番外編⑤~大斗のプロポーズ大作戦・後編~
『土曜日の夜、空けておいてね』
ゆうべ、大斗さんに突然言われた。今週土曜は私の誕生日。
お昼過ぎに仕事で外出する用事があるけど、もともと夜は空いていた。お互い忙しいんだし、もし予定があわなかったとしても仕方ないと思ってたけど…、嬉しい。本当に。
待ち合わせは駅前の本屋さん。一体、どこにつれてってくれるのか、今からとっても楽しみだ。
――そして、土曜日。
俺は仕事の後、諸々の準備を大急ぎで整えていた。
まずは自分の身支度。会社帰りに、最近サボりがちだった散髪に行った。その後、一度家に帰り、持っている中で1番上質な紺色のジャケットに群青色のセーター、ストライプシャツを合わせ、下はグレーのパンツを選んだ。以前、凛と水族館で買った、お揃いのネックレスもしっかり着ける。
その上から、会社にも着て行っている黒いコートを着て、厚手のストールをくるくると巻いた。凛がもし寒そうにしていたら、肩にかけてあげよう。
そして、ジャケットの右側のポケットには…「あるもの」が入った小さな箱。
よく“給料3か月分”なんて言うけど、俺の場合はもう少し値が張った。一生に一度のことだから…、妥協したくなくて、本当に凛が気に入ってくれそうなものを選んだつもり。
全ての用意が済み、ふと時計を見ると…、もう17時!!やっばい。
…あ、新刊が出てる。
本屋さんにゆっくり立ち寄るのも久しぶりで、待ち合わせの時間まで店内をゆっくり見て回っていると、お気に入りの小説の新刊を見つけた。このシリーズは大斗さんもずっと読んでいて、我が家には途中まで同じ巻が2冊ずつある。一緒に暮らし始めてから出た巻だけ、1冊。そんな些細な事でも、一緒に暮らしてるんだなあって実感がわいて…思わず笑みがこぼれるほど嬉しい。
きっと大斗さんはまだ気づいてないだろうし、買っていこうかな。
1冊、手に取ろうとしたら…、後ろから誰かに抱きつかれた。その瞬間、私の大好きな香りがふわりと漂う。
「凛、おまたせ」
「大斗さん!…あ、そうだ。あのね、いつもの小説…」
もう一度、本に手を伸ばそうとしたら
「あんまり時間ないから、行こう」
「あ、うん…」
大斗さんに体ごと引かれ、ちょっと寂しい気持ちで本屋さんをあとにした。本は、また今度でいいか。
大斗さんとお喋りしながら着いたのは、とある高級フレンチレストランだった。
いくら誕生日だって言っても、ここはあまりにも…。
「ねえ、こんな高いところじゃなくていいよ」
気後れしてしまって、大斗さんの袖を引っ張った。大斗さんと2人で過ごせるなら、私はどこだってかまわないのに。
格好だって、仕事だったから一応きちんとはしてるけど…、ドレスコードとかないのかな。
「いいの。たまにはカッコつけさせてよ」
そんな私の気持ちにも気づかず、大斗さんは私の肩を抱いてお店に入っていく。




