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苦情がきました

「あ、はい……はい……すいませんでした。次から気を付けますんで……はい」

 賢太郎は玄関の扉を閉めた。なぜ今賢太郎が玄関にいるかというと、忍とお姉さんが騒ぐせいで隣の住民から苦情が来たからである。つまり賢太郎はついさっきまでわざわざ苦情を言いにお越しくださったお隣さんに頭を下げていた次第である。

 暴れたのは俺じゃないのに、とちょっとムカムカしながら踵を返してリビングに戻る賢太郎。リビングに戻るといってもワンルームなので振り返ればそこがリビングなのだが。

「もういいよ」

 と賢太郎はベッドの前に立って言う。ベッドの上で不自然に毛布が膨らんでいる。

 毛布の中から忍がひょっこり顔を出す。お隣さんがチャイムを鳴らした時に賢太郎が咄嗟に「隠れて」と言ったのだが、果たして隠れる気があるのか無いのか、何故か忍はベッドの毛布にくるまったのだった。

「申し訳ありません賢太郎様、私のご近所への配慮が至らないばかりに」

 忍は亀のように顔を出したままションボリしている。

「うん、まぁ別に……」

 まぁ反省してるなら、と賢太郎はポリポリ頭を掻きながら曖昧に答えた。また切腹だの何だの騒がれても困るし、とまでは言わない。

「さすが賢太郎様! お心が広うございます!」

 感謝感激雨霰かんしゃかんげきあめあられ、と忍は顔を輝かせて賢太郎を見上げる。

 その忍の下からお姉さんの不満気な声。

「ちょっと忍ちゃん。そろそろ降りてくれないかなぁ」

 姿は見えないがお姉さんは毛布の中で忍に組伏せられている。つまり前話の終わり際に始まったバトルは忍の勝利だった訳だが、今現在そのバトルシーンは省略されている状態なのである。決して話が飛んでいる訳では無いので安心して欲しい。

 毛布がモゾモゾと動く。どうやらお姉さんが抵抗を試みているようだ。しかしそれも忍の「ていっ」の一言で封じられてしまう。

「さて賢太郎様、この女いかが致しましょう」

 毛布亀の忍が賢太郎を見上げて言う。

「うーん……」

 ここで賢太郎が例によって立ったまま考え込んでしまったので、その間に少し時間を巻き戻したいと思う。

 どこまで戻るかといえば、もちろん前話の終わりである。



「もう穏便になんて済ませないわよ」

 さて話は巻き戻って前話の終盤。両手に計6本の針を構えたお姉さんと、髪の毛1本を右手に余裕全開の忍。ついでに書くと忍の後ろに尻餅ついたような格好の賢太郎。

「賢太郎様、決して私の前に出ないでくださいね」

 お姉さんから目を離さず忍が言う。

 言われなくとも賢太郎は前に出る気はない。そもそも「針2、3本で済ます」だとか「髪の毛1本で充分」だとか、そんなバトル漫画のような展開に参加しろと言われても無理な話である。

「えっと……忍取さん、本当に大丈夫なの?」

 万が一でも美少女が串刺しになる姿など見たくはないのだが。

 しかし賢太郎の心配を尻目に忍は余裕綽綽よゆうしゃくしゃくで答える。

「ご心配には及びません。昼間こそ捕らえ損ねましたが、本気でかかればあの程度の者はものの数秒で充分でございます」

 本音なのか挑発なのかは分からないがとにかく凄い自信である。

「年上を敬おうって気はないのかしらこの子は」

 当然ながらお姉さんは誰がどう見ても怒っている。今にも両手に構えた針を投げてきそうなので賢太郎としてはあまり刺激しないでやって欲しいのだが。

「年上?」

 しかし忍の声にはまたしても挑発というか馬鹿にするような色合いがあった。そのうえ鼻で笑うのだからこれはもうお姉さんでなくとも怒るだろう。

 そして続けて言った忍の台詞が開戦の合図になった。

「ああ失礼、確かに年上のようですね。おばさん」

 おまけに嘲笑。

「……私まだ二十歳なんだけ、ど!」

 ど! と同時にお姉さんが右手を振って針を投げた。

 今更ながらこの部屋はワンルームである。いくら互いに反対側の壁に立っているといってもそう距離があるわけでもない。そんな距離で針を全力で投げられたら賢太郎なんかではビクッと体をすくませる間もなく串刺しである。

 しかし忍は平然としなやかに、かつ素早く右腕だけを動かした。賢太郎からは「動いた」というのが分かっただけでその動きは殆ど見えていない。

 しかしチャッチャと金属の音がしたという事は。

「これで終いでしょうか?」

 忍の手には3本の針が。

「まだよ」

 お姉さんが予備動作無しに跳躍し姿を消した。

「え? え?」

 お姉さんを見失い賢太郎は不安気に辺りを見回す。どこから針が飛んでくるか分からない。忍はともかく賢太郎は飛んできた針を防ぐ自信などないのだ。

「賢太郎様、狼狽えることはありません」

 背を向けたままの忍が言う。右手に握っている針の本数が増えているので、賢太郎の気付かぬ間にまた針が飛んできていたらしい。

「いや忍取さんは大丈夫だろうけど俺狙われたら……」

 賢太郎はキョロキョロとお姉さんの姿を探す。

「ご安心を賢太郎様」

 いやだから「ご安心を」と言われても……。

 忍が続けて言った。

「勝負はついております」

 へ? と賢太郎が間抜けな声を上げてから少し遅れて、ベッドの上にお姉さんが落ちてきた。その震動でベッドどころか床までちょっと揺れる。ボォンと音が響いているのでこれはもう間違いなく近所迷惑である。

「ちょっと忍ちゃん……あなた私になにしたの」

 立ち上がろうとするお姉さんはどうにも力が入らないらしく、小鹿のようにふるふると脚を震わせている。

 忍がチャラチャラと両手で針を弄びながらお姉さんに歩み寄る。

丹田たんでんに針を打ちました」

 へにゃり、とベッドに崩れ落ちるお姉さん。

「針……?」

「正確には気を込めて硬くした髪の毛でございますが」

 針を左手に握った忍は腰を落とし、ベッドの上のお姉さんをゴロリとひっくり返した。そしてお姉さんのヘソの辺りから何かをつまみ上げる。

「いつの間に……」

 それはまさしく1本の髪の毛であった。忍はシャツを突き抜け下腹部に刺さっているそれを引き抜いた。

「丹田は気や力を溜めるかなめ。その胆田に異物、例えば他人の気を流し込まれると気力を溜める事が出来ず徐々に力が抜けていってしまうのです」

 忍はお姉さんのお腹から引き抜いた髪の毛を自分の顔の前にぷらんと垂らして続ける。

「さて、これをいつ貴女に打ち込んだかと言うと」

 淡々と続ける。

「貴女が挑発に乗って針を投げた瞬間でございます」

 そういえばお姉さんが『どっ!』と言って投げた針を忍は右手で掴んでいた。あの時すでに忍の右手には髪の毛は無かったのである。

 悔しそうに忍を見上げるお姉さん。

 それを忍は立ち上がって見下ろし、ふふんと不敵な笑みを浮かべた。

「言ったでございましょう。貴女ごとき二流は髪の毛1本で充分だと」

 そして忍はクルリと賢太郎を振り返って

「賢太郎様!」

 とまぁ得意満面弾けるような笑顔である。

「ご覧なさいましたか賢太郎様! ご覧なさいましたか!」

 跳び跳ねそうな勢いで忍は相変わらずへたり込んだままの賢太郎に詰め寄る。あまりの勢いなので賢太郎は「うわわ」と仰け反って壁に後頭部をぶつけた。

「いてて……、いや、うん……まぁ、見てたけど……」

 頭をさすりながら曖昧に答える賢太郎に屈んだ忍がずずいと顔を寄せる。

「で、どうでございましょうか!?」

 どう、と言われても。

 賢太郎を見上げる忍の目はもう明らかに褒めてもらう気満々の輝きである。

 思いっきり顔を寄せられてドギマギして顔が赤くなってきた賢太郎はとにかく忍の要求に応えるしかなかった。

 なんだか照れくさいので視線を逸らしながら。

「えっと……その……凄かったね」

 忍がガバッと立ち上がり拳を突き上げて叫んだ。

「感無量!」

 我が生涯に一片の悔いなし、みたいな事を叫びそうなポーズだが、どうやらこれが忍の喜びのポーズらしい。

 それはともかくマンションなのであまり大声を出されると困るのだ。

「お、忍取さん、もう少し静かに……」

 ピンポーン。

 言わんこっちゃない。

 忍がキョトンとした顔で玄関に顔を向ける。

「こんな時間に誰でございましょう?」

 こんな時間に大声を出されて迷惑している方だろう。

「ちょ、ちょっと待ってて。あ、そうだ隠れて」

 部屋に異性が二人もいると今後あらぬ噂をたてられそうな気がした。

「承知!」

 忍は即座に返事をし一跳びで音もなくベッドに乗ってお姉さんごと毛布にくるまった。

 それを横目で見て賢太郎は玄関に向かう。

 と、ここでようやく冒頭に繋がるわけである。



 さて話は戻って賢太郎。忍が捕らえたお姉さんをどうしたものかと考える。

 警察に突きだしたところで忍者だの巻物だの信じては貰えないだろうし、そもそもそんな漫画のような話を真剣にするのも恥ずかしい。

 まぁとりあえずは。

「賢太郎様、とりあえず当初の目的通り誤解を解くのはいかがでしょうか?」

 忍の言う通りである。

「あー、まぁそれが良いのかな」

 賢太郎はモヤモヤ答えて腰を降ろす。座るとベッドの上で毛布亀になっている忍と予想以上に顔が近くなった。ちょっと近すぎたなと思って尻をずりずりベッドから、というより忍から距離をとる。ベッドの頭の近くに置いている小さい丸テーブルまで移動。

 ここなら緊張せずに話せるかな、と思いながら顔を上げるとこちらを見る忍と目が合った。

「んふっ」

 忍がニッコリ笑う。せっかく離れたのに賢太郎はまたドキッとして視線を逸らしてしまう。

「なに、忍ちゃん賢太郎くんに色目使ってるの?」

 毛布の下からお姉さんの声。

「色目だなんて失礼な。私は純粋でございます。賢太郎様を想うがゆえに自然と笑みがこぼれるというものです」

 賢太郎はどう反応して良いか分からず顔を逸らして聞こえないふりをした。そういえば今何時かなぁ、という具合に。まぁ顔が赤くなっているから照れているのはバレバレなのだが。

 バレバレの聞こえないふりをしているのだから放っておいてくれたら良いのに、それが見えていないお姉さんは賢太郎を会話に巻き込んだ。

「なにが純粋よ。賢太郎くん騙されちゃ駄目よ。この子さっき何してたと……」

「ていっ」と忍が毛布の中で何かやったようだが、お姉さんはせめてもの抵抗なのか強引に続けた。

「賢太郎くんこの子ね、隠れてる間ずっと」

「ていっ」

「この子」

「てりゃっ」

「こ」

「てりゃー!」

 と忍の声が段々大きくなってきたので賢太郎は流石に注意する。ついさっき苦情がきたばかりなのでこれ以上は非常に不味い。

「忍取さん忍取さん、悪いけど静かにしてよ。さっき怒られたばっかなんだから」

 賢太郎に言われては忍も大人しくする他ない。「申し訳ありません」と顔を伏せる。

 その隙にお姉さんがサラッと言う。

「この子ずっと枕の匂い嗅いでたのよ」

 あ、と忍が声を上げても時すでに遅く、賢太郎はバッチリお姉さんの台詞を聞いていたし聞こえないふりをするのも無理な状況であった。

「変態よこの子、変態」

 まぁお姉さんに言われるまでもなく一目見た時から変だとは思っていた賢太郎。しかしこれは怒るべき事なのかよく分からない。もちろん喜ぶ事でもない。

「うん、まぁ……やめてね?」

 とりあえずそう言っておく。

「ち、違います賢太郎様!」

 と慌てたように言う忍は困り顔を真っ赤にしていた。

「私は決して卑しい気持ちではなく、万が一賢太郎様が拐われた場合に備え匂いを記憶しておこうと……」

 警察犬のつもりか。

「嘘よ嘘」

 割って入るお姉さん。

「だいたいベッドに隠れるのが変なのよ。私たちは気配を消せるんだから一般人相手なら姿を隠す必要なんて無いんだから」

 そういえばそうである。

「賢太郎様ちがいます! この忍取忍にやましい気持ちなど一切……ええいこの女狐め! 賢太郎様をたばかるか!」

 毛布がフルフルと震えている。どうやら毛布の下で何かやっているらしい。

「謀るも何も事実じゃないの。ていうかちょっと忍ちゃん本気で痛いんだけど」

 お姉さんが本当に痛そうな声だったので賢太郎は「ちょっと忍取さん……」と忍を止めようとしたが、ふと顔を上げた忍の目がウルウルしていたので思わず止まってしまった。

「賢太郎様……信じてくださいませ。忍は本当に純粋に賢太郎様を想っているのでございます。忍は決して変態なんかではございません……」

 と言いながら段々顔を伏せていくので賢太郎はもうオロオロするしかない。彼女なんて出来た事の無い賢太郎が落ち込む女の子の慰め方なんて知っているはずが無いのである。

「え、えっと……」

 忍は本当に純粋なのかもしれない、と賢太郎は思った。少々……というよりかなり変わってはいるが、落ち込む時には落ち込み、喜ぶ時は喜んでいる姿はまるで子供のようだった。まだわずか数時間の付き合いではあるが、賢太郎は忍が素直に感情を表に現す女の子だと理解していた。今だって毛布がフルフル震えているのは、きっと忍が落ち込んで泣いてい

「賢太郎くん私腕折られそう」

「忍取さん放してあげて早く」

 恐ろしいヒロインである。

「……しかし賢太郎様から変態と悪印象を持たれては私の『あわよくば賢太郎様に認めてもらいずっとお側に計画』が……」

 アホみたいな計画名はともかく忍が俯いたまま落ち込んだ調子で言うので賢太郎は仕方なくフォローする。でないとお姉さんの腕が関節を無視した方向に曲がってしまうそうなのだ。

「い、いや別に変態とか思ってないし悪印象も持ってないからさ。ほら、こうやって助けてもらってるし」

 しかし忍は俯いたまま黙っている。

 これは相当に落ち込んだのかと賢太郎はちょっと気の毒に思って「忍取さん……」と呼び掛けようとした。

 すると忍は俯いたまま

「……ふへっ」

 と奇妙な笑い声をあげた。

「は?」

 賢太郎が思わず声を出すと、忍がハッとしたように顔をあげる。

「あ、失礼しました。いえ、賢太郎様に変態と罵られるところを想像しましたら何故か笑いが」

 ……やはり変態ではなかろうか。

「賢太郎様、試しに一度変態と……」

「言わないよ」

 こればっかりは即答する賢太郎。

「私はいつになったら解放されるのかな?」

 お姉さんの焦れた声で賢太郎はハッとする。

「ああそうだそうだ。忍取さん、ちょっとその人放してあげてよ」

 しかし、と忍。

「お言葉ですがこの女、賢太郎様に向かって針を投げ串刺しにしようとしたのです。腕の1本くらい折らねば割に合いません」

 いやいやいや、と賢太郎。

「いやほら結果的に俺も忍取さんも怪我せずに済んでるし、人の腕が折れるところなんて見たくないし……」

「そうよそうよ忍ちゃん。ここは賢太郎くんの言う通り皆無傷でハッピーに終わりましょう。巻物が無いっていうなら、その話もちゃんと聞くから」

 ね? と賢太郎が促してようやく忍は渋々お姉さんを解放した。

 毛布の下からズルズル床に垂れるようにして出てきたお姉さんは、ベッドの足側に移動し座り直す。

 グルグルと肩を回しながら。

「本当忍ちゃん容赦ないんだから」

 当然です、と忍は頭を起こして毛布にくるまったままベッドの上で座り直した。なぜ毛布にくるまったままなのかは分からない。

「賢太郎様を狙うなど不届き千万。本当ならばその首跳ね飛ばしてやりたいところでございます」

 それが本気なのかどうか分からないが、何にせよ意外と物騒なヒロインである。

 いや別にそこまでしなくても……、と賢太郎は口を開いたが声が小さいのでお姉さんに遮られてしまう。

「ちゃんと加減はしてたのよ?」

 どーだか、と疑う忍はともかくお姉さんは続ける。

「それより巻物は本当に無いの?」

 やっと本題である。

 お姉さんは賢太郎に向かって言ったのだが、その賢太郎の視線は逃げるようにして忍に向かう。

 毛布にくるまったままの忍が頷いて口を開いた。

「私がご説明します」

 さて例のごとく説明は省かせていただく。

「実は斯斯然然かくかくしかじかで……」

「な、なんですってー!?」

 はい便利。もちろん白烏が生きている事は黙っている。

「……という事で帰ってくれませんか?」

 すでに20時を回っていていい加減学生服から着替えたいし晩御飯も食べたい賢太郎。そういえば忍が買ってきた食材は玄関に置きっぱなしである。

 うーん、と胡座をかいて座るお姉さんはポリポリ頭を掻いて答える。

「そうだよねぇ。巻物無いなら帰ろうかなぁ」

 あったとしてもるのは無理っぽいし、と忍をチラっと見る。それに気付いた忍はべーっと舌を出す。

「それと、さっき忍取さんが言った通り他に噂を信じてる人がいたらお願いします」

 はいはい、とお姉さんは立ち上がる。

「噂がデマだって伝えれば良いんでしょ? まぁそれで皆が信じるかは分からないけど」

 クルリと背を向けたお姉さんはどうやら帰るつもりらしい。

 玄関でスニーカーを履いてお姉さんは賢太郎に手を振った。

「勘違いで襲っちゃってごめんね賢太郎くん。お詫び考えとくから」

 そして忍を指さして続ける。

「そして忍ちゃん、賢太郎くんが主なら恋愛感情はご法度よ」

 忍はふんと鼻を鳴らし毅然とした態度で答えた。

「知ったことではありません」

 賢太郎はどう反応したら良いものか分からない。恋愛感情云々の部分がとても気になるのだが、かと言って面と向かって「俺のこと好きなの?」などと聞くのは自信過剰な男のようでとてもじゃないが賢太郎には無理である。だからここはもう聞き流してジッと固まっておく事にした。

「まぁ私も昔の規則とかあまり気にしてないんだけど。……それにしても賢太郎くんをねぇ……」

 なんだか失礼なニュアンスである。しかし賢太郎は反応しないでおく。

「賢太郎様を侮辱しますか?」

 毛布にくるまったままの忍が睨む。

 お姉さんはうふふと芝居がかった笑い方をした。

「やだ怖ぁい。冗談だから怒らないで忍ちゃん。それじゃまたね賢太郎くん。ばいばーい」

 そう言ってお姉さんは音を立てず出ていった。

「はぁ……やっと帰った」

 賢太郎はため息をついた。なんだか疲れが一気に押し寄せてきたような気分である。

 それにしても。

「……片付けて貰えばよかったな」

 段ボール箱と針とエッチな本が散らかった部屋を見て、賢太郎はもう一度ため息をついた。



 ようやくお姉さんを撃退した忍と賢太郎。それにしてもまぁ漫画にすれば2話か3話で終わってそうな話をよくもここまでダラダラと書いたものである。これでまだ本編は1日目なのだから作者自身も呆れている始末。

 しかし次回でようやく1日目が終わりそうである。長くはなったが1段落つきそうで良かった良かった。

 ……ところで結局お姉さんの名前は何だったのだろうか?

 次回『しのぶの事情』

 乞うご期待!

 


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