№6
あぁぁぁ…、どうしよう……。もう……、泣きたいし……。
何でこんな事になってしまったのよーーーーーっっ
そうだった……、私のせいなのよね……。勝手に車の中とか覗いたりしたから……。
とにかく早くこの場から逃げなくては……。いつもの私は何処いったのよ……。冷静沈着で、落ち着いて何事にも動じないはずなのにーーーっっ……。
こんな私じゃなかったのに……。この人…、ここに住んでいるのよね……。ヤバイし……、ものすごくヤバイし……。
どうしよ……、嫌がらせとかされたら………。せっかくの楽しい一人暮らしが……。あぅぅ…。
一人自分の世界に入り込む彼女である。目の前の男はそんなわけのわからない妄想をされてるとは知らずにジッと彼女を見ていた。
「おい…、もういいから……、聞こえてるか?」
まったく聞こえてはいない彼女はそんな彼の言葉にも反応なんかするはずもなく今だ頭を下げたままである。
それにしても…、いったい何処から出てきたの?
気になる……、ものすごく気になるし……。
何なんだよこの女……。変な奴だな………。図々しいのかそうでないのか…、さっぱりわけがわからん…。
まあ…、こういう奴とはあんまり係わり合いにならないほうがいいな……、俺のせっかくの一人暮らしが邪魔されたくはないしな……。
理沙 「あの……、一つ質問してもいいですか? いったい何処に隠れていたのですか?」
「はぁ? 何? て言うかさ…、人と話すときは顔くらい上げろよな。 いつまで下向いてんだよ。」
ちょっと何言ってるの? そんなの当たり前じゃないのよ…。
顔覚えられたくないから下向いているのに決まってるし……。
失礼だってことくらいわかっているわよ……。むーーー…。
パッと顔を上げて姿勢を正した彼女、目の前の男と対面した。
この彼女、女にしてはとにかく背が高かった170cmはゆうにある身長とスラット伸びた手足。
スレンダーな身体に真っ白なTシャツがピタッと張り付いている。濃紺のスリムなジーンズが彼女の長い足をよりいっそう際立たせていた。
小さな顔に大きな瞳と高い鼻、ぷっくりとした唇が妙に可愛い。サラッとしたストレートの長い黒髪がよく似合っている。
うわっっ、……驚いたな……。……………………。
彼の彼女への第一印象はこの時点でガラリと変わっていく。
その彼はと言うと、この彼も身長は彼女に決して負けてはいない。自称187cmだと言い張る彼、でも実際はもう少し大きいけど彼の中ではこのくらいが
一番妥当だと思っている。切れ長の涼しげな二重にスッと通った鼻筋、薄い唇がよりいっそう精悍な感じに見える。ちょっと薄い色素のサラッとした前髪が印象的な彼であった。
背…、高っっ。日本人も最近は……、大きいんだ……。いや…、そんな事はないはず…、だって…、見かけたことないし……。ここまで大きい人……。
よし、合格。
彼女の基準はそこだった。