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同期の絆

 凛と全く連絡がとれないまま、月曜日を迎えた。

家に行ってもいなくて、何度電話しても出ない。掛け直しても来なかった…。

どうしよう。相当怒ってそうだな…。どう言えば、信じてもらえるだろう。

不安な気持ちのまま出社すると、凛はいつも通りデスクの整理をしていた。企画部の誰よりも早く出社して、仕事の用意や掃除をするのが彼女の日課だ。

俺は、意を決して話しかける。

「…おはよう。あの……」

「おはようございます、課長」

凛の冷たい声色を聞いて、俺は血の気が引いていくのを感じた。以前の、付き合う前の凛に戻ってしまっている…。

最近は出社すると、凛が可愛らしい笑顔と共に挨拶してくれるのがすごく楽しみだった。

「課長、どうかしたんですか?」

俺にそう話しかけてきたのは、凛の同期の阪本くん。

同じエレベーターに乗っていたのか、彼の後ろから数人の社員たちがぞろぞろと入ってきていた。

「え?…あ、なんでもないよ」

俺たちがつきあっていることを公表するのは、俺としてはもちろん構わないけど、凛はすごく気にしている。だから、みんなが見ている前で凛に気安く話しかけることはできない。ましてや、土曜日のことなんて…。

 

 「なあ、課長となんかあった?」

今日のお昼休みは、同期の加奈子(営業部)と阪本くんと一緒に、屋上でランチ。

少し風が強いけど、暑くなってきた時期だからちょうどいい感じだ。

「え?べつに何もないよ。…なんで?」

「だって、なんか2人とも元気ないし、今朝だって課長、お前に何か言いたそうだったじゃん」

見てたんだ、阪本くん。

「そうかな?気づかなかったけど」

「えっ、なになに?凛と企画部の課長、いい仲なの!?」

加奈子が急に食いついてくる。

同期の1人・沖田加奈子とは、就職活動中にこの会社の最終面接で出会って、そのころからなんだか熱い子だった。入社後も、営業部で仕事一筋だと思ってたけど、こういうところはやっぱり女子だと思う。

「ちがうよ、ほんとに何もないって」

「俺ら同期なんだしさ、べつに言いふらしたりしないし大丈夫だよ。ほんとに何かあるなら味方になるし!」

「そうだよ!いつでも相談のるよ?」

2人の優しさに、涙が出そうになる。

先輩たちとは違って、面白がっている感じが全然ない(と、信じてる)。

「2人ともありがとう…。……あのね…、」

私はもう1人では堪えきれなくなっていたから、2人につい本当のことを話してしまったのだった。

 「そうだったんだ…。吉川課長と森山さんがねえ」

「ほんっと、許せねえな。ちょーっと仕事が出来て顔が良いからって、部下の気持ちを踏みにじるなんて…。人として最悪だよ。もうこのまま別れた方がいいって」

阪本くんが手に持っていたココアの缶をぐしゃっと潰した。彼は甘党なのだ。

ていうか、それスチール缶だよね。すごいな。

「うん…。やっぱりそうだよね」

思わず俯いた私の顔を、加奈子が横からぐいっと覗き込む。

「えっ。凛、もしかして、まだ吉川課長のこと好きなの?」

加奈子の言葉がぐさっと突き刺さる。

課長のことは、『まだ』っていうより…、『ずっと』好きだから。

あんなことを聞かされても、課長を嫌いだなんて思えない。ただ、傷ついただけ。

「……そんなすぐ嫌いになれたら、悩まないよ。本気で好きになったんだし」

「そうだよな…」

「あ、そうだ!今夜3人で飲みにいかない?凛を応援する会!」

加奈子が突然大きな声を出した。

この3人は入社以来ずっと仲が良くて、これまで一緒に飲みに行ったこともしばしば。でも、会話のほとんどが仕事の愚痴だったりする。

「いいねえ。企画部も今度の仕事の山は越えたし、そんなに遅くなんないだろうしさ」

阪本くんも同意したので、私も「うん」と頷いた。

 

 2人に話してすっきりしたおかげで、午後からの仕事には集中できた。忙しいから、余計なことを考えずにすんだし…。

課長から『今夜会いたい』ってLINEが来ていたけど、開かずにそのままにしておいた。

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