表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

初デート

 会社近くのスタバは、最寄駅とは反対方向にある。ランチの時間帯はすごく混むけれど、この時間だとお客さんもまばらだ。

私は課長よりも先にオフィスを出て、1人でスタバのカウンター席にいた。小さいサイズのラテを飲みながら、ほっと一息。

…今日はいろんなことがあったなあ。

あれって、告白に入る…んだよね。だとしたら、私は課長とつきあってるってこと…?いや、でもつきあって、とか言われてないしな。どうなんだろう…。

そんな自問自答を繰り返していたら、

「おまたせ」

いつのまにか課長がやって来ていて、カウンターに手を置いた。突然の至近距離に、驚きを隠せない。

「あ…、お疲れ様です」

「皿池さんもお疲れさま。…じゃあ、行こうか」

「はい」

気に留める暇もないくらい自然に手をとられ、一緒に店を出る。

私の歩く速さに合わせて、課長は少しゆっくりめに歩いてくれた。なんだか、慣れてるな。

「どちらへ行くんですか?」

「俺の行きつけのお店に行こうかなと思ってる。イタリアン、好き?」

「はい!大好きです」

「ならよかった。カジュアルなところなんだけど、けっこういけるんだ」

「へえー!楽しみです」

さっきまでいろいろ考えてたのに、課長と話しだしたらきれいに忘れてしまった。

私、ほんとにこの人のことが好きなんだな…。

 

 課長が連れてきてくれたお店は、それほど高くないけれどパスタが本当に絶品だった。狭い路地にあって、隠れ家的な感じ。店内も落ち着いていて、安心して食事ができる。静かなジャズが流れていて、店主のセンスの良さがうかがえる。

「ほんとにおいしいです!このバジルソースも香りが強すぎないし」

「気に入ってくれてよかったよ」

そう言いながら、私が食べるところをにこにこしながら見ているけど…、課長自身はあまり食べていないようだった。

お皿の上のパスタは、まだ半分も減っていない。

「課長、どこか具合でも悪いんですか?あまり召し上がっていないようですけど…」

「ああ、気にしないで。俺はもともと少食なんだ。でも時間かけたら全部食べられるし、大丈夫だよ」

「だからそんなに細いんですね。ほら、見てください。腕なんて、女のわたしとそんなに変わらないですよ」

テーブルの上に乗っている課長の腕の隣に、自分の腕を置いてみる。

一回りも違わない太さに、自分で言っておいてむなしさを感じた。

「でも、こう見えて力はあるから。鍛えてるし、…脱いだらすごいよ?」

少し意味ありげな笑みを浮かべる課長。

私は無意識のうちにいろいろ想像して、赤くなってしまった。

「も、もう…。やめてください、そういうの」

「どうして?プライベートだから、セクハラにはならないだろ?」

「だって…、そんな、つきあってもいないのに」

恥ずかしがりながらぽつりと言うと、課長の目が点になった。

「え?」

「…えっ?」

お互い、黙ったまま見つめあう。

「…俺たち、今日からつきあい始めた…んだよね?」

「え!?」

「俺はそうだと思ってるんだけど、違うの…?」

「えっ、あ、あの…、でも、私、課長と釣り合わないし…。…それに、総務の森山さんとつきあってるって……」

「え、俺が?違うよ。森山とつきあってるのは、営業部の佐藤。2人とも同期だから、よく知ってるよ」

「えっ、そうなんですか?ちょっと耳に挟んだんですけど、お2人で出かけてたとか…」

「森山と2人で?…ああ、日曜に偶然会ったときのことかな。ちょっとカフェに行っただけだし、べつに何もないよ」

森山さんとつきあっているわけではないということを知って、少しだけほっとした。けれどもう1つ、引っかかっていることがある。

「……でも、課長は私のこと、気になるってだけなんですよね…?その、好きとかじゃなくて…」

課長は狼狽えながら答える私を見て、ふーっと息を吐き出す。

「…今から話すこと、引かないで聞いてくれる?」

そして私はそのあと、課長の過去の恋愛を知ることになる…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ