番外編③~2人の日常~
『今日、私も定時で帰れそうだよ!いつものとこで待ち合わせしよ^^』
凛からのLINEを見て、自然と心がホクホクしてくるのを感じた。
2人とも早く帰れる日は、エントランスのベンチで待ち合わせ。そこからスーパーに寄って、一緒にうちへ帰るのだ。
結婚する前も一緒に住んでたけど、さすがに2人そろって出勤・退勤というのは遠慮していた。けれど、結婚してからはまわりも公認だし、当たり前のように一緒にいるようになった。冷やかされることはあっても、悪く言う人はいない(と思う)。
エントランスの白いベンチに座って、凛が来るのを待つ。
ポケットからスマホを取り出すと、小さな青いランプが点滅していた。
それは母さんからのメールで、凛にも同じものが送られているようだった。『2人とも、来週土曜日は空けておいてね』とだけ書かれている。言葉足らずなのはいつものこと。
「お義母さん、何の用事だろうね?」
「わっ!」
いつの間にか凛がやって来ていて、後ろから俺のスマホを覗き込んでいた。
「おまたせ!」
「母さんはたぶん凛とお茶したいだけだよ。っていうか、人のスマホ勝手に見ちゃダメなんだよー?」
「なあに、やましいことでもあるの?」
凛が笑いながら言う。…わかってるくせに。
「ないよー。なんなら、ぜーんぶ見てもらっても平気だし」
「つまんないのー」
先に歩き出した凛を追いかけて、俺も隣を歩き始めた。
会社からスーパーまでは、坂を上って10分ほど歩く。俺は会社帰り、凛と一緒に歩くのがとても好きだ。今日も1日頑張ったなーって気にさせてくれる。
「ねえ、今日の晩ごはん何にする?昨日は鮭の香味焼きだったよね」
「美味しかったなあ。また魚もいいな」
「じゃあ、お魚にしよっか。それから…、冷蔵庫にマッシュルームがあるから、卵と合わせて炒めようかな」
「いいねー」
いつも、こんな感じで夕飯のメニューが決まっていく。凛と一緒に暮らし始めてからは、ほぼ毎日自炊している。一緒に料理するから腕も上がるし、前は要注意数値のあった健康診断も、今ではどれも正常値だ。
「あー!新商品だって、苺味!」
お菓子コーナーに寄ると、凛の好きなお菓子の新商品が出ていた。このお菓子があるだけで、凛はご機嫌になる。3箱ぐらい買っていってあげると、凛は「太るよー」なんて言いながらも、嬉しそうにしてたりする。
「あ、ほんとだー。買う?」
「でも太っちゃう」
ほら、また…。
もうちょっと太った方が抱き心地いいと思うよ、なんて言ったら、きっと赤い顔して睨まれるんだろうな。
俺が考えてることがわかったのか、凛はカゴを奪い取ってレジへ向かおうとする。
「あっ、ごめんって!待ってー」
俺はどさくさに紛れてお菓子の箱を1つ手に取り、凛の手からカゴを取り返しながら放り込んだのだった。




