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まぁラノベですしロリキャラの一人くらい欲しいですよね

「え……誰?」

 日の傾いた学校帰り。傾いたといってもまだまだ明るいが、とにかく時間的には夕方。学生服の賢太郎は住宅地の一画で立ち尽くしていた。いつもの人通りの全くない路地よりずっと手前の道である。まぁこの道もそんなに人通りが多いわけではないが。

 それはともかく賢太郎が立ち尽くした理由である。住宅地というのは人通りがそんなに多くないのでいつもはこの辺で忍が姿を現すのだが、今日現れたのは忍だけではなかった。

 忍の隣に背の低い女の子がいるではないか。忍の背は賢太郎より少し低い程度だが、女の子の背はその忍の胸辺りまでしかない。小学生か中学生かといったところである。格好も子供っぽいというか何というか真っ白フリフリスカートのメイド風というかゴスロリというか、髪型もツインテールなのが余計に幼く見える。ついでに書くと忍はシャツとズボンのやはりボーイッシュな格好である。

 さて忍の隣にたつロリっ子はにっこり無邪気に笑って口を開いた。

「はじめましてー! わたしかなでっていいます! よっろしくー!」

 何故か敬礼したロリっ子の声に賢太郎は鳥肌が立ちそうだった。超ロリ声なのである。あざといくらいのロリ声でこれはもう可愛いことは可愛いがあまり長いこと聞いてると脳みそが溶かされてしまいそうな声である。

「え、あ、うん、奏ちゃん……?」

 賢太郎は超絶ロリ声に圧倒されながら忍に目をやり説明を求める。

 視線を受けて忍はちょっと困ったような様子で口を開いた。

「この奏とやらつい先程接触して参りまして忍も何がなにやら」

 奏がペロリと舌を出す。いちいちあざとい。

 忍は続ける。

「恐らくというより十中八九ネットに繋がりを持つ者でございましょうが、なにしろ害意がないようなので忍もどう扱ってよいか判断しかねております」

 眉根を寄せる忍に、ロリっ子奏が人差し指を自分の口元に添えながら小首を傾げる。いちいちあざとい。

「んー、奏はねー? ちょっと賢ちゃんの顔を見に来ただけだから別に用って用はないかなー?」

 あざとい。あざとすぎる。何なんだこの萌えアニメから飛び出してきたようなロリっ子は。もしや新手の精神攻撃だろうか。

 賢ちゃんと呼ばれたことが多少というか多大に気にはなったが、賢太郎は相手が子供なので優しいお兄さんとして接することにした。

 苦笑いは隠せないが。

「えっと……じゃあもう顔見たから、ばいばい?」

 えー、と奏は頬を膨らませる。

「せっかく来たのにつまんなーい。ね! お家に遊びに行ってもいい?」

 図々しいのは子供の特権だろうか。なんだか話しているうちに中学生かとも思えた奏が今は小学校の低学年に見えてきた。

 子供の頼みとなるとどうにも断りづらい賢太郎。

「え、いや、うーん……」

 チラッと忍を見る。

 なぜかロリっ子と同じく口元に指を添えていた忍はハッとしたようにそれをやめて答える。

「あ、いえ、賢太郎様が良いとおっしゃるなら忍も構いませんが」

 賢太郎次第ということだ。

 うーむ、こういう風に決定権を持たされるのはどうにも苦手である。

 と決めあぐねているうちに奏がぴょんと踏み出して賢太郎の手をと……ろうとした所を忍が取り押さえた。取り押さえたといってもそんな強引ではなく、ちょっと両肩を掴んで引き戻しただけである。

「害意は見受けられませんが突飛な行動は慎んでいただきます」

 まるでボディーガードである。よく考えればそれが忍の本来の役目なのだが。

 さて両肩を掴まれた奏はというと、背後の忍を見上げてなんと怯えたような顔で目をウルウルさせるではないか。

「手を繋ごうとしただけだよう……」

 あざとい。あざといがこれには賢太郎も狼狽うろたえる。

「わわ、手? 手くらい良いよ良いよ。ほら、ね。し、その、忍も放してあげてよ」

 忍と呼ぶにはまだ抵抗があるようだ。

 それはともかく忍が渋々手を放すと、奏はパッと賢太郎の右手をとってグイグイ引っ張りだした。

「ね! 遊びに行って良いでしょ? 早くいこう!」

 つまずきそうになりながら賢太郎は奏に引っ張られるまま歩きだす。

 奏と賢太郎の繋いだ手を面白くない顔で見ながら忍も歩きだした。

「賢太郎様、鞄をお持ちいたしましょう」

 スッと学生鞄を取り上げられた賢太郎。

「あ、ありがとう」

 と振り返るとなにやら忍が空いている右手をこちらに差し出しているではないか。

「え? なに?」

「賢ちゃん余所見してると危ないよー」

 と奏が引っ張るので賢太郎は忍の答えを聞く前に正面を向いた。

「ちょっと待って危ないからあんまり引っ張らないでよ、ね」

 あ、もしかして忍は今手を繋いで欲しかったのだろうか。

 と思ってチラッと振り返った時には忍はもう手を引っ込めていた。学生鞄を胸に抱く忍の目は不満が有りそうなそうでもないような。とにかく何となく気まずいので賢太郎は奏に引っ張られるまま正面を向く。女の子の手は小さいなぁとか思ったりなんかして。

「早く早くー!」

 奏は無邪気に笑ってグイグイ引っ張る。グイグイ引っ張るという事はやっぱりというか何というか。

「ていうか奏ちゃん俺の家知ってるんだ」

 そういう事なんだろう。

「うん調べたから」

 振り返らず悪びれる様子もなく即答である。賢太郎のプライバシーやらなんやらはどこにいったのか。これは一度友人の携帯からでもネットを覗いてみなければならないだろう。

「……やっぱり奏ちゃんも忍者なんだよね?」

 とてもそうは見えないが。まぁ忍者に見えないというだけでその出で立ちは一般からかけ離れているというか三次元的ではないというか。

 奏は長いツインテールをひらりと揺らし振り返った。瞳にロリっ子とは思えない妖しい光を宿しニヤリと笑う。

「あったりまえじゃーん」

 声ももはやロリ声ではない。女の声に違いないが明らかに質が違う。賢太郎は目の前のロリっ子が一瞬で女子高生になったように錯覚し、その気味の悪さに思わず手を振りほどきそうになった。

「賢太郎様、やはりここは下手な真似ができぬよう腕をへし折っておきましょう」

 後ろを歩く忍がここぞとばかりに物騒な提案をする。

「いやいやダメダメ。それはダメだけど」

 慌てて否定する賢太郎。

 奏もちょっと慌てた様子で妖しい気配を消してロリ声に戻した。

「違うの違うの本当に遊びにきただけなんだってば」

 うぬぬ、今更ながらどうにも怪しく思えてきた賢太郎。ここにきてようやく奏は演技をしているのではないかという考えが浮かぶ。

 モヤモヤ不安を抱いてはいるものの、結局悩んでいるだけで何かするでもなく奏に流されるままマンションに向かうのであった。

 後ろを歩く忍がチラチラ賢太郎の空いている手を見ているのには、最後まで気付かなかった。



「えーここで寝てるの?」

 賢太郎のワンルームに奏のロリ声が響く。声はクローゼットからだが、そこに奏の姿は見えない。

 忍のお陰で綺麗に並べて吊るされた洋服の上、天井の四角い穴から忍の声がする。

「いえいえ確かに一見狭くて不便ですが物さえ揃えればなかなか快適にございますよ」

 これ空気清浄器じゃん、と奏の笑い声。

「ふふん、それだけではございません。なんとその清浄器、除湿と加湿も可能なのでございます」

 すげー、と笑い声。

 クローゼットの入り口にたって中を見上げていた私服の賢太郎は、踵を返し漫画を片手にベッドの上に座った。家についた時は不満そうな顔をしていた忍だったが、なんやかんや奏に質問され答えてるうちにいつもの調子に戻っていた。

 ちなみに先程忍と奏が話していた通り、忍は天井裏の収納スペースで寝起きしているのだが、賢太郎は忍と出会うまでその存在を知らなかった。

「っていうかねー」

 と奏の声。

 後は忍に任せる気満々だった賢太郎はどうやら自分に言ったらしい奏の台詞に顔をあげた。そしてちょっとギョッとした。

 クローゼットの天井から奏が頭だけ覗かせているのである。氷柱つららのようにツインテールが垂れ下がっている。生首がぶら下がっているようにも見えるのでやめてほしい。

「なに? どうしたの?」

 聞くと逆さのまま奏は答える。

「あのさ、一緒に寝たら良いんじゃないのって私は思うんだけど」

 いやいやいや、と賢太郎が否定するよりも早く、奏の後ろに氷柱が増えニョキッと忍の首が生えた。天井裏ではいったいどんな体勢になっているのか。

「よくぞおっしゃいました奏殿!」

「いやいや怖いから話すなら降りてきてよ」

 賢太郎が言うと生首は引っ込み、するりと体重を感じさせない身のこなしで忍が降りてきた。続いてよっ、とその隣に奏がスカートを押さえながら膝を深く曲げ着地する。立ち上がったその肩を忍がガシッと掴んで奏を自分の前に押し出した。

「ささっ、奏殿! もう一度!」

 奏があざとく小首を傾げる。

「忍ちゃんもこっちで寝ちゃダメなの?」

 その台詞に賢太郎はホッとした。どうやら「一緒に」というのは「同じベッドで」ではなく「同じ部屋で」という意味らしい。それなら何も問題はない。

 と、忍がなにやら奏に耳打ちする。

 それを受けて奏。

「忍ちゃんもベッドで寝ちゃダメなの?」

 奏の上にある忍の顔がうんうんと頷く。なにがうんうんだ。

 そもそも今まで忍が天井裏で寝ていたのだって、初日に忍がしれっとベッドに入ってきたのが悪いのだ。動転した賢太郎が忍にいつも自分が寝ているところで寝るよう言って、ついそのままにしていたのである。まぁ忍からしたら今まで通りなので気にしていなかったかも知れないが、賢太郎の方はそれを不憫に思いながらもなかなか「部屋で寝ていいよ」の一言を切り出せずにいたのも事実だった。

 だから奏の言葉をきっかけに部屋で寝る許可を与えられるところを、忍が余計な耳打ちで訂正させるので、これはもう自滅としか言いようがない。

「同じベッドはダメだって」

 もちろん否定する。奏ではなく忍に向かってである。

 忍はまたしても奏に耳打ちする。

 奏はわざとらしく声を張り上げた。

「えー! 忍ちゃんカワイソー!」

 グッと親指をたてる忍。とんだ茶番である。

「いや可哀想って言われても……。だからこのベッド一人用だから狭いんだって」

 それ以外にも色々と理由はあるが、奏にはまだ早そうな話なので黙っておく。

 それはさておき忍がまたしても奏の耳元に口を寄せるので、さすがに賢太郎も黙っちゃいない。

「待って待って。自分で言いなよ、自分で」

 むー、と忍は不服そうな顔で奏の頭に顔を乗っける。

「お言葉ではございますが賢太郎様、これは忍が言ってもダメに決まっているではありませんか」

 奏に言わせたところでダメなものはダメなのだが。

「あのさー」

 と奏が賢太郎ではなく真上の忍を見上げて口を開いた。

「なんでしょうか?」

 その頭から顔を離して忍は奏と視線を合わせる。かなり顔が近いのだがまぁ同性なので問題はない。

 奏が言う。

「忍ちゃんって賢ちゃんと付き合いたいの?」

 これはちょっと聞かないふりをしておこう、と賢太郎は自分に話が振られる前に漫画を開いた。探丸の時のようにまた答えづらい質問をされると厄介である。

 さて蚊帳の外に逃げ出した賢太郎はさておき、忍は奏の質問に笑って答える。

「いえいえそんなつもりはございません。忍は賢太郎様と結ばれようなどと大それたことは考えておりませんよ」

「それなのに一緒に寝たいの?」

 へ? と忍が一瞬言葉に詰まる。

「どういうことでございましょう」

「だってさー、付き合う気もないのに一緒に寝るって変じゃない?」

 一理あるような無いような。確かに仮に一緒に寝るだの風呂に入るだのしたとして、それで付き合う気がないのでは、知らない人が聞くとまるで賢太郎が遊ばれているようである。

 これは忍の回答が気になるぞと賢太郎は耳を澄ませる。もちろん始めから漫画の内容など頭に入っていない。

 忍はというと、そうでこざいますね……、と悩むような声で呟いていた。しかしそれから少し考えるような間を空けたあと、すぐにニッカリ笑ってこう答えた。

「まぁ、好きなので仕方ありません」

 呆れるくらいに清々しい答えっぷりに、奏は忍を見上げたまま言葉を失っていた。賢太郎も漫画を読むふりをしたまま「なんじゃそら」と心の中で突っ込んでいる。

 忍は続ける。

「賢太郎様を想うがゆえでございます。しかしだからといって賢太郎様の恋路を邪魔する気など毛頭ございません。賢太郎様が忍以外の誰かと結ばれようと、それはそれで良いのです」

 うーむ、納得できるような出来ないような。首を傾げたいが、聞いてないふりをしているので賢太郎はそれもできない。

 ふーん、と奏は真意を探るような顔で忍の目を覗きこむ。

「じゃあさー、私と賢ちゃんが付き合ってもいいの?」

 なんだか面倒なことになりそうな気配である。賢太郎はチラッと忍の反応をうかがう。

 忍は笑っている。あくまで表面上のことなので真意はわからないが。

「もちろんでこざいます」

 それを聞いた奏が賢太郎の方を向いた。不意に目があって賢太郎はギクリとする。

「んふふー」

 奏がいたずらっぽく笑う。

 多大に嫌な予感がするのだが、賢太郎に逃げ場はない。



 相も変わらずやる気の出ない作者。しかし読者様のためにも更新はしたい。そのために多少短くても更新させると決意したがやはり書き上げるのはギリギリで……!?

 それはともかくこの新キャラどうなんだろうか。作者自身あまりイメージが湧かないのだが。

 次回『焼き餅を焼くってのはつまりその餅は二度焼きなんですかね』

 乞うご期待!


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