№5
目の前の男。眉間に思いっきり皺を寄せては彼女を上から見下ろしている。
不機嫌この上ない様子で腕を組みメガネで隠れているはずのレンズの奥のその瞳さえも鋭いのがわかるほどであった。
いきなり叫ばれた彼としては、そりゃそうだ。笑顔なんか社交辞令でもできるわけがない。
チッと舌打ちでもしかねない様子で彼女を睨んでいる。
彼女は困っていた。非常に困っていた。
目の前の男が怒りをあらわにして彼女を見ているからである。
ものすごく長身のその男、彼女も決して小さいほうではない、むしろ大きく育ちすぎたと言う方がこの場合は当てはまるのではないだろうか。170cmはありそうな彼女でも見上げてしまうほどの長身の男。
小さくはなりそうにない身体でも今は小さくなっているのではないかと思うほど恐縮した彼女が居た。
理沙 「すみません。本当にすみません。」
相手の顔も良く見る事もできずにひたすら頭を下げる彼女は必死で彼に謝っていた。
それでも目の前の彼は何も言わずにただこちらを見ているのがなんとなくわかる彼女であった。
どうする事もできずにただひたすら、すみませんとごめんなさいを繰り返すばかり。
もういい加減許してくれと内心思っては見てもそんな事この状況では口に出せるわけがない。
あぁ…、もう…、どうしたらいいの?誰か助けてよーーーーーっっ
そんな心の声に応えてくれるような人などテレビドラマじゃないので来ることはない。
途方に暮れる彼女、そんな彼女が考える事は…、危ない国日本。ただそれだけだった。
「いいよ…、別にたいした事じゃないし…。俺も驚かせるつもりはなかったからな…。」
男が以外な言葉を吐いた。
一瞬聞き間違えたのではないかと勘ぐるほど逆に驚いた彼女であった。
でも、それでもどこかげんきんな彼女は、頭を下げたままホッと胸をなでおろしていた。
理沙 「すみません。いきなり叫んだりして…、本当にすみません。」
それでもどこかまだ彼の事が怖い彼女は頭を上げることができないのである。
長身の彼と長身なのに今は小さく身体を折りたたんでいる彼女。
日本にやってきて初めて不動産屋と店員以外の人と会話をした彼女であった。
PANDAです。
すみません、続きはムーンライトノベルズに掲載しています。
ただ今、18話まで進んでいます。