたたましく声をあげてる目覚まし時計を起きたての不機嫌に身を任せて思いっきり投げ捨てた後、酷く後悔した。その例の時計は午前11時を指していた。
浚「あぁ!!またやっちまった…また親に怒られる…つぅか殴られる!!」
ついさっきの過去に居た自分を恨みながら本当にそうなるのではないか?と、不安にさいなまれて居たら一本の電話が掛かってきた。
浚「ハイハイー浚ですよーっと」
起きたてだからか、予想外にかすれた声が出た。
雷斗「おうー!お前今日暇だろ?ツーリングにでも行かね?」
電話の主は角田 雷斗。高校1年からの友人だ。
浚「あー…良いんだけどよ、まだそっちまで行けねぇよ?」
雷斗「はぁ!?なんでだよ!?」
どうもコイツは頭が弱いようだ。ていうか弱い。声聞けばわかるだろ俺は気持ちよくさっきまで寝てたんだよクソッタレ。
浚「や、起きたてだし準備もあるし、そっち行くまで時間かかるのは当たり前だろ」
と、多少の苛立ちを孕んだ言葉を投げかけた。
雷斗「あ、そか。了解〜!んじゃ、待っとくわ!」
彼は何かを察したのか、さっきまでの辛気臭さとは一転して電話を切った。
浚「っし、じゃあ支度すっか」
1人でに誰も居ない部屋でそうつぶやき、支度をした。
場所は変わり雷斗の家にて…
浚「おーっす」
もうコイツとはなんだかんだで1年半程の付き合いをしている。故に家も勝手に出入りする訳だ。
雷斗「んぉ…?おお!来たか!…来てもらって早々悪いけどな…俺今日ツーリング同伴できねぇ!すまん!」
最初、俺はコイツが何を言ってやがるのかわからなかった。だって早口なんだもん…。しかし、すぐに理解できた。こいつマジ死ねよ。
浚「はぁ!?オメェが来いっつったんだろが!?どういう了見だゴルァ!」
起きたての体に鞭打って来たのにこの仕打ち。怒らずには居られなかった。
雷斗「や、マジゴメンて!でもな?いきなり学校来いとか言われてよォ…お詫びにとは言わんがバイク今日1日貸してやる!許してちょんまげ!」
俺は免許は持ってるものの、親に反対されてバイクは買っていない。だからいつも2台バイク持ってるコイツに借りてツーリングしていた。今日は特にもう用事も入らないし、何もしないで居るのも暇なんでこの取り引きに許諾した。
浚「しゃあねぇ。どうせ暇だしそれで許してやらぁ」
俺は借りたバイクで山に行く事にした。天気も良く、走ってたら涼しい風が体をすり抜けていった。心地よい疾走感に身を任せて走っていると妙に気になる鳥居を見つけた。
浚「あ?なんだアソコ…あんなとこに鳥居なんざあったけな…?」
1度気になったものは、やはりどうしても気になる。俺は道の端にバイクを停め、木々の中にカモフラージュするかの様に立っている鳥居をくぐり奥へ進んだ。
浚「おぉ…なんつぅか、スゲェとしか言えねぇな」
俺は童心に帰り、獣道をワクワクしながらズンズンと奥へ進んでいった。やがて、ボロボロに朽ち果てた神殿(?)らしき所にたどり着いた。
浚「もう管理者やらは居ない感じだなここ。管理者居たらこんな風に朽ち果てたりしねぇだろうしなぁ…」神殿らしきところの段差に腰をかけていると、太陽の暖かさとそれを冷ますかのように吹く風もあいまみえて眠くなってきた……
浚「ん…?あぁ、寝ちまってた、のか?」
しばらくボーッとしていたが、ふと違和感に気付いた。この木の上で寝てたら本来は頭が痛いはずなのに痛くない。むしろ何か柔らかい。何故だ?と考えを巡らしていたら「もし?」と声を掛けられ、声のした方…つまり上を横向きの体制のまま見上げた。
綺麗なお姉さん「フフッ」(ニッコリ)
何が起きたのか理解できなかった。何故こんな美人に上から覗きこまれいるのかも、何故こんな所に人が居るのかも…。
綺麗なお姉さん「あまりに気持ち良さそうに寝てたから、もっと気持ち良く寝て欲しくて思わず膝枕しちゃった♪」
このセリフを聞いてようやく現状把握ができた。つまり…うとうとして寝る→このお姉さんが膝枕→目覚める→今ここ。と言う事らしい。
浚「え?あ、あぁ、そりゃどうも…ていうか何でこんな所に居るんです?」
もしかしたら不躾な質問だったのかも知れない。彼女は頬を膨らまして抗議した。
綺麗なお姉さん「なんでって…こういう者だからです!」
そう言うや否や彼女は頭を指さした。なんとそこには耳が生えていた。本来無いはずの耳が。
浚「えっ…?あぁ!コスプレか!いやはや…良く出来ているなぁ!」
そう言って彼女の耳を引っ張った。
綺麗なお姉さん「い、痛い!やめてよ!」
彼女の悲鳴に似たその声と、引っ張ったのに取れない耳に驚愕して手を引っ込めた。
綺麗なお姉さん「もう…いきなり何すんのよ乱暴ね!」彼女は怒ってるのか困ってるのかわからないような反応をした。
浚「い、いや…まさか本物だとは思わなくてな…すまんな?えーっと…」
名前がわからなくて言い淀んでいると、それに勘づいたかの様に助け舟を出してくれた。
綺麗なお姉さん「楓よ。名前」
浚「ん、そうか。すまんかったな楓」
俺は謝ってからしばらく考え込んでいた。何故なら普通、頭から耳が生えているなんてありえるだろうか?いや、ない。しかしながらそのイレギュラーな存在と自分は対峙している。ありえないのに居る。その様な矛盾だらけの中、俺は突っ立っていた。しかしその思考は突如として彼女の一声で断ち切られた。
楓「貴方の名前は?」
浚「え?あぁ、俺の名前ね…俺の名前は浚だ。」
いかにも、女性経験無いと丸分かりの返事だ。自分でも嫌になってくる。
楓「そっか!ヨロシクね!浚♪」
やめろよ!勘違いしちまうだろうが!…などと浮ついた事を考えていたが、実際彼女の素性正体は解らず仕舞いだ。一体彼女は何者なんだ?と考えていたら彼女は俺の考えを見透かしたかのように一言…
楓「んー、私は…一応神様?的な!」
…………嫌だなこんなゆるふわキャピキャピな神様。日本終わるぞコレ。
浚「え?神様?んー、マジか…や、まぁもうこれ信じるしかねぇよな…耳取れなかったし」
楓「そうだよー♪信じるしかないよー!…あっそうだ!」
浚「あ?なんだよ?」
楓「さっきさー、私の耳引っ張って痛い思いさせたよね?」
なんだコイツまだ引っ張ってやがるぞ…でも確かに悪いことはしたよなー。なんて思いもあり正直かつ素直に認めた。
浚「ん、あぁ。そうだな。すまん」
楓「じゃあさー…私に何か奢るのだ!」
……あ?いや、確かに悪いことしたよ?でも奢る必要性なく…いや、ありますね。ハイ。
確かに暴力(?)をふるって何もしないってのも酷い話だな。と思ったので快諾した。
浚「あぁ!いいぜ!稲荷寿司でも油揚げでもキツネうどんでもなんでも奢ってやらぁ!」
楓「やったー♪」
そうハニカんだ彼女の肩には桜がヒラリと飛び乗った。今思えばこれが全ての始まりだった。これがきっかけであんな事になるとはこの時の俺は予想だにできなかった。
続く