クリスマス企画☆願わくば2人きりで
―――12月24日、木曜日。
今日のために、俺と凛は仕事を調整しながら頑張ってきた。何て言ったって……2人で過ごす、初めてのクリスマスイブだから!
さすがに2人で定時退勤するとあからさまだから、少し時間をずらして、いつものスタバで落ち合うことになってる。今夜が楽しみで仕方なくて、ついハミングしてしまいそうだ。
いい大人とはいえど、みんな家族や恋人と過ごすのが楽しみなのか、うちの部署は朝からどことなく浮足立っているような雰囲気だった。
ちらりと出入り口のほうに目を向けると、隣の席の阪本くんと何やら相談しながら、せわしなくパソコンを操作している凛の姿が目に入った。仕事してるとき、凛は目つきがきりっとしていてクールな印象だけれど、休憩中は本当に朗らかで可愛い。そんなギャップが、ますます彼女を人気者にしてるんだろうなあ。
なーんて、つい、惚けていたら、トントン…と誰かに肩を叩かれる。
突然のことに驚いて、はっとしつつ真横を向くと、すぐ隣に部長が立っていた。
……ちなみに言っておくと、うちの部長は単身赴任中。なので、おそらく今夜も1人なのだ。
「あっ、すいません、ちょっとぼんやりしてしまって…」
慌てて手元の書類の束を整えていると、部長はにっこりと笑う。
―――このとき、俺はなんとなく嫌な予感がした。
「吉川くん。今夜、空いてるよね」
「…えっ?」
「独り者同士、たまには飲みに行かないか」
そう来たか!たしかにまだ結婚はしてないけど!
部長から直々に誘われることは少ないし、今までも部長とサシで飲みに行ったことはない。それに、気を遣う間柄だからこその断りにくさもあるよなあ。でも、今夜だけは…!
「え…、えっと、今夜はちょっと……」
「ん?なにか予定があるのか」
だめだ…。
顔は笑ってるのに、ひしひしと伝わってくる重圧がハンパないぞ。どうするんだよ。
困っていたら、話を聞きつけた後輩社員・神谷が見かねて声をあげてくれた。
「それなら、予定ない人みんなで飲みに行きませんか?せっかくだから、人数いた方がいいですよね」
「そうか?じゃあ、そうするか」
部長も納得してくれた様子。サシは免れたけど、結局飲みに行くことにはなっちゃったなあ。これって、一種のパワハラだよー。
さっそく神谷が「今日、飲みに行く人~」と陽気な声をあげながら参加者を募っている。部長の目を盗んで、凛に謝罪LINEでも送っとこうか…なんて考えながら、ふと目線を上げると。
数名の社員に混ざって、なんと、凛も手をあげてくれていた!きっと、俺に合わせてくれたんだな。凛が手をあげてるのを見て、急にあげだすやつがいるのは気になるけど。
申し訳なく思っていたら、手元のスマホがブルッと震えた。
『凛:大斗さん、部長が1人で過ごすこと考えたら、断れなかったんだよね?
大斗さんのそういうとこ、嫌いじゃないよ^^
でも、なるべく早めに帰って、2人でもクリスマスしたいなあ~』
もう、純粋すぎて…俺には目も当てられないよ。でも考えてることが同じだから、すごく嬉しい。
再び顔を上げると、凛がこっちを見ていて、こっそりと微笑みかけてくれた。
そんな優しい彼女に微笑み返し、俺は了承の返事を送るのだった…―――。
~Fin~




